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とげ抜き夫

ある夕刻のこと。

その日は夫もわたしも疲れていて、なんだか体調もいまいちだった。双方ともに気分はロー。リビングにはどうしてもあんまりハッピーじゃない空気が漂っている。

なんていうのだろう、「ぴりぴりギスギスの一歩手前」みたいなあの感じ。

いつもなら笑ってやりとりできるようなひとことも、今日は妙にひっかかってけんかになってしまいそうな。その空気自体がまた落ち着かなくて、さらにどよんと気が滅入る。

そんなとき、いつもと変わらぬ子の空気感は大いなる救いだ。空気を読まないひとの存在は、太陽みたいなものである。

その日も3歳娘というまばゆい太陽を中心にしながら、表面上はおだやかに、しゅくしゅくといつもどおりの食事がすすんだ。

娘:「もっと、ちょーだい!」

私:「はいはいー。よく食べるねえ。ちゃんともぐもぐしてねー」。

いつもと変わらぬことばを、口先だけでつるつるとなぞる。よくないなあと思いつつ、ムスッと黙りこんでいるよりはよかろう、と上っ面の会話をしてしまう。「親」の仮面をかぶっているだけの自分。はあ、なんだかなあ。

表面的にはいつもどおりの、水面下にはどんよりピリピリを内包した食事を終える。つかのま、子とのたわむれタイム。

子をひざに乗せて絵本を読んでいるとき、ふとした拍子に手の甲を木製椅子にズッ、と強くこすりつけてしまった。瞬間「チクッ」と痛みを感じる。

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熱くも冷たくもない常温の温度感をめざしています。週に1〜2本は読みもの感のあるエッセイ、加えて、数百字程度の短文心象スケッチのようなもの、また購読者さん向けのおてがみや雑記などもときどき入ります。紙の雑誌のように、同じ空気感の中でもいろんなテイストのものを入れていきたいです。現在は火・金の11:00更新。ひとりランチで気分転換のおともなどに。

日常にまつわるエッセイを書きます。まぶしい情報があふれるWebのなかで、どうでもいいことをものすごく一生懸命に書きます。気持ちが疲れて...

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書き撮り編むひと@福岡。熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを集めた定期購読マガジン『とるにたらない話をしよう』運営中。#夜更けのおつまみ コンテスト ポプラ社賞。3歳児に親育てられ中。フリーランスで執筆・編集・撮影・広報サポートなど。読み方はおなかぽこ。