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妻が求めるレベルで夫が家事をできるか、の話。

「妻が求めるレベルで夫が家事をできるか」、ということについて、書いておこうと思う。我が家の風呂掃除の話だ。

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2008年、ムスメが産まれ、奥さんは産後のダメージが重く、ムスメを抱えて沐浴させるのが無理だった。ムスメの入浴は私の仕事になった。当然、風呂掃除も私の担当に。

風呂掃除というのは「身体の自由がきかないとできない家事」だ。滑りやすい場所で無理な姿勢をするし、濡れないように気をつけるところもある。お年寄りが家に風呂があっても銭湯に行くのは、風呂掃除ができないパターンもある…と聞いたことがある。

私は毎朝バリカンで頭を刈ってシャワーを浴びるので、そのまま風呂の掃除をすることにした。

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初めの頃は風呂桶をざっと洗っていたが、それだけでは浴室の隅に汚れが出る。奥さんに「浴室も洗って欲しい」と言われ、生返事していると、奥さんが風呂に入る時に何やらゴシゴシ磨く音がしてきた。

くやしいので浴槽は毎日、浴室は時々磨いていた。けれど奥さんのお眼鏡にはかなわず、風呂のたびにゴシゴシ音がする。

じゃあ一体どこまでやったら満足なの?ということで、浴槽も浴室の床と壁も全部、毎日、磨くことにした。ただし、特に汚れを落とすということではなく、心を無にして床と壁を撫でる感じ。

「排水口のぬめりと髪の毛も取ってほしい」とのことで、髪の毛まとめてポイなどを使うようになった(これは後に使わなくなる)。

換気扇にホコリが溜まる、というので、これも目についたら換気扇のパネルを外して、汚れを取るようにした。

ユニットバスのサイドパネルは持ち上げれば外せることがわかったので、外して風呂桶の下や裏に溜まるワカメのような汚れを流すようになった。これは言われなくてもやった。

かくして、風呂桶を磨き、壁と床をぜんぶ磨き、排水口の髪の毛を取って磨くところまでは毎日のルーチンになった。

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手順はこうだ。まずボトル類をすべて避難させ、全体をシャワーで流して、バスマジックリンをまんべんなく吹き、スポンジで磨く。排水口の髪の毛も毎日取る。慣れれば全体で5分くらいだ。

換気扇はホコリが目についたら。サイドパネルを外すのは月イチくらい。

汚れはまったく溜まらなくなった。

ここまでやってついに、奥さんが風呂掃除に何か言うことはなくなった。ゴシゴシ音も聞こえなくなった。勝ち負けではないが、勝った。何かに。だが。

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ホテルやないか。ウチはホテルちゃうぞ。と思った。じゃあそこまでやらなくていい、と言われたが、間隔を開けたら結局汚れるし、3日に一回とか1週間に一回とかにすると忘れるので、結局毎日のルーチンにすることにした。
釈然としないが、ここまでやらないと、結局また不満が出る。文句を言われるくらいならやり切ってやるさ、と言う気持ちだった。

気がつくと、朝、無心で身体が動くようになっていた。風呂掃除は意識の外に消え、時間も短くなり、キレイな風呂が残った。カビキラーは買ったことがない。毎日磨いているので、カビなど生えないのだ。

賃貸5年目のユニットバス

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奥さん亡くなって、風呂掃除もやめようかと思ったが、結局毎日続けている。

これが妻が夫に期待するレベルの家事なのか?たぶん違うだろう。奥さんが求めていたのは単に「清潔な風呂」だった。

ただ、それはすなわち、「ホテルの風呂の清潔感」とほぼイコールであった。

ホテル並みの清掃を家庭内で実現できるかどうかは現実的に難しいが、求めるのもはシンプルに「清潔な風呂」であったと。まあそうだよな。

そう考えると、妻が期待する家事(夫に、とは限らず)とは「妻並みの家事」ではなく、本当は「快適な生活を実現すること」なのだ。風呂の場合は、(結果的に)ホテルの清潔さ。

一般的には、そこには届かないから、「せめて自分並み」を夫に求め、それでも叶わないならせめて…のレベルの話をしているので、夫が家事を相当頑張っても、普通は褒められることはない。いつも言っている、非対称性だ。

視点によってゼロレベルが違う


奥さん身体の自由が効かなかったから、自分でやってもこのレベルにはならなかっただろう。たぶん定期的に清掃業者を呼んだだろうと思われる。

我が家は結果的に、奥さんの希望を叶えられたのでよかったとする。少なくとも「清潔な風呂」については。

求めたのは「完璧な家事」ではない。「快適な生活」だ。そして、「快適な生活」は、時としていびつにコストがかかる。バランスを取るのは難しい。意地を張ってやりきってみたが、正直、少しおかしいと思っている。答えはない。

ただ、これを認識しているかいないかで、現実的な落とし所を探るための、夫婦の対話も変わってくるだろう。

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いつか書こうと思ったので書きました。我が家の風呂は今日もキレイです。風呂掃除ってホント、身体が元気じゃないとできないよな〜

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