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父の日、仏壇で

良いお天気の日曜日。
ひと月ぶりに実家に来た。

一年半前に母が他界し、実家は空家になってしまった。

まずはあちこちの窓を全開にする。
風を通すと、「ただいまー」と帰っていたころのように、家が生き返ったような気がする。

実家の空気を吸ったら、お腹がすいた。
今日は来る途中のスーパーで、ロコモコ丼弁当を買ってきた。

でもその前に、お仏壇に手を合わせてと。

盆とお彼岸以外は、結局持ち帰ることになるからお供えはしないのだけれど、やはり少し申し訳ない気になって、高杯にロコモコ丼を載せてみた。
母の「あんたはもう…」って声がしそうだ。

シキミが枯れているので、庭で切ってきて生けかえる。
コップのお水も減ってしまって、お父ちゃんお母ちゃん、ご先祖の皆々様、ゴメンしてね。

般若心経は、出だしのところと最後の「ギャーテーギャーテー」以降しか覚えていない。
時々途切れるインターネット、YouTubeのお経に合わせて唱えてみる。
これまた適当で申し訳ない。
でもご先祖様、今はいろいろ便利なものがあるんですよ〜と、心で言い訳をしてみる。

母の生前は、仏事は何でも任せきりにしていた。
昨年は、新盆の準備をしない兄夫婦のことを不満に思うこともあったけれど、今ではもう、自分がやれるならそれでいいと思っている。

私と同じように、実家のことが気になる叔父叔母が、安心してくれたら私も嬉しい。

私も年を取った証拠かな。
手を合わせることは、有難い思いが湧いてくるものだと気づいた。

父の自慢だった庭も、ずいぶん荒れてきたけれど、夫が楽しげに剪定している。
これもまた有難い。

ブルーベリーに網をかけ、草むしりをして、さてそろそろ帰り支度だ。
まだ夫の両親のところへ行かなくてはならない。

また来るねと仏壇に手を合わせる。

父と母の戒名が並ぶ位牌を見上げた。
昨年彫ってもらったときには、母の戒名の方だけ白かったのに、気づいたらもう父と同じ色になっていた。


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