ずっとKクリーニング店で
夫は着る物には無頓着だが、仕事用のスーツだけは大切にしている。「俺のはKクリーニングに出してくれ」と言う。近所の取り次ぎ店より少々値段が高いが、それぐらいなら夫の希望を叶えてあげようと、年に二回の衣替えはKクリーニング店と決めている。もう二〇年以上のお付き合いだ。
六十代のご主人は、いつも作務衣を着て窓際でアイロンをかけている。話し好きで、景気や年金の話から政治談義になることもある。それでも仕事の手はいつも休まず動き、一枚のワイシャツが仕上がる様子はまさに職人芸だ。
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