見出し画像

今週の詩(蟋蟀戸にあり)丨虫たちの歌

おはようございます。詩のソムリエです。急に寒くなりましたね!

今週のはじまりは、七十二候「蟋蟀きりぎりす戸にあり」。この蟋蟀は「キリギリス」だけではなく、コオロギや鳴く虫の総称です。寒くなってくると暖かさをもとめて虫が玄関さきにいることを愛おしむ気持ちがあらわれています。

虫の音を愛おしむ気持ちは紀元前から

この「蟋蟀戸にあり」という季節は紀元前からあるそう。
『詩経』に「十月蟋蟀」ということばがあるほか、杜甫や先週の白居易も蟋蟀が戸にいる姿を詠んでいたり、日本でもそれが伝わって西行などが蟋蟀の歌を詠んでいたりします。

そして、今週とりあげたいのはロマン派詩人ジョン・キーツ(John Keats, 1795-1821)の「キリギリスとコオロギ」。
キーツ、21歳のときの詩。
涼やかな音を草原で響かせる虫たちを、"The poetry of earth"(大地の詩)としているのが素敵です。音読して気持ちがよい詩。

On The Grasshopper And Cricket 

The poetry of earth is never dead:
When all the birds are faint with the hot sun,
And hide in cooling trees, a voice will run
From hedge to hedge about the new-mown mead;

That is the Grasshopper's--he takes the lead
In summer luxury,--he has never done
With his delights; for when tired out with fun
He rests at ease beneath some pleasant weed.

The poetry of earth is ceasing never:
On a lone winter evening, when the frost
Has wrought a silence, from the stove there shrills
The Cricket's song, in warmth increasing ever,
And seems to one in drowsiness half lost,
The Grasshopper's among some grassy hills.

地面の詩人は決して死なない
鳥たちが灼熱の太陽に消え入り
涼しい木陰に隠れるときにも その声は
牧場のあたりを 垣根から垣根へと鳴り渡る

それはキリギリスの声だ 夏をいっそう楽しくさせ
いつまでも歌い続けてやむことがない
時たま歌うことに疲れたら
雑草の繁みで一休みするのだ

地面の詩人はやむことをしらない
さびしい冬の夕暮れ あたりがしんと静まるときにも
ストーブからはコオロギの声が聞こえてくる
その声はますます暖かさを帯びて
まどろみかけた人の耳には
丘でキリギリスが鳴いているように聞こえる

第一連で、ふっと視点が虫のいる草原までおりてくる降下感。
鳥や獣たちが静まっても、「地面の詩人」はうたうのをやめない。身近でありながら、永遠性を歌ったロマンのある詩です。
即興的に作ったソネットのようですが、きっちりルールは守りつつ、いろんな視点をさっと詠み込んで永遠を描くあたり「さすが」です。

noteで見つけたまったりさんの翻訳も素敵です。翻訳に挑戦したくなるような詩ですよね。


最後まで読んでくれてありがとうございます。よかったら「スキ」(♡マーク)も押してくれると励みになります◎

きっと今日もすてきな一日になりますよ!体調に気をつけて過ごしましょう。

Twitterでは詩の裏話や、詩のソムリエの日常をつぶやいています。
これからも、心が潤う詩をたくさん届けますね!

そのお気持ちだけでもほんとうに飛び上がりたいほどうれしいです!サポートいただけましたら、食材費や詩を旅するプロジェクトに使わせていただきたいと思います。どんな詩を読みたいかお知らせいただければ詩をセレクトします☺️