サツマイモと天邪鬼

知人宅でとってもおいしいサツマイモをいただいた。オーブンでじっくり焼き上げられたそのお芋は、芋の甘い密すらとろりと融けだしていて、見るからに美味であった。実際、これがサツマイモか!というほどおいしかった。

そしてなんとそのご家族、そのお芋がたくさんあるから持っていって、と手みやげに持たせてくれたのだ。元来食いしん坊の私は、やったー!と心のなかで叫び、食べるチャンスを待っていた。

さあいざ食べようという1度目のときは、なんとなく、オーブンで焼き上げるのは面倒だな…と(実際やってみれば大差はないのだが)思い、アルミホイルでくるんでオーブントースターで焼いてみた。

最終的にはなかなかおいしく仕上がったのだが、意外と時間がかかった。おなかがすいていたので、少しずつ時間をのばして再加熱しながら、最終的には「まだちょっと固いな」と思いつつ、待ちきれずに食べてしまった。

もうちょっと待てば美味しくほっこり焼きあがる、とわかっているのに、ひとくち食べてしまうともう待ちきれない、今すぐ食べたいと自制できなくなる、貧乏性で悲しい性質である。食べものは早い者勝ち、そう教育されてサバイバルしてきたからか。

2度目は、てっとり早く食べたいし、と時間を優先して、ラップにくるんで電子レンジでチンしてみた。

オーブントースターで長時間かかった経験が頭に残っていたからか、まあ早いとしてもこの分数ならまだまだ足りないくらいだろう、と思って少なめに見積もり、数分セットした。だがなんと、ワット数が高かったからか、その数分で加熱しすぎてしまったらしい。

おや、まさか、そんなばかな、と思っておそるおそるレンジから芋を取り出してみると、ようすがおかしい。あれ、この数分に何があった?と思うほど、見るからにしおしおになっている。

頬張ってみれば、まあぎりぎり、お芋のほくほく感が残っているものの、これは何かを思い出す風味。これは……ああ、干し芋だ。ああ。それだ。

もちろんお芋はありがたくぺろりと最後までいただいた。食べものにはそれだけで前提として感謝している。だが食いしん坊的には、私がなまけもので天邪鬼であるばかりに、ベストな調理法で食べてあげられなかったことが(自分の責任のくせに)なさけなくふがいないばかりだ。

人はいつだって、失敗から学ぶのである。私の場合は、1度では学ばず、2度目も反抗し、3度目くらいにようやく学ぶのだ。これからもきっと、そうして生きてゆく。お芋よ、ごめん。おかげで今日もまた、ひとつ学びました。


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