見出し画像

貿易もDXの時代?貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」

お疲れ様です。国際貿易の勉強がしたくて大学に入ったら、気付けば貿易そっちのけでデータ分析ばっかりやることになっていたShinです。

ということで、本日は貿易業におけるDXの現状を見てみたいと思います。

貿易のデジタルに関わる課題

そもそも国際貿易における課題としてどのようなものが挙げられるのでしょうか。貿易のデジタル化に取り組みトレードワルツ社は、以下のレポートにて国際貿易における課題として、①紙による煩雑な手続きの存在、②実務経験者の人手不足、を挙げています。https://www.jpmac.or.jp/img/application/pdf/doc_third_03.pdf

貿易取引では輸出業者と輸入業者以外にも様々な関係者が存在します。例えば運送会社、税関、銀行等の金融機関、監督省庁などです。これらの多数の関係者が、それぞれ紙書類、FAX、PDFなど様々な方法で情報のやり取りをしています。また、これだけ関係者が多いからこそ、情報のやり取りは多岐に渡り、関係手続は煩雑化します。このようなアナログな情報のやり取りは、人的なミスによる業務非効率化を招き得る状態であるとも言えます。

こうした背景からも、貿易業を担う人材としては高い専門性が求められる一方で非効率な業務体制であるために人手不足となってしまっています。

貿易×ブロックチェーン「TradeLens」

IBMと欧州の海運大手Maerskはこれらの課題に対応すべく、2018年にTradeLensというプラットフォームを立ち上げました。TradeLensはブロックチェーン技術を活用し、従来の紙書類等による手続きを電子化・オンライン化することで、煩雑な貿易手続きを安全・迅速に行うことができるようになります。2019年には100以上の事業者が参画していたと言われ、グローバルサプライチェーンを巻き込んだ国際貿易プラットフォームになることが期待されていました。

しかし結果として、TradeLensは2022年に撤退を発表しました。その理由は以下の記事に掲載されていますので要点のみをかいつまむと、大きな要因と見られるのは国際貿易における情報の機密性と考えられます。

プラットフォームとは、参加者全体がコラボレーションすることによって成立する一つのエコシステム(生態系)とも言えます。したがって、データのコラボレーションはエコシステム成立のためのひとつの重要なポイントでもありました。

したがって、各事業体が自社が保有するデータが機密性の高いものであると判断する場合(法的にも機密性が高いと認められる場合も含めて)、データの共有はなされず、プラットフォームとしての効率性の向上は期待できなくなります。すなわち、コラボレーションができずエコシステムが成立しなくなります。それによって収益化の見通しが困難なものになったことが事業撤退の理由のひとつと見られます。

当たり前と言えばそうですが、これは貿易業界の特有の話ではなく、どの業界においてもコラボレーションを推進する上で起こり得ることだと思っています。業界内におけるデータの共有が、どのようにして個社の利益を上回って業界全体の利益を創出できるかが、エコシステムを成立させるうえでの重要なポイントと考えられます。

TradeWaltzはTradeLensを超えるか

さて、TradeLensは結果として事業撤退という選択となったわけですが、日本ではNTTデータや三菱商事が出資するトレードワルツ社が貿易SaaS「TradeWaltz」を展開しています。

TradeWaltzもまた基本的な考え方は似たものであり、ブロックチェーンによって文書改ざんを防ぐセキュリティをもって、関係事業者間のデータの流通を仲介します。基幹業務システム「SAP」や貿易文書作成システム「TOSS」といった主要システムとの連携も進める中、他国の貿易プラットフォームとの協業も進めています。プラットフォーム間はAPIによってデータ連携を行うことで、データの流通を可能にします。

セキュアなデータ流通をどのように実現していくか、どれほどの関係事業者をプラットフォームに巻き込めるか、それによってコラボレーションによる新たな価値をどれだけ生み出せるか、今後の動向に注目したいサービスのひとつです。

おわりに

貿易って実は超アナログでサイロ化しまくっている業界だったんですね。行政サービスの手続きとかも以前はアナログで時間もかかっていたのでデジタルにして楽にしていきましょうという動きがありますよね。実は似た状況の業界って思ってもいない至る所にあるんだろうなということを感じさせられました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?