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手をつなぎて睦ぶ父と母 大内宿にて夫婦を知る

それぞれに大きな病を抱えた父と母と、僕の恋人と。
2019年秋。
福島県大内宿旅行をした。

2度結婚して2度離婚した僕だから、籍こそ入れていないがタマキが3人目だ。
「バカ息子が。」とため息をつきつつも、年に1度の親孝行旅行を両親は楽しみにしている。

「レンタル車椅子あるよ。」という僕の言葉を笑顔で断わって、父と母はトボトボと歩く。

脳梗塞の後遺症で上手く言葉の出ない母と。耳の遠い父と。
会話にならない会話してトボトボと歩く。
「タマちゃんいい娘だね。」とトボトボと歩く。
手と手をつないでトボトボと歩く。

夫婦とは二人でなければ歩けなくなって、はじめてホントの夫婦になれるのかもしれないね。

手をつなぎて睦ぶ父と母
大内宿にて夫婦を知る
 

2020年春。
先に逝ったのは父だった。

大内宿旅行から一年。
タマキの淹れたお茶から湯気が揺れている。
母は線香のけむり目で追って、会話にならない会話をしている。

遺影の父は照れている。

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