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ある日、滝行をしたいと思った

かつて人間関係にも仕事にもストレスを感じ、休みの日でもくつろぐことはせずせかせか動き回ってはまた疲れをため、いつもイライラしているような時があった。このままではいけない、もっとうまい生き方をしたいと思い、いろんなことを試した。ヨガ、瞑想、写経、調心呼吸法、富士山登山・・・。

ある日、同僚とランチをしている時に
「滝にでもうたれてみようかな」
私が軽く言った言葉に同僚は大乗り気
「いいね、行ってみようよ!」
早速、週末に体験することにした。

すぐに滝行ができるところを調べて電話で問い合わせをした。
季節は秋、ちょうど今頃、紅葉の時期だったので、山中はかなり冷え込む。
「週末に滝行をしたいのですが・・・
今の季節、水は相当冷たいですよね」
おバカなことを言ってしまったとあとから気づいた。
淡々とした口調で返事があった
「修行ですから・・・」

滝行は、大いなる自然の力を借りて身体と心の穢れをとり、雑念をを祓うこと。過酷な体験を通じて己と向き合い、強い精神を養い、祓い清めて心機一転する、といった効果がある。

私は修行の意味をわかっていなかった。
滝に打たれれば何かが変わるかもという期待や、話のネタにやってみたいという浅はかな考えはあったかもしれない。
凍てつく寒さの中、冷たい水の強い圧力を生身の体に受けること、それは体のダメージという危険を伴う。一説によると、滝行で人々が落とした憑き物に憑りつかれるリスクもあるという。

「修行ですから・・・」のひと言のおかげで自分の浅慮を恥じた。若気の至り。その後、滝行をしたいなどと思うことはなかった。

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