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累計調達額100億円、クラウドファンディング マクアケの動向データ

近年、日本でも個人などがオンライン上で資金調達を行うクラウドファンディングが注目されています。資金がない個人でもプロダクトやサービスのアイデアを実現化できるため、個の時代の象徴の一つとして浸透してきています。

また、個人ではなく会社もテストマーケティングの一環として活用するケースも出てきており、テレビ番組「ガイアの夜明け」で、老舗繊維メーカーである東洋紡がMakuake(マクアケ)のクラウドファンディングサービスを活用したことでも話題となりました。

成長する国内クラウドファンディング市場

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矢野経済研究所の報告によると、国内のクラウドファンディング市場は成長著しく、2014年度には221億円だった市場規模が2018年度には2044億円になっており、わずか4年間で10倍弱にまで成長してきています。

クラウドファンディングのタイプ別の構成比は、ソーシャルレンディングと呼ばれる貸付型(クラウドファンディング事業者が仲介し、資産運用したい個人投資家から小口の資金を集め、大口化して借り手企業に融資する仕組み)が90%以上のシェアを持っています。

マクアケ、CAMPFIRE(キャンプファイヤー)、Readyfor(レディーフォー)などが主に取り扱っている購入型(起案されたプロジェクトに対して支援者がお金を支援し、支援者はそのリターンとしてプロダクトやサービスを得る仕組み)はまだ5.9%ですが、今後の成長が期待されています。

マクアケ、キャンプファイヤー、レディーフォーのサービス比較

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上記は国内の有名クラウドファンディングサービスの比較表です。

Readyfor(レディーフォー)は代表の米良はるか氏が2011年3月に東京大学発ベンチャー企業の事業の一環として開始しました。2018年10月に初の外部資金調達5.3億円を実施し、2019年3月にエクステンションラウンドの位置付けで4.2億円の資金調達を行なっています。

手数料(決済手数料含む)は、12%のプランとコンサルティングサービスが付随した17%のプランが用意されています。

2019年3月のプレスリリースによると、これまで約10000件のプロジェクトを掲載し(2019年5月時点では約6100件がReadyforサイトに掲載)、累計調達額は約80億円、支援者総数約57万人に達しているそうです。また、2018年10月のプレスリリースでは累計調達額は約70億円、支援者総数は約50万人でしたので、年間の累計調達額はおよそ24億円(=10億円 ÷ 5ヶ月 × 12ヶ月)で、平均手数料を15%と仮定すると、売上は約3.6億円と考えられそうです。そして、支援者1人あたりの平均支援金額は1.4万円程度(=10億円 ÷ 7万人)と言えそうです。

キャンプファイヤーは共同創業者 兼 代表取締役の家入一真氏が2011年6月にローンチし、2017年6月に6億円、2019年5月に11億5000万円の資金調達を実施しています。市場が拡大する一方で、各社混戦状態を抜け出すために資金調達による事業ドライブをしかけているフェーズに見えます。

手数料(決済手数料含む)は2018年3月に13%から17%へ変更されています。

2019年5月のプレスリリースによると、これまで約21000件のプロジェクトを掲載し、累計調達額は約115億円、支援者総数約121万人に達しているそうです。また、2018年12月末時点においては累計調達額は約101億円、支援者総数は約102万人だったようで、年間の累計調達額はおよそ42億円(=14億円 ÷ 4ヶ月 × 12ヶ月)で、手数料が17%なので、売上は約7.1億円と考えられそうです。そして、支援者1人あたりの平均支援金額は7400円程度(=14億円 ÷ 19万人)と言えそうです。レディーフォーよりも平均支援金額は低いですが、タレント・女優の「のん」を起用したテレビCMを打つなど、ボリュームゾーンを狙う戦略を取っていそうです。

マクアケはサイバーエージェントグループが運営しており、キャンプファイヤーやレディーフォーよりも2年以上後発で始まったサービスです。WEBサイトにおけるプロジェクト掲載件数は約6100件です。手数料(決済手数料含む)は20%で、3つのサービスの中で最も高い数字になっており、価値を上手くPRできていると言えるかもしれません。

一方、累計調達額は2016年9月プレスリリースで15億円を突破したという発表から更新情報が見当たりませんでした。また、これまでの支援者総数の情報などもなかったため、今回はWEBスクレイピングによってマクアケの直近の情報を調査しました(結果は2019年5月時点)。

プロジェクト件数は順調に増加

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年別のプロジェクト件数は、クラウドファンディング市場の盛り上がりの影響もあり、他のサービスと同じように順調に増加しています。2018年のプロジェクト件数は1893件、2019年5月初旬時点では1048件掲載されているため、今年は3100件を超えるプロジェクトが掲載されると見込まれます。この数字はレディーフォーの推定予測値2400件(1000件 ÷ 5ヶ月 × 12ヶ月)を追い抜くペースです。

目標額を達成するプロジェクト比率も増加傾向

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掲載期間が終了したプロジェクトについて、目標額を達成したプロジェクトと未達のプロジェクト数を見ると、2016年を境に達成したプロジェクトの比率が伸びていることが分かります。

購入型の場合、目標額に達しないと事業者側の売上に計上されないモデルになっているため、審査時点でチェックを厳しくしたり、目標額を慎重に検討したりするなどして、達成件数比率をKPIとして管理しているのではないかと推察されます。

累計調達額は92億円に到達か?!

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掲載期間が終了かつ目標額に達したプロジェクトの支援金総額を年別に並べてみると、2016年末までの累計調達額は18.6億円になり、プレスリリースにおける’16年7月末時点の15億円という数字と比較しても妥当なデータと言えそうです。

そして、2019年5月初旬時点での累計調達額は92.5億円に到達しており、このペースでいくと今年6月〜7月には100億円達成の発表があるかもしれません。また、マクアケの年間調達額の実力値としては約43.8億円(=14.6億円 ÷ 4ヶ月 × 12ヶ月)、売上は手数料20%をかけると8.76億円となります。マクアケは、キャンプファイヤーやレディーフォーから2年以上後発でスタートしたにも関わらず、既にそれらを追い抜いている可能性があり、さすがサイバーエージェントグループといったところでしょうか。

キャンプファイヤーやレディーフォーが最近揃って資金調達を実施したのも、このまま差を広げられるのを打開したいと考えているためかもしれません。

支援者総数は84万4000人

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掲載期間が終了かつ目標額に達したプロジェクトの支援者数を年別に並べてみると、こちらも順調に増加していることが分かります。

これまでの支援者総数は84万4000人に達しており、レディーフォーの57万人とキャンプファイヤーの121万人との中間地点に位置している状況のようです。

支援者あたりの支援金額はキャンプファイヤーとレディーフォーの中間ポジンション

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マクアケの支援者あたりの支援金額は11000円前後で落ち着きつつあり、レディーフォーの14000円とキャンプファイヤーの7400円との中間ポジションにいるようです。

マクアケは平均支援金額のバランスを見ながら支援者数を増加させている印象ですが、キャンプファイヤーが広告施策などで支援者数をさらに急拡大させることができた時に、どのように動くのか注目したいところです。

プロジェクトあたりの各種平均値の推移

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マクアケにおける掲載期間が終了したプロジェクトあたりの各種平均値を調べると、左上グラフの平均支援金額は年々増加傾向にあり、平均200万円を超えるようになっています。

左下グラフの平均支援者数も200人くらいまで増えているようです。2018年から平均支援者数が落ち着きつつあるので、今後どのように増やしていくのか、それとも200人くらいで落ち着かせ、プロジェクト数を増やしていくのか注目したいところです。

右上グラフの達成率は’16年以降大きく増えており、’19年では750%を超えるまでになっています。一方、右下グラフの目標金額は年々減少しており、’14年には平均約120万円だったものが’19年には60万円を切っており、半分以下になっています。

これは目標金額を低めに設定することで目標達成件数を増やし、確実に売上を計上していこうという方針を取っていると考えられます。ビジネスとしてきちんと収益をあげ、継続できるモデルを確立していこうという意思が感じられます。

カテゴリ別のプロジェクト件数

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次にカテゴリ別にプロジェクトを分析していきます。

カテゴリ別に目標額達成のプロジェクト件数を見ていくと、プロダクト系のプロジェクトが圧倒的に多く、その後にフード、ファッション、レストラン・バーが続いています。

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カテゴリ別に目標額を達成したプロジェクト件数の割合を比較すると、プロダクト、フード、ファッション、レストラン・バー以外にテクノロジー、ゲーム、アニメ・マンガが高くなっています。

これは、目標金額が達成されたプロジェクトの完成品をイメージしやすかったり、具体的なモノを支援者が得られる可能性があるため、支援を受けやすいと考えられます。

一方、社会貢献、地域活性化はプロジェクト件数は比較的多いにも関わらず、未達成の割合が多くなっています。また、教育カテゴリも達成したプロジェクト件数の割合が低くなっています。上記とは逆に、プロジェクトが実行された時の状態や状況をイメージしにくかったり、完成品などを得られにくいことが支援を集める時の障壁になっているのではないでしょうか。

カテゴリ別の平均支援額

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カテゴリ別の平均支援額の分布を見ると、目標金額を達成したプロジェクトにおいては、アニメ・マンガの支援額が大きく、116万円〜764万円の間に半数のプロジェクトが占めていることが分かります。アニメ・マンガはプロジェクト件数は多くないものの、大きな支援金額が集まりやすいと言えるでしょう。

また、プロダクトカテゴリは61万円〜352万円、レストラン・バーは91万円〜354万円の間に半数のプロジェクトが占めており、その辺りが相場と言えそうです。

地域別のプロジェクト件数

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地域別のプロジェクト件数を見ると、東京が最も多く、その後に海外、大阪、京都、北海道、兵庫、愛知など大きな都市の件数が多くなっています。

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目標額に達したプロジェクト件数比率では、富山、鹿児島、熊本、群馬、山形など地方都市が大きくなっています。

これはもともとのプロジェクト件数が少ない影響もあると考えられ、実際、それぞれのプロジェクト件数は富山(9件)、鹿児島(7件)、熊本(20件)、群馬(6件)、山形(10件)とあまり多くない結果となっています。

一方、海外はプロジェクト件数も成功件数比率も大きく、支援者の期待値が高いと言えそうです。

地域別の支援金総額

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地域別の支援金総額でも東京、海外、大阪など大きな都市の額が大きくなっていることが分かります。

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地域別の1プロジェクトあたりの平均支援金額の平均は、山口(601万円)、石川(459万円)、広島(440万円)、海外(371万円)、茨城(318万円)、東京(275万円)、富山(270万円)、秋田(259万円)、岐阜(205万円)と平均値を上回っている結果となっています。

プロジェクトあたりの平均支援額についても海外は大きく、このことからも支援者の期待が高いと考えられます。

最後に

今回はクラウドファンディング マクアケの動向データを中心に分析してみました。

他のクラウドファンディングサービスの動向や、どのようなプロジェクトが成功しやすいのかなど、プロジェクトにフォーカスして分析してみたりしても面白いかもしれません。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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