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第7回毎月短歌(外村ぽこ選)

みなさま!ご無沙汰しております、外村ぽこです!
本当は2月中に発表予定だった第7回毎月短歌の発表が気づけば4月…。
時の流れは早いですね!ということでさっさと本題に入りましょう!

テーマ詠「映画」

グッドぽこ賞(三席)

悲しみの基準に少し満たなくて泣ける映画で足してから泣く/宇井モナミ

テーマ詠のグッドぽこ賞はこちらのお歌です。恐らく主体には悲しいことがあったのでしょう。恋人との別れかもしれないし、祖父母との死別かもしれません。
ただ、その悲しみは主体が泣くには不十分であったというのがリアルです。
悲しくないわけではない、でも泣けない。泣けないと自分に悲しみをもたらした相手に失礼ではないかという気すらしてくるのだと思います。だから『映画』で悲しみを足す。
このリアリティのある感情を上手く表現している一首だと思いました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

「それ、私のポップコーンですけど」が、彼と交わした最初のことば/katax

続いてナイスぽこ賞はこちらのお歌です。映画館で隣の『彼』が間違って主体の『ポップコーン』を食べてしまっている場面。思わずクスリとしてしまいますが、下の句で急にロマンチックになるのが良いですね。
作者の方は併せて「どうでもいいような出会い方をした方が長続きするってこと、ありませんか?」とコメントしてくれていますが、確かに運命の出会いが必ずしも劇的である必要はないなと納得してしまいました。
鉤括弧内のセリフが破調っぽいですが、それが逆にぶっきらぼうな感じが出ている気もします。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

最愛の君と映画を観るときはIMAXのチケットにする/小谷リノ

最後、ベストぽこ賞はこちらのお歌です。この歌は一読した時に正直理解ができなくて、2回目ぐらいでそういうことか!となりました笑
作者の方が「とっても好きだってことを行動の細部まで利用して伝えたくなっちゃうところがちょっと可笑しい。」とコメントしてくれましたが、まんまとしてやられた感がありますね。
好きという感情をどう伝えたらいいか、誰しもが悩むことであり、主体はすごく些細な部分まで利用しないと、この好きという感情は伝わらないと考えているのかもしれません。
もどかしさと愛おしさがMAXなお歌です。好きです。

以上がテーマ詠部門の発表でした!それではお次は自由詠部門です!

自由詠

グッドぽこ賞(三席)

「会いたい」と「ポチ」が交互に現れてマジカルバナナは悲しい遊び/猫背の犬

まずグッドぽこ賞はこちらのお歌です。『マジカルバナナ』といえばパーティーゲームであり、みんなでワイワイやる印象があります。ただ、このお歌はその真逆とも言える発想が魅力的です。
愛する犬を失った主体の喪失感をマジカルバナナで表現している点も秀逸ですが、恐らく一人で、ルールも無視して延々と同じ言葉を繰り返す主体がある種、狂気じみています。
悲しみの表現の上手さももちろんですが、いつか主体が立ち直り、マジカルバナナが再び楽しい遊びになるところまでがセットのような雰囲気を感じました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

ザラメのないカステラみたい愛のことすらすら話す人の食感/瀬生ゆう子

ナイスぽこ賞はこちらのお歌です。一読してなんとも不思議な感覚に見舞われました。
『人の食感』という表現が素敵で、比喩表現だと思うのですが、相手の言い分の飲み込み難さを『食感』としているのかなーと。そうするとなんとなく分かる気がしてくるから不思議です。
(個人的に)ザラメは無い方が口当たりが良い気がします。ただ、愛ってそんな単純じゃなくて、楽しいだけじゃないと言われている気分です。
余談ですが、カステラのザラメはかつて防腐剤として使われていたようで、そう思うとザラメのないカステラみたいな人の愛はすぐ腐ってしまうのかもしれません。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

黒板に新米教師が書き綴る英文右肩上がりに伸びて/宇井モナミ

ベストぽこ賞はこちらのお歌です。『新米教師』の初々しさが上手く表現されていますね。『黒板』は実際かなり大きくて、経験のある方も多いと思うのですが、全体像が見えないので文字が気づいたら斜めっている印象があります。
この新米教師も黒板を書き慣れていないのでしょう。それだけでも微笑ましい歌ですが、後半の『英文右肩上がりに伸びて』というのが素敵です。将来ある生徒だけでなく、この教師にもまだまだ伸びしろがある、誰しも未来に希望があることを示唆しているようで祈りのような歌だなと思いました。好きです。

最後は1月の自選部門です。

1月の自選

グッドぽこ賞(三席)

前に乗る人と私のスカートがおんなじだったイオン行きバス/宇井モナミ

まずグッドぽこ賞はこちらのお歌です。この歌の魅力的なポイントは田舎特有のあるあるというか雰囲気を上手く歌にしている点だと思います。バスに乗っているので主体は恐らく学生なのかなと思いましたが、イオン行きのバスに需要がある時点で田舎でしょう。
電車ではなく、バス。それがわざわざイオンに行く。主体の住む町にはイオンぐらいしか遊ぶところがないのかもしれません。そうなると必然的にイオンで服を買う。そうなると服が被る。
その気まずさにクスリとすると共に、なんとなくノスタルジーも感じられるようです。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

もうひとり増えた場合もかわらずにピノを家計にねじ込みましょう/ナカノソト

続いてナイスぽこ賞はこちらのお歌です。まずこの主体にとっての『ピノ』の存在の重要さに惹かれます。『もうひとり』とは子供のことでしょうか。子供ができると生活が一変するほど楽しくも大変な日々が待ち受けていると思います。
そうすれば、二人が衝突することもある。でも、二人があの日の二人に戻れるアイテムがピノなんじゃないかと思いました。お互いの大好物なのかもしれないし、一日の終わりにピノを食べるルーティンがあるのかもしれません。
子供ができれば節約も必要ですが、ピノは『家計にねじ込』んでいつか子供の好物になってほしいと思います。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

野良猫に化けて出るねと言っていたあなたのせいで長くなる帰路/猫背の犬

締めのベストぽこ賞はこちらのお歌です。この歌が放つ寂しさに強烈に惹かれました。恐らく『あなた』はもういないのでしょうが、あなたは生前『野良猫に化け』ると言っていた。
そうなれば主体が猫を探してしまうのは必然でしょう。ただ仮に猫を見かけても、それがあなたであることを確認する術はない。この遣る瀬無さに涙してしまいそうです。
また、『帰路』というのがリアルですね。仕事帰りなのかなと思いましたが、本当は一日中あなたを探したい。けど、生きていくために働かないといけない。
転生というファンタジーと生活というリアルが密接している上手さも感じます。好きです。

ということでこれにて発表は終わりとなります!Xのスペースではネクストぽこ賞(佳作)も紹介しているので聴いていただければ幸いです!

それでは第8回毎月短歌の選評でまた会いましょう!ばいばい!(こっちも遅刻しているので早めにやります…)


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