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第11回毎月短歌(外村ぽこ選)

お久しぶりです、外村ぽこです。生活の余裕がなくて毎月短歌の選がとても遅れていて申し訳ないです…
現実ではもう夏も終わりですが今回は夏感たっぷりの歌たちから好きな歌を選ばせていただきました!それではどうぞ~

テーマ詠「もうすぐ夏」

グッドぽこ賞(三席)

ちょっとだけ休みをくれと六月のエアコンが鳴る ちょっとだけだよ/白川 侑

グッドぽこ賞はこちらのお歌です。めっちゃ分かる~って思いますね、6月でも暑いので自分もエアコンをフル稼働させてしまうので。このお歌の可愛いところはやはりエアコンの擬人化とそれと会話する主体ですね。主体の快適さのためにエアコンは一日中働かされると思うとまさにブラック企業、主体が良いと言うまで休んではいけない。熱中症対策には寝るときもエアコンはつけっぱなしのほうが良いそうなので主体には飴と鞭を上手く使ってエアコンをガンガンに使ってほしいですね。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

丁寧にぬれたマーマレードの夏蜜柑 わたしはきっと大丈夫です/楼瑠

ナイスぽこ賞はこちらのお歌です。不思議な雰囲気で歌意を読み解けていないと思うのですがそれでも選ばせられる引力があります。語順的に『夏蜜柑のマーマレード』の方が正しい気がするし『ぬれた』が平仮名に開かれていて濡れたなのか塗れたなのかどちらでもないのか…。結句の『わたしはきっと大丈夫です』がまた魅力的で主体も断言はできていないんですよね。きっと主体の正解は誰かの間違いで、主体の大丈夫は誰かから見たら大丈夫じゃないのかもしれない。それでも暗い雰囲気はなくどこか希望に満ちているようです。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

水際を裸足で歩く 待つことは嫌いじゃないと気付く夕暮れ/あきの つき

ベストぽこ賞はこちらのお歌です。こちらは様々なシチュエーションが想像できますが自分は子供を水遊びに連れてきた母親かなと読みました。プールあるいは川で楽しそうにする子を眺めながら自分は足だけを水に浸ける、それが幸せだと言うことに気づけた主体に流れる穏やかな時間が感じられます。そろそろ帰るよと声を掛け帰路につく景まで浮かぶようです。もちろん恋の歌や水際を比喩とした主体の人生観を表した歌という読みもできると思いますがどれで読んでもまた違った味わいがあります。好きです。

自由詠

グッドぽこ賞(三席)

春までにクロネコの箱に詰めこんだ過去に勇気をたしてゆきます/水の眠り

グッドぽこ賞はこちらのお歌です。一読してとても美しい比喩だなと思いました。引っ越しの際に段ボールに詰めるものって確かにすべて過去なんですよね。それを未来に持っていく作業が荷造りなのかと。春から新天地で暮らす主体にはきっと期待と同じくらい不安があるのでしょう。早めに終わらせた荷造りへ『勇気をたしてゆ』く期間とは一人で心の整理をつける時間かもしれないし離れ離れになる友と過ごす時間かもしれません。春にはきっと前を向く主体のこれからに思いを馳せたくなる一首です。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

見抜いたぞ 貴方が嘘をつく時はマツケンサンバを踊り始める/せんとおん

ナイスぽこ賞はこちらのお歌です。…え?気づくの遅くない??ってのが第一印象です笑 急にマツケンサンバを踊りだしたらなんで?ってなるのが普通だと思うのですが、今までは貴方の悪ふざけだと思っていてむしろ主体を楽しませてくれる行為だったのかもしれません。それが主体は気づいてしまった、それが嘘を隠す行為だということに。気づいてしまったということが貴方への愛が薄れていることを示唆しているのかもしれません。一読した際の面白さと繰り返し読むことにより味わえる不穏さのギャップがたまらない一首です。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

快速の揺れがスキップしてるのはあと七分で君に着くから/桜井弓月

ベストぽこ賞はこちらのお歌です。こんなに上手な比喩でストレートに愛を伝えているのが凄いなと思いました。主体が乗る快速はがたがたと揺れるので多分普段は乗り心地悪いんだよななんて揶揄されているのでしょう。でもその揺れすらも愛おしくさせるのが『君』という存在ですね。自分は少し遠距離恋愛で週末とか月一とかでしか会えないのかなと思いました。そんな主体の待ち切れなさが『七分』という具体的な数字で表現されていて感情移入もしやすくキュンとする一首です。好きです。

5月の自選

グッドぽこ賞(三席)

お姫様だっこできない筋力で君を背負って駆ける夏空/藤瀬こうたろー

グッドぽこ賞はこちらのお歌です。お姫様だっこができない主体と君との関係性が良いですね。お姫様だっこって漫画とかでよく見るけど結構大変だったりする。それができないことが理想通りにいかない人生のメタファーな気がしました。それでもおんぶに切り替えて夏空の下を駆ける主体が良いですね。なんとなく主体は口が裂けても君に「重い」とは言わなそうだし君も少し頼りないけど優しい主体に安心して身を預けている気がしてとてもピュアな一首だと思いました。好きです。

ナイスぽこ賞(二席)

占いは未来ばかりを見たがって今の私を信じてくれない/ZENMI

ナイスぽこ賞はこちらのお歌です。着眼点が素晴らしいなと思いましたね。確かに占いって基本的に将来のことを提示してくるものですが、それは将来という未知のものへの恐怖をわずかでも和らげてあげるのが占いの本質だからなのではないでしょうか。ただこの占いに来た主体が欲しかったのは今の自分に対する激励や賛辞で、占いで未来に訪れるであろう良いことを聞くたびに今の自分が否定される気分になってしまったのではないのでしょうか。今の主体を肯定してくれる相手が現れてほしい一首です。好きです。

ベストぽこ賞(一席)

雨になる前に歩いてみないかと五月の風に誘われる靴/ゆひ

ベストぽこ賞はこちらのお歌です。六月といえば梅雨なので雨が多くなる季節です。だとしたら五月は確かに歩くのに最適な季節なのかもしれません。雨だと汚れてしまうのでお気に入りの靴は履けないというのは考えてみれば当たり前ですが、車が当たり前になっていたり仕事で忙殺されていたりすると意外と歩くという行為はしなくなるものです。忙しなく過ぎる主体の日々にまだ暑くなく肌寒くもない春の風が吹く。今日は一駅分歩いて帰ってみようかなと思う。そんな人生の小休止になるような瞬間を美しく切り取っている一首だと思いました。好きです。

ということで第11回毎月短歌の選評を終わりにしたいと思います。毎回読んでくれている人も初めて読んでくれた人もありがとうございます!またね!

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