とある妊婦の脳みそ【おまけ編】入院前夜のつぶやき
まさか1月も半ばになって、この完結させたはずの妊婦マガジンを更新することになろうとは。
健診に行くたびに「赤ちゃん頭大きいね! お母さん小柄だし難産になるよ」「体動かして、予定日前に産む気合いでね!」と言われ続けていた臨月。
言われたとおり積極的に運動するようにして、親の方は昨年中に産まれる気満々だったのだけれど、子の方はなかなかどうして、お腹のなかの居心地がよほど気持ちいいのか、出て来る気配が一向にない。
お腹の中で「ドコドコ、にゅーい!」と元気に動いてくれるのはとても嬉しいけれど、実にのんびりマイペース。
なぜか普通に自宅で年越しをし(あれ?)、正月料理を食べ(あれれ?)、予定日はさりげなく通過して(おーい!)、なんなら鏡開きまで平穏無事に自宅で楽しんでしまった(まさかの!)1月。
早く出ておいでよ〜と中の人にたびたび話しかけてみるのだけれど、エコーで見る顔はいつも温泉に入っているかのごとく気持ちよさそうにしているので、果たしてどれほど聞いているのかどうか。
* * *
結局予定日を1週間過ぎても気配すらなく、陣痛促進剤などを使う誘発分娩を行うことになった。
入院日は明日。そんなタイミングでふと思い立って、この文章を書いている。妊婦という立場も、残りわずか。
やっと会えるよという嬉しい思いはもちろんあるが、今このときも、ゴニョゴニョと絶え間なくうごめいている大きなお腹とはこれでお別れなのだなぁ、と思うと、ちょっと切ない。
今は文字通り体を共有しているし、一心同体な感じだけれど、あなたは別の意志をもち、ひとりの人間として、もうすぐ産まれてくるのだね、と思う。
あなたはどんな人生を、歩んでゆくのかな。
* * *
本当は産まれて来る日も薬の力じゃなくて、自分の意志で、自分で出てきたいタイミングで決めてほしかったのだが、超過し過ぎてしまうと命にリスクが出てくるのでいたしかたない。
ただ私の方はあきらめ悪く(笑)、誘発入院の日取りが決まってからもお腹に向かってマジメに赤ちゃんに状況を解説していた。
「聞いてる? この日には入院して、薬の力で出てきなさい!ってされちゃうからね。自分の意志で出てきたいんだったら、この日までのよき日を選んで、自分のタイミングで出てくるんだよー。どうしてもお腹の中が気持ちよくて薬が入ってくるぎりぎりまでいたいなら、それを選ぶ意志も尊重するけどね〜。自分のタイミングで出てきたほうがいいんじゃないかな〜」とか、なんとか。
理不尽に指示されたり、強制されたりすることが嫌いな夫婦の子だから、きっとそのあたりは遺伝しているのじゃないかとゆるく期待しつつ。
けれど前夜になっても気配がないから、ぎりぎりまでお腹の中を満喫する方を選んだのだろう。
マイペースなのも親ゆずりな気がするので何も言えない。
* * *
ところで誘発入院の日取りが決まったタイミングで私の母に話を聞けば、母も第一子(私の兄)を産むときは同じく予定日超過で誘発入院だったらしい。
ひっぱり出してきたという当時の記録によると、陣痛促進剤の痛みで七転八倒した、とのこと。しかもビッグベビーでなかなか出てこず難産。帝王切開にするかどうか……というところでなんとか産まれた。
お産の傾向は母に似るとは聞くけれど、私も赤ちゃんの大きさに対して骨盤サイズはぎりぎりと言われているし、おもしろいくらい状況が似ている。
「同じ道をたどってるわね〜(笑)」と母。やっぱり私も七転八倒することになるのだろうか。なるんだろうな。
そう考えると、今お腹の中にいる子(娘)もいつか、同じようなお産をすることになるのかもしれないな、と思いを馳せる。
いやいや、まずは自分が無事に産まれてくれないとね。
* * *
あきらめの悪い母は、まだちょっと期待している。
奇しくも、今夜は満月。「満月の日に陣痛がくる」なんて、普段は信じないジンクスにも、あやかりたくなる。
締め切りギリギリにきちんと仕上げる傾向まで親ゆずりなら、誘発入院前夜に産まれるのを選ぶのも納得できる、なんて(笑)。
* * *
まぁいいのです、ほんとうは、無事に元気で産まれてくれれば、もうそれだけで。いつでもいいよ。怒らないから安心して産まれておいで。
そんなわけで一度閉幕したはずの『とある妊婦の脳みそ』、改めて閉幕です。
おまけ編はまたさらにとりとめのないつぶやきとなりましたが、お付き合いいただいた皆さまには心から感謝。いつもありがとうございます。
何も変わらないようで、毎日、誰でも、何か変化はしているもの。今日と明日ではきっと何かが違うのは、誰でもそう。
皆さまも、どうぞよい夜をお過ごしください。
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