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第9回毎月短歌(外村ぽこ選)

みなさま、ご無沙汰しております。外村ぽこです。
私、外村ぽこは、本当は4月中に発表しなければならなかった第9回毎月短歌の発表ですが気づけば6月に突入していることを反省しに参りました。
という前置きはここまでにして早速発表に進もうと思いますが、今回もnoteのみでの発表となりますことご容赦ください!第10回はXのスペースでやろうかなと思っています!

テーマ詠「桜 or 花」

グッドぽこ賞(三席)

そんなにも麗しく咲くなんてさぞ孤独な冬を生きたのでしょう/あかい あめ

テーマ詠「桜 or 花」からまずグッドぽこ賞はこちらのお歌です。まず最初に思ったのは優しい歌だなということです。春の花、特に桜は言うなれば目に見える春です。みんなが好きで注目しますが、当然ながら桜は冬も生きているんですよね。この世から忘れ去られたかのように存在する冬の桜に着目する優しさと、それを乗り越えたからこそこんなに美しいと思える感性。桜に話しかけているような結句も相まってとても優しい雰囲気に溢れた一首だと思いました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

髪からも明るいミモザの香りして春に沈んでいこうと思う/ぐりこ

続いてナイスぽこ賞はこちらのお歌です。恐らく主体は新商品で新しく購入したミモザの香りのシャンプーを使ったのかなと思いました。ミモザもとても春が感じられる花ですが、そういった商品が出回ることでも春を感じますよね。発想ももちろんですが、香りを『明るい』という形容詞で表現している点や、『春に沈んでいこう』という比喩もとても秀逸です。短くも確かに存在していて嬉しい春を全身で享受しようとする主体にとても好感が持てる一首です。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

桜色のフラペチーノを飲みながら進路希望の第二まで書く/宇井モナミ

最後のベストぽこ賞はこちらのお歌です。進路希望調査の第二までというところから主体の将来の漠然さが伝わってきます。恐らく主体の学生生活は充実していて卒業後の自分がイメージできないのではないかと思います。時系列は想像するしかないですが、早ければあと1年ほどで卒業なのかもしれません。それでも未来は見えなくて今が永遠に続けばいいと思ってしまう。そんな雰囲気を感じました。学生にとっては果てしない一年が大人になると一瞬で過ぎ去る感覚も相まってエモーショナルな一首だと思います。好きです。

ということでテーマ詠「桜 or 花」からは以上となります。さくさく次の部門の発表に参りましょう!

自由詠

グッドぽこ賞(三席)

猿の目が充血してて可哀想ですねで終わる地域のニュース/ぐりこ

まずグッドぽこ賞はこちらのお歌です。この歌の何が良かったかというと共感性ですね。自分も田舎に住んでいるのですが、田舎って基本的に平和で毎日ニュースになるようなことが起こらないんですよね。世界では戦争を始め、大変なことが起きている中で恐らく動物園の猿のことを報道するニュース。不謹慎かもしれませんが暗い話題ばかりだと参ってしまうので自分はこうゆうどうでもいいニュースが割と好きだったりします。身に覚えのある感覚が呼び起こされる一首でした。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

下の名できみを呼ぼうとしてやめてブランコみたいな土曜日の午後/小仲翠太

続いてナイスぽこ賞はこちらのお歌です。一読してなんて初々しい歌なんだろうと年甲斐もなくキュンキュンしちゃいました。個人的には付き合いたてのカップルの初デートとかかなと思いました。主体は男の子で前々から今日は名前で呼ぶぞって意気込んでいて、いざ当日を迎えたらチキってしまってもう午前が終わってしまって…と想像が止まりませんね。それを『ブランコみたい』と比喩しているのが良くて何度も呼ぼうとしてやめてを繰り返しているのがまた良いです。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

あの店のドーナツの穴は広がっていよいよそちらが本体となる/琴里梨央

最後にベストぽこ賞はこちらのお歌です。この歌はなんだろう…上手く言語化できないけど好きだなーと強烈に惹かれました。このお店は物価高などが影響してお客さんに気づかれないように少しずーつ穴を大きくしていったのかなと思いました、アハ体験みたいな。ただ、そちらが本体ってことは少なくとも過半数は空洞になってしまったんでしょうね。そうなるともう…バレますよね。それでも主体はあの店に通うのでしょうか…気になる。ユーモラスに溢れながら現代社会にも踏み込むような色々と考えさせらる一首だと思いました。好きです。

これにて自由詠の発表は終わりです。それでは最後の3月の自選部門に参りましょう!

3月の自選

グッドぽこ賞(三席)

鬼はそと鬼はそとって言いながら母は私の内側にいる/まちのあき

まずグッドぽこ賞はこちらのお歌です。主体が子供と豆まきをしている場面だと読みました。そしてふと自身の母のことを思い出したのでしょう。恐らく主体にとって母は厳しく、優しい存在だったのだと思います。時には厳しいしつけに母のことを憎んだこともあったかもしれません。ですが、その母からの教えが今の主体を形成しているのも事実です。主体自身が母となり、あの頃の母に思いを馳せる感覚がとても愛に溢れている一首だと思いました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

咲くことは老いていくこと どの花も遺影のような植物図鑑/猫背の犬

続いてナイスぽこ賞はこちらのお歌です。二句切れになっていて独白のような上の句から景が見える下の句に移るわけですが、その取り合いが素晴らしいです。人は生まれた以上老いていき、やがて死ぬわけですがこの主体は老いることに決して悲観的でないようですね。植物図鑑に載っている花はどれも美しく咲いていますがそれを『遺影』と表現しているのが魅力的です。人はなぜ生まれたのか?という永遠の問いの一つの解になり得るのではないかとすら思う一首です。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

ひとりでも生きてはいける蜂蜜の蓋は前よりやさしく閉める/おさむ

最後にベストぽこ賞はこちらのお歌です。自分は彼女と同棲を始めた主体をイメージしました。二人で生きていくというのは楽しくも試練の連続であり、気の置けない仲でも寄り添う必要があります。それはとても些細なことも含まれていてこの歌では『蜂蜜の蓋』にフォーカスしているのが日常感があり良いですね。また、『ひとりでも生きてはいける』というのは純然たる事実ですが、でもふたりで生きていきたいという想いが込められている歌だと思いました。好きです。

ということでこれにて第9回毎月短歌の外村ぽこ選を終わりにしたいと思います!発表がここ最近遅れていて本当に申し訳ないです。また早いうちに第10回の発表もしようと思いますので楽しみに待っていただければ幸いです!読んでいただきありがとうございました!

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