見出し画像

咳込みデイズ

眠っては咳込んで起き、眠っては咳込んで起き。

疲れているのになかなか眠れず、ぐずりにぐずりまくっていた娘がようやくいま、すこし眠っている。

息をするたび、小さくてかわいらしいその鼻から、ずびびびっ、ずびびびっと、決してかわいらしくはない音がしてる。鼻がつまっているときって大人でも苦しいよね。わかる。わかるだけにつらい。

さっきまで不機嫌で何をしても大暴れ、抱っこしても「うあーん!」とのけぞってしまう君から一転、しずかに目を閉じてすやすや……じゃなかった、ずびびびっ、ずびびびっと寝息をたてている君をみるのは、なんだか不思議な気分だ。嵐がパタッとおさまったみたいな静寂。いや、音はしてるんだけど。

気持ちよさそうに眠っている君の長いまつげに見とれていたら、ゴホッ、ゴホッゴホッゴホッ!とまた、強い咳込み。

途端に顔をゆがめ、ゲホゲホゲホ!と苦しそうに咳込みながら、目を閉じたまま足をバタバタさせて、ぐるぐるとのたうちまわる君。ブランケットが体に巻き付いて自由を奪って、それがさらに気に食わなくて、もういや!全部いや!みたいな感情を体全体で表現してる。

“せっかくねむっていたのに!やっとねむれたのに!ねむいの!わたし、ねむいのよ!!”

心配になるほど激しく咳込んで眉間にしわをよせても、開けようとしない目に、眠りたい意志を感じて、母は苦しい。何度も何度も咳込みながら、ぐるぐる、ぐるぐるとローリング。

咳自体がおさまっても、すぐには眠りモードに戻れず「うー、うう!」とうめくようすは、なんどみてもやっぱり切ない。

苦しいねえ、眠りたいねえ、お咳つらいねえ、また起きちゃったねえ、眠れないねえ……。

そんなループを繰り返しながら、薬を飲ませたり吸入させたりするほかは、寄り添うことくらいしかできない、娘の咳込みデイズ。

* * *

そんな娘をかたわらにこのnoteをぽつぽつ書いていたら、娘はまた激しく咳込んで、のたうちまわったすえに結局目を開けた。

“ママのバカァ〜!”とも、“起きちゃったよう!”とも、“なんでこんな苦しいの!”とも見える、またそんなすべての感情を混ぜたような、うらめしそうな目でこちらをじっと見て、足をバタバタ、体をぐるぐる。

「起きちゃったねえ。苦しいねえ……。もうちょっとねんねできるといいねえ、ここいるから、ねんねねんね……」

そう声をかけて頭や背中をなでる。でもまあ、いつもは一度起きたらまず寝ないからもう無理だろうと思っていたら、いまはまた、ずーー、ずーー、と寝息をたてながらうつぶせで寝ている。熱や咳で体力を消耗しているのに夜も昼も思うように眠れていないから、相当疲れているのだろう。

* * *

最近は育児の話が多いから他のトピックを書こうかな、と思ったのだけれど、結局いまの自分の気持ちの中心に素直に、現場からのリアルタイムレポートを。

大人用の布団の横幅におさまるかわいらしい生き物が、熱をおびてぐうぐうと眠るこの気配も、ずびずびという鼻息も、咳込んでもさすることしかできないもどかしさも、いつか泣きたくなるほどなつかしくなる日が来るんだろうなと、そんな気がして。

最近は「成長したなあ」「大きくなったなあ」と思うことが多かったけれど、君はまだこんなにも小さいんだな。うつぶせの姿勢でふとんに「ちょこん」と置かれた君の手をみて、それからキーボードを打つ自分の手をみて、そんなことを思う。じっくりと見る機会なんて、寝ているときくらいしかないもんだ。

浅いねむりで「うぅ……」と言っていた娘は、いまは口のはしからよだれをたらしながら、無防備に寝入っている。鼻息は、ちょっと「すうすう」に近くなってきた。

どうかこのまま、少しでも咳の発作がおさまって、1分でも長く眠って、体力が回復できますように。

おやつに、おいしい焼き芋食べられるといいね。

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。