イベレポ|「ちきゅうの声とたわむれる」海の校舎で耳をすませる、詩の一日
こんばんは。詩のソムリエ 渡邊めぐみです。
新型ウイルスにはじまり、選挙やスキャンダル等…人間界は、ここのところ騒がしいですね。
人間界でいろいろあるあいだも、地球は呼吸し、つねに声を発しています。
そんな「声」に耳をすますと、ふだん感じていない気持ちに気づくかもしれません。
第19回おかやま県民文化祭「備中国のくらしと音」の催しとして、ワークショップ「詩で遊ぼう/ちきゅうの声とたわむれる」を行いました。
秋晴れのなか、大人も子どもも、耳をすませて心に広がる風景を楽しんだ一日。その様子をレポートします。
「耳をすますワークシート」も公開◎
ぜひ、ご自身やご家族と使ってみて下さい。
ソワソワ、ドキドキ。海が見える図書室に集合
今回の会場は、木造の小学校をアトリエに改装した「シェアアトリエ 海の校舎」さん(写真はHPより)。
海が窓辺に光る図書室に、小さな人から大きな人まで集まりました。
最小年齢は2歳半。
まずはアイスブレイク。
子どもは今得意なこと。大人は、子どものとき得意だったことをシェアしました。跳び箱が得意なひと。レゴが得意なひと。本読みが得意なひと。はじめまして同士だけど、おなじ教室の生徒のような気分に。
詩人の「耳」
ほんわかとほぐれたところで、「詩人たち」はどんな音のとらえかたをしているかクイズをまじえながらお話。
さぁ、これはなんの音でしょう?
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これは、萩原朔太郎のとらえた「鶏」の鳴き声です。
参加者さん、「鳥」「プロペラ」など、かなり近かった!みなさんはどう思いましたか?
そういえば、今年4月に行ったワークショップのタイトル「りーりーりるりるりっふっふ」は、草野心平がとらえた「蛙」の鳴き声でした。
ほかにも、中原中也「サーカス」の「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」などを取り上げ、波は「ざぱーん」鶏は「コケコッコー」とは限らないよねという話を。
POINT
・鶏が「コケコッコー」という固定概念は捨てよう。
・詩人は、自分の耳で聞き、自分の心で考えるひと。
心に飛び込んでくる音
さぁ、詩人のマインドセットができたら、まず校舎を探検!
「海の校舎」は元小学校。木造の階段の「ミシッ、ミシッ」がなつかしい。講堂や廊下から、かつての子どもたちの足音やざわめきが聞こえてきそう。
そして階段をのぼると、屋上からはすばらしい海の景色が…。
「すこしだけ静かに、耳を澄ませてみましょう」と声をかけ、みなさんそれぞれジッと耳を傾けます。
す〜〜〜っと風の音や、ささやくような木の葉の音。遠くで波の音。
アクセントのように、校庭の野球の「キン」と鋭い音や、鳥の「キチキチキチ」、道路では「ブォォォォ」と車の音。
それらが響き合うのが心地よい。「ちきゅうの声」は、なにも自然(山や風)の声だけじゃない…それがほっとして愛おしい感じがしました。
そして歩いて、海辺へ。
小学生Sちゃんの「砂がさらさら!」という声から、砂は音がならないことのふしぎが心に響きました。
波のとらえがたい音。
しらさぎの沈黙。
山の寡黙。
打ち寄せた波の余韻。
そういった繊細な音のとらえかたを、参加者さんがはじめるきっかけに。
ヤギさん、大人気。
POINT
・静/動、余韻について思いをはせる。
・この声は、なにを言っているのかイメージしてみる。
詩をつくる
ここから、もくもく詩の創作タイム(相談あり)。思い思いに言葉にしたり、絵にしたり。
今回、親子さん参加が多かったので、こうして過ごしている時間も貴重だなぁとその姿にキュンとしました。
こんな詩ができました
発表は、自分で読んでも、他の人にお願いしても可。
おなじ作品でも、子ども、男女の声でまた印象が変わるのもユニーク。
やぎのなきごえはおこってるみたいにきこえる。
めーってちからづよくないているから。
むりやりエサをあげたとき。
トビのなきごえはちかくできいてもおんなじ音がする。
トビのなきごえは大きいから
ピーヨロロー
ピーヨロロー
ふえの音みたい
→小1さんの作品。「理由が書いてあるのがおもしろいね」「遠くと近くで声を聞いたのがいいね」などの感想があがりました。
こちらは大人の作品。
「奏での散歩」
フムッフムッフムッ
ウー ジャバン… サー ウー ジャバン… サー
ピー ピュルルルー
…
シーーー
聞こえる音
聞こえる音
聞こえない音
どこにいこう
どこにいくの?
→砂を踏む音や「聞こえない音」を表現しているのが哲学的という感想があがりました。
いただいたご感想
・海の音を聞きに行くと思っていたら、(参加している)子どもの声が印象的だった。時空間を飛び越えるような一日だった。
・詩を書くのが楽しかった。
・音にフォーカスするのが思ったより楽しかった。そのあと色に目が行ったり、記憶が引き出されたりした。人によってイメージするものや引っかかるところがちがうのがおもしろかった。
・子どもの声が自然にあるのがよかった。ちょっと昔は子どもの声であふれているんだろうなと思った。
・いつもは「大人」という役割をしているけど、大人というより「私」として過ごせた。子どもの頃の自分に出会えたような感覚。
・感じ方は、本当に人それぞれ。見方がちがうのは、子どものころからそうなのかもしれない。
・詩はハードルが高いと思いがちだけど、自然に楽しめた。子どもと大人が、経験のちがいとか関係なくフラットに感じたり表現できたりする場がもっとあればいいなと思った。
心の原っぱと、新しい夢
詩を書くのがたのしかった、とニコニコ言ってくれたMちゃんは、6歳さん。
わたしが「詩をすき」だとはっきり自覚したのと同じ年齢。
その笑顔がとてもうれしかった。
子どものころから詩を好きだったことは、心の中にいつでも帰ってこれる安全な原っぱをもっているようなもの。人生の起伏のはげしさのなかで、何度ここへ帰ってきたかわかりません。
多くの子どもたちが、安心できる世界をもっていられればとあらためて願います。
そして、大人の方のご感想でいただいた「今日は大人の役割ではなく《私》として過ごせた」というのもうれしく。子どもも、おとなも、フラットになる表現の場をもっと作っていきたいなとエネルギーをもらえました!
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岡山文化連盟のみなさま、海の校舎のみなさま、そして勇気を出してご参加いただいたみなさま。本当にありがとうございました。
13日は倉敷の古民家で「詩的実験」をやります。ご参加ぜひ!
たまにはちきゅうの声に耳をすますワークシート
Let's Try!
そのお気持ちだけでもほんとうに飛び上がりたいほどうれしいです!サポートいただけましたら、食材費や詩を旅するプロジェクトに使わせていただきたいと思います。どんな詩を読みたいかお知らせいただければ詩をセレクトします☺️