フィジーの蟻
砂糖をぶちまけた。
キッチンでかぼちゃの煮物をつくろうとしていて、うっかり手をすべらせたのだ。
「あっ」
と思ったときには、砂糖のビンが空を飛んでいた。
ああいう瞬間だけ、景色がスローモーションに見えるのはなぜだろう。
気づいたら砂糖は床に「ばしゃん!」と見事にちらばっていて、不可思議な時の流れはもとに戻り、何事もなかったようにたんたんとつづいている。
床いっぱいに砂糖をぶちまけたまま。
ほんとう、あの一瞬のスローモーションはなんなんだろうね。
*
さて床に散らばったサンド・アートのような砂糖を見て、反射的に「あ、掃除しなきゃな」と思う。
砂糖はほら、ちゃんと掃除しないと。
棚と床のすき間とか、フローリングの継ぎ目とかさ、ちょっとでも残ってると蟻とか来ちゃうし。
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