歌集|辿り着いたらここになってる
会計が終わった後のわずかな間 いまさら袋くれと言えない
人に期待しなくなったから人は温みを求めて木を欲する
繋がりが簡素になったこの街にポストはとうに置かれていない
すっぴんを妄信してる人たちはきっと調製豆乳が好き
ここじゃないどこかに行くと決めたけど辿り着いたらここになってる
あかるさに感謝するにはくらやみを知っているのが必須条件
毎日は続く体で生きている いつか途切れると分かっていても
好きだったショートケーキが突きつける あの頃のままではいられない
恋人がいるいないに関わらずリア充爆ぜろと願う聖夜
こんなにも生きにくい訳を知りたくて開いた辞書に涙のあと
ひたすらに子供を想いモンスターペアレントなる称号を得る
テレビから不意に流れたあの曲に二度と会えない、この銀河では
真夜中の真がなんなのか知りたくて開いたスマホ 眠らない夜
ぼくらには幸福だとか愛情が見えないゆえに売れるブランド
一度だけ過去に戻れるならあの日二着の精子に先をゆずる
人である以上歩める道なんて限られている良くも悪くも
幸福は不幸を築く基礎だから家出ができる不幸を祝え
死に場所を求めて乗り込むタクシーが着いた場所から望む朝焼け
一度だけ別れるために幾千のきみを愛した病室のかべ
枯れた葉をふみつぶすおとが足裏を伝ってこころを潤すよ、冬
ここから先は
529字
¥ 100
もっと自分の投稿を見たいと思っていただけたらフォローしてください!飽きっぽい自分にはこれ以上のモチベーションアップはありません!