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続・選ばれなかったファイナリストたちへ(前編)

 第61回の宣伝会議賞の贈賞式から早3週間が経とうとしていますね。
 ファイナリスト作品の発表から一か月。まだ記憶と、余韻があるうちになんとか書きたかった企画です。
 それはそう、昨年、「ふっふっふ、これは誰もやんなかっただろう!」と思い、自信をもって出したのに、まったく見向きもされなかったあの企画。
   そう、賞に『選ばれなかった』ファイナリスト作品だけを僕が評するという、異形の批評レビューです😂
(昨年の内容についてはこちら ↓↓↓)
 
https://note.com/pocottey/n/ndfcd56d708b8
 
 
 思えばねー。選ばれなかったファイナリストってね、本当に悔しいんですよ。
 もちろん一次審査に通過できないことも悔しければ、ファイナリストになれないことも悔しいですよ。でもね、ファイナリストになったのに、なんの賞ももらえないっていうのも、それはそれで屈辱的なものなんです。
 遠方の人間は長い時間をかけて贈賞式の会場まで行き、目の前で他の人間が賞をもらうのをただただ眺め、ただひたすら拍手をするだけの要員と化し。帰りはまた、「なにももらえなかった」という大きなお土産をいただいて、元来た道をとぼとぼ帰る。
   行きはあんなにワクワクドキドキしていたのに、帰りは何かを期待していた自分への気恥ずかしさと情けなさと悔しさがいっぱいで帰っていくのです。あんなひどい拷問タイム、ありますか? と思えるくらい。
 で、SKATに載るとしても、ひと昔前なら大部屋扱い。今は協賛企業賞の次の位置に並べられる位置づけ。はっきりと協賛企業賞より下、ってあそこでわかってしまうのです(もちろん、協賛企業に気を使ってのことだし、上とか下とか書くのは協賛企業賞受賞者に失礼ではありますが)
 雑誌のインタビューやら座談会に載るのも、もちろんシルバー以上のみ。
 なんなんなんなんなんなん? ファイナリストってなんなん? って気持ちになるのです。
 だーれも『選ばれなかった』ファイナリスト作品のことなんて注視もしてくんないじゃんよー! ってなって、悲しい気持ちになってしまうのです😭
 
 でもね。だから、大丈夫!
 おなじく『選ばれなかった』ファイナリストの代表として(勝手に代表になるな!)、オジサンがちゃんと、論評してあげるから!
 僕ァ、君たちの味方だよ!
 ひとつも心強くはないけれど🤣
 
 
 ・・とまぁ、長い御託はこの辺にしまして。
 早速、行ってみよー!
 
 
 

私の人生、履歴書に書いてない部分がおもしろいのに。


【iHistory /人生を価値化して楽しむサービス「iHistory」の3つのデジタルガジェットそれぞれを知ってもらうアイデア】
 
 今回宣伝会議賞初参加となりますiHistoryさんの課題ですね。
 取り組んでいた時は何を書いたらよいのやら? と思っていましたが、ファイナリストに選出されましたこの作品を見て、なるほど、これが正解だったのね、と思いました。
 IHistoryさん、「自分史」というものを作成し、グラフの様にして視覚化してくれる、というのがウリのアプリでして、結局求められる答えとしては、それをどう活用するか、そしてそれにより生活がどう変わるか、ということを表現する必要があるわけです。
 まだスタートしたばかりのサービスのようですので、そこの部分はほぼほぼイメージに頼らざるを得ず、さて、あなたならどう使いますか? という大喜利のような課題だったわけですが、コンパや結婚式などの自己紹介で活用されるほかに、やはり就職で活用する、というのが一番人気のようでして、「履歴書」との対比で表現する、というのも手として常套なようです。
 僕も自分で書いたものを見返してみたら、
 
履歴書では個性まではわからない。
 
 というものを書いており、おおい、ほぼほぼ言いたいことはこの作品とおなじ! となりました。
 ただ、表現の方法の違い、なわけで、あとから思ってみると、僕の作品は「履歴書」を貶めることで、iHistoryを持ち上げようとする、いわゆるネガティヴ表現になっているのに対し、ファイナリスト作品は、もちろん履歴書は必要としたうえで、それを補足するものとしてihistoryがある、という、敵を作らない構図になっているわけです。
 そこが(そこだけじゃないと思うけど)、明暗を分けたのかな? と感じました。
 
 

「はい。ここ、実生活に出まーす。」


【SMBCコンシューマーファイナンス/2023年4月にスタートした金融リテラシー検定を、より多くの人に受けてもらうためのアイデア】
 
   お、これだ!
    実はこの作品、はじめに雑誌でファイナリスト作品を見たときに、一番「うわぁ!」と思った作品でして、正直言うとグランプリ候補。いやでも、そんな宣伝会議賞は甘いものじゃない。僕がいいと思ったものがグランプリになるわけがない、絶対にひねってくる、と考えて、違う作品をグランプリにして、泣く泣くゴールドにしてしまった作品なのです(なんじゃそりゃ?)。
    だからこの作品を、この「選ばれなかった」で評しなければならないことが、ちょっとオドロキの今大会なのですが・・(それだけハイレベルor僕に見る目がない、と思っていただきたい)
 
   なんでしょうね? この「金融リテラシー」の課題においては、表現すべきことは「お金のことは知っておいて損はない」「むしろ、知っておかないと損しますよ」ということじゃないですか? だから、この知識は人生の役に立つ、ということを書けばいいわけで、こうやって書くと、ほぼ正解にたどり着いているような気がします。
    それを、具体的な金融の例を出して、こうしないと損しますよ、これやっとくと得するよ、みたいなことをいっぱい書いたわけですが、この作品を見て、あ、「人生の役に立つ」ということをストレートに表現しちゃえばそれでいいのか! となりました。
    ただそれだけではなく、もうひとつは「検定」ということですね。つまり試験なわけであり、それも盛り込まなければいけません。だから勉強したことが試験に出る。そして、それが実際の人生にも出ますよ、ということを表現できれば良いわけです。
    なんせ、協賛企業賞の作品が、「ここ、必ず人生に出ます。」ですからね。それをちょっと面白い風に言い換えたものがファイナリスト作品なわけですから。「人生の役に立つ試験」路線をいろんなバリエーション作れば正解だったわけです。
 
 
    ・・まぁもちろん、結果からの逆算なわけで、事前にそれがわかってれば苦労はしないわけですが(笑)。
 
 

充電98%で、人は脱水症状。


【大塚製薬工場/脱水症状を身近に感じてもらうアイデア】
 
    「脱水症状」のやつですね。啓発系のコピーってファイナリストになれる確率が高いのか、前年の「ヘルメットの重要性」のテーマも3本ファイナリストになっていましたね。この脱水症状も実に4本がファイナリストです。
    結局は脱水症状は水を飲まないことで起こる障害であり、それを防ぐためには水分を補給する必要があるよ、ということで、言うべきことは見えているわけですよね。それをいかに、スマートに、説明くさくなく表現できるか、という勝負になっていったわけですが・・。
 
    実はいきなりここにない作品の批評で申し訳ないんですが、脱水症状4作の中で、一番度肝を抜かれたのは、シルバーに選ばれた、「こわくなさそうな病名。だから、こわい」で、実はこれを僕はグランプリに予想していました。
    この課題の多くのコピーが直接的でないしろ、水分が失われる、水分補給が重要、を訴える中で、「脱水症状」についてなぜみんなが真剣にならないのか、喉が渇く~、くらいのもんでしょ? と舐めてかかって命を落としてしまうの人が毎年いるのはなぜか? その根源を言い表しているような気がして、スピード感はないがジワジワと、おお、そういうことか・・となってくるよいコピーだな、と感じていた。
    かつてのゴールド作品、『病院に行くほどでもないから、苦しい。』に近いものがあって。
 
    ですが当たり前ですが、おなじ課題でファイナリストが4作選出されたわけですが、それぞれ違う切り口、視点で描かれていて、実際にはどれも甲乙つけがたく、上手いなぁ、と感じました。
    本作「充電98%で」は、いわゆる情報コピーですが、人間の体をスマホの充電に見立てた点がもちろん秀逸。
    脱水症状の危険性を調べていく中で、人間の体からどれくらい水分が失われると危険か、みたいなことは出てくるわけですが、それが体重の2%だということはわかっても、それをどうわかりやすく表現するかで四苦八苦するわけです。
 
人間は体重の2%の水分が失われると、脱水症状。
 
    でもちろんいいわけですが、それではただの情報であってコピーではない。そこに、人の心に残るようなユーモアやウィットを入れて味付けをする必要がある。
    手前味噌だけど僕は、
 
人間は1日に、体重1㎏あたり35mlの水分補給が必要。つまり、曙関なら1日に8Lもの水を飲む必要があるってことです。
 
『1リットルの涙』。体重60kgの人間なら、水分量の約3%を失った計算です。
 
    というような情報コピーを書いた。
    けど、ここにやっぱり「危険性」というキーワードが入っていない。
    危険性を訴えないと、やはりこの課題の場合はいけない。
 
    本作の場合は、それをスマホに見立てたことにより、たとえばスマホなら、充電が20%を切ればバッテリー表示が赤くなって危険だと感じるところ、人間の場合は98%時点でもう表示が赤くなって危険だよ、と訴えることが出来る。
    イメージさせることにより、視覚的に「危険」というワードを盛り込んでいるわけである(もちろん、「脱水症状」というワードを使っているが)。
     このスマホに見立てた点と、「たった2%」という数字よりも、「まだ98%あっても」という、大きな数字側から攻めた点もファイナリストたる点なのかも知れない。
 
 

人体は静かに蒸発している。


【大塚製薬工場/脱水症状を身近に感じてもらうアイデア】
 
   これねー。
    twitterでもちょこちょこ書いたのですが(意地でも「X」とは呼びたくない)、この作品を見た時、はじめ、「おおっ」ってなったんですよ。
    実にポエム的で、いいコピーだ、と。
    人間の体から、湯気のような感じで、ちょっとずつ水分が失われて言っているさまが目に浮かぶではないですか。情報コピーとはまた違う、情緒的な部分に訴える、よいコピーだな、と。
 
    が、じーっと見ているうちに、なんか、見覚えがある気がしてきて、自分の書いたコピーを見直したら、
 
人は、知らないうちに蒸発する。
 
    というものを書いていて、「んんんっ?」となりました。
    おおう・・。
    発想おなじ😭
    なのに、方やファイナリストで方や一次も通っていない。なんなのこの違い?😫
 
    もちろんねー、考え出したらいくらでも答えは出てくるんですよ。明らかに字面が違うんですから。
    「人体」と「人」が違うし、「静かに」と「知らないうちに」が違う。でも、そんなにそこまで差がつくほど違うものかなー??? となってしまいますね。
 
    ただ僕の場合は実は、ちょっとやらしい狙いも入ってましてね。「蒸発」というのが、いわゆる人がいなくなってしまう方の「蒸発」ともかかっているわけなんですよ。だから「知らないうちに」というワードを使用している。
    人って知らないうちに乾いていくよねー、っという意味と、夜逃げとかする人って知らないうちにいなくなっちゃうよねー、とをかけたちょっとユーモアコピーになっているのですよね。
    そこを逆に審査員の方にきっちりと見抜かれてしまい、「そんな不純物はいらんねん」と撥ねられたのかも知れませんね。
    うん、だから、方向性は間違っていなかったのです。
    この、人間は生きているだけで乾いていくんだよ、ということをシンプルに、混ざり気なく表現をした、という点にこちらの作品に軍配が上がった、ということなのでしょうね。
 
 

予兆がなかったんじゃない。
予兆を知らなかったんだ。


【大塚製薬工場/脱水症状を身近に感じてもらうアイデア】
 
    脱水症状の最後の作品ですね。
    こちらも「こわくなさそうな病名」とおなじく、脱水症状の危険性を直接的な原因から訴えるのではなく、なぜそうなってしまうのかという根源の部分から訴えたコピー、ということになるのでしょうか。
    ・・ちょっとごめんなさい。実は僕、このコピーにピンと来ていないくて😅
    たしかにパッと見、「おおっ!」ってなるんですが、よくよく考えていくと、ちょっと真意がつかみ切れていないんですよ。
    たしかに脱水症状について考えていくとき、けっして予兆がなかったわけではないと思うんですよね。喉が渇く、ということから始まって、頭痛やめまいなどがするわけで。でも、そうなったときには手遅れなわけですよね。だからそういう初期症状、「喉が渇く」が脱水症状に繋がるという“予兆”であることを知らなかった、と意味なのかなあ? と解釈するのですが・・。
    だとすると、「予兆を知らなかったんだ」ではなく、「予兆だと思わなかったんだ」にするのが正しい気がするのですよね。だから、やっぱり僕の解釈が間違っている、いうことなんでしょうね。
    単純に予兆に気づいていなかった、という意味なのでしょうけど、それだとすると、「予兆」って気づけて初めて予兆になるわけで、予兆に気づけなければそれは予兆ではないわけですよ。・・とか、いろいろ考えだすと、「うん? どういう意味だこれ?」となってしまいます😂
    まぁ僕が細かいことが気になりすぎる人間だけなのかもしれませんが。コピーってもっとおおらかなものですからね、きっと。
 
 
 

LIFEのIFを全部おさえる。


【クレディセゾン/何をするにも、とりあえず、セゾンに相談しよ! と思ってもらえるアイデア】
 
 
   これはですねー。こういうことを書いてはいけないのかもしれませんが、これが何の賞も獲れずにここで紹介されているのはおかしいと思えるコピーですよね。見た瞬間に、「やられたっ!」と感じました。
    正直言うと僕、「〇〇の中には△△が入っている」っていうコピーってあんまり好きではないんですよ。はじめは、「おおっ」とか思ってましたが、段々みんながやるようになって(というか、やるんだということが分かって、か)、「はいはい、頑張ってよく見つけましたね」みたいな気持ちになる。手法として確立されちゃった感があり、あんまり目新しさがない。
(と言いながらなんと、僕、このクレディセゾンさんの課題で「お金には『全て』という字が入っている。」というコピーを書き、一次を通っているのですが😅)
    このコピーもその系統で、「LIFEの中にはIFがある」というのはもちろん、「おおっ」ってなるし、正直、お金とかそっちばっかりを攻めていたので、そうか「LIFE」ねと思ったのですが、これも「LIFEの中にはIFがある」程度の使い方であったら、うん、いつものやつねで終わってしまったと思います。本作の場合、「LIFEのIFを全部おさえる。」という、「全部おさえる」が実に秀逸で、これが一番「やられた!」の要素。この言葉が、この作品をファイナリストに押し上げていると思う。
    僕もそうだし、多くの人がそうである可能性があるんですが、発見ってやっぱり甘美なんですよね。すごいことに気がついた! ってなると、そこでもう思考が止まってしまう。でも発見ってあくまでも「入口」なんですよね。その発見をいかに上手く調理するかで、コピーは美味くも不味くもなる。逆に言えば、そこまで大した発見でなくても、調理が上手ければ美味いコピーに昇華することもあるわけで。
    この作品は、そう気づかせてくれるものでした。
 
 

笑われた夢は、おもしろい夢だということだ。


【コーレ/働く人の挑戦心を駆り立て、新規事業の立ち上げやユニークな企画提案などの挑戦を促すアイデア】
 
 そもそも、の話をしますとね・・。
 僕、このコーレさんの課題についてたぶん、ちょっと勘違いをしていまして。コーレさんという新規事業の会社が、「挑戦」をテーマに掲げていて、その新規事業に挑戦するコーレさんを表現してくれ、だと思っていたのですね。
 でもこのファイナリスト作品や、協賛企業賞、そしてSKATに載った一次以上の通過作品をみているうちに、なんとなーく違和感を覚え始めて、もう一回ちゃんとオリエンを読み直したら、「あ!」っとなってしまいました。
 どこにもコーレを表現してくれなんて一言も書いてない。書いてあるのは、「挑戦すること」の大切さを表現してくれ、というニュアンスでして、おお、じゃあ俺の書いた100本、ほぼほぼ無駄やったやんけ、となりました😅(審査する方も、こいつは何を書いているんだ? と思っていたことでしょう)。
 
 で、それを踏まえてこのファイナリスト作品なわけなんですが、感想としては、「そうか・・」というものでした。
 いやー、そもそもがそういうこととしてこの課題を捉えていなかったので、「やられたー!」とか、「そんなすごい切り口があったのかー!」とかいうのは当然なく、そうか、そういう意味だったのか・・となったのでした😅
 笑われた夢はおもしろい夢。
    笑うってことは、まぁもちろん馬鹿にしてる意味ですが、でもポジティブに考えると、面白いから、笑うわけですよね。つまりまぁ、見どころのある夢ってわけです。そうか、だから「あのコピー」みたいな感じなわけですね。ネガティブを、ポジティブに言い換えている。
 一次通過以上作品も、挑戦する人間がいるから世の中が変わっていく、みたいな作品が多い気がします。その中で、挑戦する人、ではなく、挑戦する人が見る夢、にスポットを当てて、そこから挑戦することの大切さ、を浮かび上がらせるのは、うん、鮮やかですね。
 
 ところで全然関係ないんですが、僕この作品、何回見ても「笑われた夢」ではなく、「失われた夢」って読んじゃうんですよ😂
 
失われた夢は、おもしろい夢だということだ。
 
 なんのこっちゃわからないけど、でもなんか深そうな気もしますよね🤔
 次回、似たような機会があれば、これ出してみようかな?(ダメダメ!)
 
 

   ・・以上、前半7作品をわたくしなりに分析してみました。
   後半7作品については、「次回」!

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