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如何にして因果関係を導くか?Causal AIによる因果推論の基本原則【AIと因果推論#2】

お疲れ様です。引っ越すとき大変なのでこれからは電子書籍にしよう!と思ってiPadを買ったはいいものの結局紙派がやめられないShinです。

前回は Causal AI の概要について紹介しました。ちなみに、そもそも何故急に Causal AI を取り上げだしたのかという話を前回していなかった気がするので改めて触れておくと、Gartner社の2022年のハイプサイクルに掲載されていて気になったのが理由になります。

Gartner社 プレスリリースより引用
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20220816

黎明期の下の方に「コーザルAI」があります。さらに下の方を見ると「ジェネレーティブ・デザインAI」、巷で話題の生成AIがありますね。2023年のハイプサイクルではこれがどこまで進むのかが楽しみです。

話を戻し、今回は Causal AI の具体的な因果推論アプローチについて、前回に引き続きSgaier et al. (2020) の論文を見ていきたいと思います。

Causal AI の原則① The Potential Outcomes Framework

Causal AIのアプローチの良く知られた原則として2つ挙げられています。そのうちのひとつが "The Potential Outcomes Framework" です。毎回英語で書くにも長いので、潜在的因果フレームワークと表すことにします。

伝統的な因果推論の手法としてはいくつか挙げられますが、一般的にはランダムに割り振った二つの母集団を用意して処置群(treatment group)と対照群(control group)として割り当てます。処置群には検証したい特定の事象を経験させ、対照群には特定の事象を経験させないようにします。例えば喫煙効果の測定をしたい場合、処置群には喫煙させ、対照群には喫煙させないようなイメージです。

この手法はランダムに割り振った母集団の中である特定事象の効果を測定する上で有効と考えられていますが、ランダムとはいえ個人レベルでは異なる個体で比較実験を行っているため、全く条件が同一の人物での比較実験はできないことが課題として挙げられています。

この課題に対処するため、AIアルゴリズムによってある特定事象を経験した個人と重要な条件が同一の個人のデータセットを探索することで、より精度の高い対照群を生成します。これにより、実質的にほぼ同一の個人が特定事象を経験した場合の結果と経験しなかった場合の結果(=潜在的因果)を推定することができると考えられます。

Causal AI の原則② Causal Graph Models

もう一つの原則が "Causal Graph Models" です。因果グラフモデルについて論文の中では "structural equition model" と "causal Bayesian network" が紹介されています。

"structural equition model" 改め構造方程式モデルでは、相互作用すると考えられる変数間の組み合わせを特定して直接観測できない潜在変数を仮定して分析を行う手法です。1組の変数の組み合わせの検証のみならず、想定される複数の変数間の関係を検証することにより、より網羅的な因果関係の分析を可能にします。ただ、実際の因果要因となる変数が仮説の中に含まれていなければ分析結果として現れることはありません。

"causal Bayesian network"改め因果ベイジアンネットワークは、デートセット内に含まれるすべての変数について因果関係を推定してネットワーク状にビジュアライズして整理する分析手法です。条件付き確率の考え方を用いて、ある説明変数X1が被説明変数Yに影響を与えるまでの、中間説明変数X2, X3, X4…の因果関係を踏まえて効果を推定します。この推定方法はデータセット内の変数を対象とするため、実際の因果要因を発見するためには観測可能なあらゆるデータセットを投入する必要があります。昨今ではあらゆる事象がデータ化されビッグデータとして形成されつつあることから、因果ベイジアンネットワークによる推定は今後より精度が高まることが期待されます。

おわりに

以上のアプローチにより、Causal AI は従来の Predictive AI と比較して事象間の因果関係をより明確に推定することが実現可能になると考えられます。今後より Causal AI の適用・応用が進み、誰もが気付かなかった意外性ある真相要因の解明が進むことを楽しみにしています。


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