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5月の風がとおる

実家に来ている。

義母とお昼ご飯を食べた後、ひとりクルマを走らせて来たのだ。

これぞ5月🌱という爽やかな日だ。

毎日閉め切ったままのサッシを開けると、家の中にスーッと風が通り抜けていく。

ゴールデンウィーク以来のことで、家の隅々までが喜んでいるようで、ホッとする。

お仏壇の水を替え、庭にあるシキミの枝を切り、自分のおやつに持ってきたクッキーを高坏に供える。

ロウソクをつけ、線香を立て、チーン。

最近の子どもたちのことなどを報告すると、父も母も、そうかそうかと笑っている。
…ような気がする。

ジャングル化している庭は、新芽がすっかり伸びて、イタドリなんてハサミじゃ切れないほど大きくなってしまって、もはやあれは草じゃなくて木だ。

もう素人の手に負えないレベル。

結構かかるけど、庭師さんに頼んじゃいたい。
でも兄が、どうせ庭は潰すんだからと言いそうで、結局言い出せないままだ。

寝転がって、持ってきた本を読む。

実家でこうしていると、気分は10代のままだ。

玄関から声がした。
「育ちゃん、来とるんかね」
窓が開いてるのが見えたからと、本家のおばさんだった。

今年、ここの庭のシャクナゲがすごく綺麗に咲いてたんだよとおばさん。
それを見た近所の園芸好きな奥さんが、挿木をしたいので一枝ほしいと言われたと、そんな用件だった。

私がいない時でも切ってもらって構いませんからと、そう伝えてくださいと言った。

去年は半分枯れてしまいそうだったのに、花の終わった今はどの葉っぱも青々と元気だ。

私もシャクナゲの挿木、やってみようかな。

誰もいない庭の木が、どこかまた別のところで花を咲かせたら、それは嬉しいことだ。

地流しのそばには、落ちた松ぼっくりが芽を出している。
引き抜いて持ち帰ったら、盆栽になるかな。

そんなとりとめもないことを思ううち、もう5時をまわってしまった。

むこうはむこうで草刈りをしている夫から、そろそろ終わると連絡が来るころだ。

何も片付けできなかったけれど、まっ、来れただけでよかったとしよう。

本家の方から、もう来ているらしいツバメの声が聞こえてきた。

石の隙間から顔を出した小さな松の木

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