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中学の職員室ってそんなにくだらないことが話題になってるの?と驚いた話(エッセイ)

「麻雀放浪記」で知られる作家の阿佐田哲也さんは《ナルコレプシー》と呼ばれる、場所や状況を選ばず起こる強い眠気に襲われる病にかかり、たとえば、麻雀をしている最中に、突然手が止まり、熟睡状態に陥ることがあったそうです。
……他の3人は困ったでしょうね。

実は、私自身にも「その気」があり、学生時代は授業中、会社勤めを始めてからは会議中に、あらがうことができないほどの強い睡魔に襲われることがしばしばでした。

中学・高校の頃はよく、おでこに赤いあざをつけていました。机の上に置いた手の甲の上に額を載せて眠るからです。

居眠りがらみのショートショートを書くのも、そうした「暗い過去」と関係しているでのでしょう:

「寝落ち癖」がピークに達したのが中学3年の時でした。

授業中、いつの間にかウトウトしていると、先生の中には、問題を出して、居眠りしている生徒を狙ってあててくる人がいました。

私も大人になってから講義の経験があり、後方の席で居眠りしている学生はよく見かけます。
おいおい、とは思うものの、まあ昼イチの講義なんだからそりゃ眠いわな、と共感はしないまでも、いくらか理解します。
眠くならないような講義をすればいいだけのことです。

教師が「狙ってあててくる」理由を尽き詰めれば、
・授業を聴いていない《罰》として恥をかかせる。
のが目的なのでしょう。
でも、彼らは言うかもしれない、
・それにより、《居眠り防止効果》を期待する。
── 本当でしょうか?
真の「ナルコレプシー」ならそんな効果はもちろん期待できませんが、そうじゃなくても、《罰》だの《根性論》などでは防止できない、強固な《寝落ち》があることを私は知っています。

《居眠り防止効果》などない!

「狙ってあててくる」のは、かなり純粋な、
《悪意》あるいは《怒り》による《嫌がらせ》
です。

さて、睡魔が不機嫌そうに囁きます。
『……おい、先生に当てられたぞ』

隣の席の女の子が心配そうに肩を揺さぶることもあります。
「起きなさいよ、Pochi君、今、当てられたよ」
歴代の隣の女の子は、たいていいつも心配していました ── 私のことを、というよりも、教室内でトラブルが起きることを。

私はゆっくりと《向こうの世界》から戻る
頭を上げると、教師の、口もとに悪意のにじみ出た顔が見える。
隣の女の子が私に問題を教えようとするのを、教師はひと睨みで制止しつつ、
「はい、Pochi、立って」
と命じる。
私はゆっくりと立ち上がりながら、頭の中で記憶を巻き戻す
── 深い霧の中から、ぼんやりと、数分前に「耳の鼓膜を震わせた」音声がよみがえってくる。

「****です」
答えると、
「……そうだな」
教師の口調には明らかに悔しさがあらわれていた。

ある教師は、居眠りしていた私が質問に正答したにもかかわらず、彼から見て私が睡眠状態にあった、ということだけを取り上げて、

「Pochi、おまえが授業中にいつも居眠りをしていることは、職員室で話題になってるぞ!」

と大声で言い放った。

彼がどんな意図でこう言ったのかはわからなかった。
(恥をかかせようと思った? ── でも、小学校低学年じゃあるまいし、そんなことでクラスメイトを笑ったりしない)
(そりゃえらいこっちゃ、と自覚を促そうと思った? ── まさか、中学3年にもなって『職員室』に権威を感じたりしない)

私はむしろ、

(職員室って、大の大人が集まって、そんなにくだらないことを話題にしてるの?)

と驚きました。

実際、その時そう言おうかと思ったくらいですが、言わなくて良かったのでしょう。

同じこの学年で、実につまらないことをとがめられ(⇓)、職員室で《正座》を強要され、
「(高校入試の)内申書に《素行不良》、と書くぞ!」
と教師におどされたことがありました。

こんな連中を本気で怒らせたら、ホントに《素行不良》と書かれたかもしれません。

中学は理不尽なことが多かったけれど、高校生活はけっこう楽しかったので、まさに、こんなくだらないことで志望校進学を妨害されたら、たまったものではありませんから。

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