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【詩を食べるレシピ】春でぇむん/気軽に作れる、春のおでん

詩を文字通り「味わう」ためのエッセイとレシピです。レシピもあるので、よかったら詩を読んで味わい、作って味わってみてください。

詩のアンソロジーをぱらぱらとめくるのが、わたしのいちばんの楽しみだ。
指をページにすべらせていると、ことばが心に、耳に、流れ込んでくる。

ある日、図書館で、「春でぇむん」という詩がここちよい風のようにすーっと流れてきた。

風ぬソイソイ(かじぬソイソイ)
いいあんべぇ
肌持ち清らさ(はだむちじゅらさ)
いいあんべぇ

行間から風がふいて肌をまさぐるようだ。これは「春でぇむん」という照屋林賢さん(りんけんバンド)の詩だそう。

琉球のことばのイントネーションは正確にはわからないけど、そんなのどうでもいいほど、本能的に気持ちのいい歌。声にだしたくなる。

「いいあんべえ」は「いいあんばい」、「肌持ち清らさ(じゅらさ)」は肌にさらさらと心地よいこと。"清(きよ)ら"というのは日本古来の美しさの表現で、「ちゅらさん」(美人)の「ちゅら」も「じゅら(さ)」もこの語が由来になっている。それでか、波の音とともにプリミティヴな風景が広がる。

波音ん(なみうとぅん)
風ぬ声ん(かじぬくいん)
春でぇむん
春でぇむん

なみうとぅん、かじぬくいん…はるでぇむん(春だもの)、はるでぇむん…

春のゆったりとした波がおしよせるようだ。むかし、竹富島を旅した時に海にただ海藻のようにぷか〜ぷかと浮いていたことを思い出す。未分化なわたし。とってもしあわせだった。

春のおでんは、かろやかさが「いいあんべえ」

ふと、「おでん」をもっとかろやかに楽しんでいいのでは?と春に思い立って、おでんのおつゆに、おあげさんや芹、ほたるいかなどをさっとくぐらせて「春のおでん」などと興じはじめたのが2年前のこと。じっくりコトコト煮込む冬のおでんとちがって、おだしでさ〜っと泳がせるイメージ。

「春でぇむん」の、たぷ〜んとしたリズムを読んで、ここちよい春のおでんを作りたくなった。

材料は、新わかめとほたるいか。わかめはなるべく、とれたてのものを。

作りかたはとても簡単。下処理として、ほたるいかのくちばし・目玉・背骨をとる。(参照→)だし500mlと薄口醤油大さじ1、みりん大さじ1、濃口醤油小さじ1/2を弱火で煮立たせ、そこにわかめとほたるいかをゆらゆら泳がせる。

春のおでんは、素材のよさが命。辛子など使わずに、ぷりぷりの新わかめとほたるいかをほおばる。

うーん、いいあんべぇ。春でぇむん…

春の日の昼間、気軽につくれる「春のおでん」とビールを一杯。キッチンの窓からの春風がほおをなぜる。

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