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「僕がバーチャルAV女優になった理由_わけ」(Karinちゃん著)を読んで

体当たりで自らの身体を張って、実践と体験で道を切り拓いている人。

それが、私にとってのKarinちゃんの印象です。

今回Karinちゃんの本を二冊読んで、その印象はさらに強いものとなりました。

自身の体験をベースにした、赤裸々な求道者の姿がそこには記されていたからです。

細かな内容は本書を購入して読んでいただくとして、ここではいくつかの見出しやキーワードをベースに、私自身が感じたことや考えたことを書いていきます。


【1.バーチャル美少女として生きてきた時間の方が長いKarinちゃん】

これは、”VRでアバターを身にまとっている期間がめちゃくちゃ長かった”ということではなく、Karinちゃんの魂が美少女として15年以上生きてきたという意味です。少女漫画や女児向けアニメのキャラクターに感情移入して育ったKarinちゃんの自意識をバーチャル美少女に含めるなら、それはもう筋金入りですね。

Karinちゃんの美少女魂は、①幼稚園での女装男子との出逢い、②初恋の子が読んでいたある漫画、③家庭環境、④プリパラなどの各種体験によって育まれ、強められ、性癖を築いていったことが読んでいてとてもしっくりきます。

このあたりの体験談を知ることができるのが、とても貴重です。自分自身のことを振り返ったりするのは精神的にも負荷がかかりますし、都合の悪いところはつい美化してしまったり覆い隠してしまいがちですが、Karinちゃんは自分自身と向き合ってトラウマなどから目を背けず、真摯に筆を進めています。その点も、この一冊をお勧めする理由の一つです。


【2.ないなら作れ ~何かを始めること~】

「世界が私を女の子にしてくれないなら、自分が世界中を美
少女にするしかない。その時の私は本気でそう思っていた
し、未だにその時の心の炎は消えずに燃えたぎっている。 」

アツい。激アツです。

私も、「ないものは自分で創ればいい」という発想でvirtual卒業式virtual入学式を開催したので、このスタンスにはとても共感します。

そうして、Karinちゃん最初の自作アバター「のっぺりねんどちゃん」は、「Meet-Me」で生を受けるのです。(*のっぺりねんどちゃんの写真は書籍内で紹介されているので、必見ですよ!)


【3.低評価と高まるヤる気 ~低評価ボタンが不要とは限らない~】

誰かの評価や数字、コメントってすごく気になりますよね。私も気になります。ここでは、「低評価」と「抜ける」コメントについて触れていきます。

今までにない何かを初めてつくる時は、ぎこちないものだったり、時にはいびつなものだったりするのは当たり前のことです。完成度やクオリティよりも、その一歩を踏み出す勇気と行動力に私は敬意を表します。

初めてKarinちゃんがXTubeに投稿した動画は、低評価の波に飲まれたそうです。

私自身、かねてから「低評価ボタンって要るの??」と思っていたのですが、Karinちゃんは『低評価も、まずは「見てくれた」ということの現れだ』と捉えます。なんて前向き!

・・その発想、私にはなかったなぁ。「低評価ボタンは不要」くらいに考えていた私は、見たい世界しか見ようとしていなかったのかもしれないな、と反省しました。

低評価の波の中で、ごくごく一部の人が「抜けた!」と言ってくれたことが、女の子としての自尊心が高まった瞬間だった、ともKarinちゃんは書いています。「抜けた!」=「シコい!」ってことですもんね。例え一人でも、性的対象として捉えて興奮状態になれた人がいるという事実は革命的なことです。

・・同じ立場なら、私もきっと同じ気持ちになります。

私自身、ぽっちゃりL女(えるじょ)として生きていますが、Dary Darz@バーチャル小学生さんに「好みの体型…過ぎる…」って言われたときは心底嬉しかったですもん。好まれることや、性的需要があることのゾクゾク感。

今までほぼ誰も私の体型のことなんて話題にしなかったけど、「あれ?やっと私の魅力に気づく人が現れた?」みたいな喜びは確実にありました。
(*中には「勝手にエロい目で見ないで」と思う人もいるでしょうし、それを否定するつもりは一切ありません。あくまで私のお気持ちの話です。)


【3.第一印象をハックせよ ~「初めて逢った気がしないよね」の答え~】

第一印象って大切だけど、それは初対面や顔を合わせた時だけのことではなく、メッセージのやり取りやリプなどが第一印象になるというKarinちゃんの考え方は、とても現代的で自然に思えました。ある程度人となりや好み、性癖などを事前のやり取りで知って盛り上がっていると、physicalで初対面だとしても「初めて会ったとは思えない」くらいの距離感でcommunicationがとれることは、私自身の体験でとても多かったからです。

physicalに実際に会った時の印象は、第一印象ではなく「第三十印象」ぐらいに小さくすることすらできるのではないか、とKarinちゃんは言います。納得ですね。

アバターを身にまとうと別な「第一印象」がまたそこで生まれるのですが、Karinちゃんの文章で「確かに」と思わせられたのは、VRChatにデフォルトで用意されている「マッチョアバター」に対してどういうスタンスで対応するかというところまで言及している点でした。

「怖い」と思うのは個人の感想で構わないのだけれど、『私達がバーチャル空間で美少女として生きていこうと決めたように、あの身体(もしくはそれに準じた体型)を必要としている誰かがいたのなら、私達は絶対にそれを排除してはいけないのではないだろうか』、と。

どんな姿でもその人として受け入れ、尊重し、生まれた時点での性別の役割を押し付けることのない世界。その世界の実現のためには、私たちが自分たちの考えや価値観を振り返りつつ、適切にアップデートしていく必要がありますね。


【4.バーチャル学の起こり ~失うものと手に入れるもの~】

体験をベースにしたKarinちゃんのこの一冊。ジェンダー学・政治学・社会学といった従来の学問の分野にぴったりくるものでは決してありません。従来の学問研究分野の枠に収まらない、実験と体験ベースの試行錯誤の生の記録です。そして本書の内容は、今後より一層必要となる「バーチャル学」で、価値と輝きを放つものとなるのは間違いありません。

きっと書いてあること以外にも、裏側での苦労はたくさんあったのだろうなぁ。

また、『これからは「バーチャル社会学」が必要だ。』とKarinちゃんは主張します。「バーチャル社会学」は、この本を読むまで私の中にないワードでした。つい技術的なことやデバイスのことばかりに目がいきがちだったけれど、結局私たちが創り上げようとしているのは、私たちがより幸せに生きるための社会ですよね。

今までの社会と同じ生活様式でいられなくなるのが目に見えている中、アップデートした未来の社会において、継続して引き継げるものと捨て去るべきものを明確に選別していく決断力が必要になってきます。


【5.最後に ~希望をつくる~】

covid-19がきっかけで、私たちは否が応でも変化を迫られました。個人的にも、社会的にも。その中で、気づいてしまったことがたくさんでてきました。うすうす気づいてはいたけど、誰もその一歩を踏み出せなかったことにも、勇気をもって声を上げ、現実が急速に変わり始めています。一度実績をつくり、その方が合理的であると判断すれば、もう元に戻る理由はありませんから。

それと同時に、私たちはたくさんのものを失いました。悲しいことや憤りを感じることも山ほどありました。それでも、希望だけは失ってはいけないと私は切に思います。

・・その希望すら失いかけてしまったら・・?

だいじょうぶ。

なければ、創ればいいのです。

Karinちゃんは、粛々と身体をはって行動し、具体的に実現させ、X-Oasisというサービスでカタチにしています。

そんなKarinちゃんの書いた本を、皆様もぜひご一読ください。


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僕がバーチャルAV女優になった理由_わけ

次回、「実録_バーチャルAV女優」についての感想文もこちらでアップします。

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