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【ライターの仕事】とびらを開く~すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロン「ぶどうの木」

2023年12月25日付河北新報夕刊に、取材記事を書きました。
毎週月曜日に掲載されている、宮城県内の市民団体・NPOの活動を紹介するコーナーです。

ーNPOの輪ー
私たちの周りでは、たくさんの市民団体・NPOが地域課題の解決などを目指して活動しています。「認定NPO法人杜の伝言板ゆるる」と「NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター」が交代で担当し、さまざまな団体の活動や地域課題について伝えていきます。

河北新報ONLINE

患者と家族の拠りどころ

 
 「すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロンぶどうの木」は、すい臓がんの患者や家族が、患者同士でしかわからない思いや悩みを相談したり、病気に関する情報を得たりする場所がほしいという思いを受け、2020年から活動をしています。主な活動は、患者と家族が交流する「おしゃべりサロン」。毎月2回ほど、対面とオンラインでの交流会を開催しています。

 代表の濱端光恵さんは、2017年に健康診断ですい臓がんが見つかり、手術と抗がん剤治療を経て寛解しています。自身の経験を通して「がん治療は、がんによって症状も治療も異なるので、すい臓がんの患者や家族が情報交換し、共有し合うことの意味は大きい」と患者同士がつながる場の必要性を強く感じ活動を続けています。

 対面での交流会には、仙台市を中心とした宮城県内の方だけでなく、山形県、福島県など近隣の市町からも参加しています。コロナ禍の中で始まったオンラインの交流会では、関東や名古屋など全国の患者や家族の方々ともつながって話をすることができました。
  
 全国的にも、すい臓がん患者を対象とした患者会は少ないのが現状です。同じ病気を経験した患者同士が、病状や治療のこと、生活の不安や悩みを安心して自由に話せる場が求められていたのでした。
 
 がんは治る病気となってきていますが、すい臓がんの場合は、発見された段階で手術できるのが2割程度、5年生存率は10%以下と言われ、かなり難しいのが現実です。 

 そのため前向きに治療しようとする患者に対し、家族や周囲の人たちの病気に対する認識や患者に対する気遣いがかえって負担になることも多いそうです。
 「患者会に参加する方の生存率は高くなるという調査結果もあるそうです。治る確率がゼロではない限り諦めることはありません。完治する側の一人になればよいのですよ」と濱端さん。仲間と気軽におしゃべりしている皆さんの表情が明るいのが、なによりも印象的でした。

笑顔があふれる写真展 


▲ぶどうの木写真展(2023年開催/塩釜市内の会場で)


もうひとつ、ぶどうの木の特長的な活動として、写真展を企画実施しています。2021年8月に第1回「ぶどうの木写真展『光』」を開催。23年11月には、『彩』をテーマに第2回目を開催しました。

 きっかけは、兄をすい臓がんで亡くした方の一言でした。「一緒の写真を撮りたかったけれど『お別れが近いからだと思われないだろうか』と思い言い出せなかった」。家族の後悔から「気兼ねすることなく家族や仲間と一緒に写真を撮ろう。すい臓がんを患っても、明るく楽しく生きている自分たちがいることを伝えよう」という思いを込めた写真展が実現しました。

 写真撮影に当たり、プロのヘアメイクの方の協力や貸衣装の提供を受け、プロのカメラマンによる撮影会を仙台市内定禅寺通りで行いました。正装に着飾った当事者やその家族の写真からは、明るい笑顔があふれ生きる喜びが伝わってきます。

 医療の進歩も目覚ましく、治療を受けながら社会復帰できる環境も整いつつあります。これからも患者と家族の拠り所となる活動を続けていくことが、患者の生きる「彩光」になっていくのではないでしょうか。


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私の原稿は、河北の担当記者が校正し、整理部で見出しや写真、キャプションを整えて掲載されています。新聞紙面掲載記事は、河北新報ONLINEからどうぞ。

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(ウチソト編集室ライター葛西淳子)

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