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旅行の友〜愛という窮屈を抱きしめて〜

いきなりですが恋してますか?「愛という窮屈をがむしゃらに抱きしめ」てたらどうやら愛が並行世界で同時進行してたみたいで、にっちもさっちも行かなくなりどん詰まり待った無し!な男、カズオポッカートニーです。

端唄の「私の人ではない人なれど〜余所の人にもしたくない」って、なんて傲慢!と思うが恋するってなぁこういうことなのかもですな。

端唄といえば私は都々逸・さのさ・びんほつなんぞを日頃から楽しんでおる次第でして、自身で三味なぞ引くわけではないが粋な恋の唄なんぞにキュンっとなるてなぁもんでございやしてね、これが。「惚れて通えば 千里も一里 」そそそそそーだね恋したらね。距離なんて見えなくなるもんね。んで「逢わで帰れば また千里」って落ちかい!ガックシだよガックシ。いささか80s感のある文章ですが、自分。。。不器用なもんで。。。そこはご勘弁を。

さて、いきなりですが私はふりかけが好きです。今時の人はどーなのかなー。そこらへんよくわからんが、私の小さい頃は必ず食卓に丸美屋の三色ふりかけがございました。

ふりかけ

ごましお・のりたま・たらこ、とゴージャスなラインナップで誘惑するまさに、ふりかけ界のホームラン王やー、と当時の私は思ったものです。しかし「九仞の功を一簣に虧く」ではないが、手に入ったと思い油断したがゆえに奪われる。そう、天敵は必ずいるものですね。

私の場合は、次姉がまさに天敵でございました。ちっちゃなアンドレ・ザ・ジャイアント、または鬼の泣き顔を背に持つ小鬼と呼ばれた、ミス・オーガな次姉がいつもジャック・ニコルソン的な笑みをたたえて私のものを奪っていくのでございました。

ふりかけ界のホームラン王やーて言うてましたがね、このラインナップってなんすか?なんなんすか?バンドで例えるとすれば、まずはのりたま。「我、覇者なり」な風格を備えたふりかけ界のビートルズ。

ビートルズ

次はたらこ。「あんた、わかってるじゃん」なある意味、変化球であるがゆえにボトムを効かせたふりかけ界のローリング・ストーンズ。

ストーンズ

そしてごましお。ごましおて、、、ごま、と、しお、て、、、。良いとこ探すとしたら「シンプル・イズ・ベスト 何も足さない(って足せや!)」な敢えて言うなら、田端義夫(バタヤン)か。。。

ばたやん

このラインナップであるからして、当然、次姉はのりたまから攻める。御飯の上にぶちかける。もはや振ってそっとかけてね、という意味のふりかけという慎ましやかな響きからは想像がつかぬぐらいにイエローマウンテンを作る。そして私はそっと申し訳程度にごましおをごはんの上に降り注ぐのである。

別の日には、売り切れたのりたまの代わりにたらこをぶちかける。ピンクのはずのたらこカラーがご飯の熱と湿気により、まるで血の如く赤く見えるほどぶちかける。貪る小鬼。《百鬼夜行絵巻》をリアルで見るが如くの圧である。そして私はまたしてもそっと申し訳程度にごましおをごはんの上に降り注ぐ。

必然、のりたま・たらこ、から無くなっていき、最後にごましおだけが残されるのである。壮年を迎えた今であれば、ごましおの持つ渋みがわかる。ごまとしお、何も足さない。それでいいんだよバタヤン、ってなもんですが、当時、幼稚園児であった私からしたらね、次姉の圧から渋々ふりかけていただけで好き好んでごましおをふりかけていたわけではないのだよおっかさん!なのにお弁当のおにぎりに「カズオはごましおが好きなんでちゅよねー」って愛情たっぷりにごましおふりかけやがってさ。おいしいけど。。。おいしいけどオレだって「のりたまおにぎり食べたい!」「この熱い魂を伝えたいんやでおっかさん」とキーボー(上田正樹ね)並の嗄れ声で叫んでいたんです。

そんな幼年期を過ごしたおかげで、大学生の頃には好き放題にふりかけを選び買える喜びが私を満たし、そんな時に出会ったのが、広島に本社がある田中食品株式会社の「旅行の友」という、生涯離れることは決してないであろう愛すべきふりかけでした。

旅の友

味は当然として、愛が深くなるたびに田中の事をもっと知りたい、と思い調べるほどに田中のスタンスに感銘を受け更に愛が深まっていきました。

まーね。「のりたま」で有名な丸美屋なぞは、そらーもうでっかい会社さ。
でも田中はね田中はね田中はね.....

従業員数 男性100名、女性51名、計151名(平成30年1月末現在)

........ 少なすぎないかい?

しかーしである!メジャー度で言えば「のりたま」とそんなには変わらんだろう!。。。変わるんか?。。。変わると言わないで!、と思ってるのは愛ゆえの盲目がなせるわざなのだろうか...。

でもねでもねでもね、聞いてほしいのである。この「旅行の友」の制作秘話が少しキュンとさせるのだよ。

戦時中、海軍の要請で誕生したという「旅行の友」。創業者は自分の子供も戦地に送っており「戦地で少しでも栄養価の高い食べ物を食べさせてやりたい」と、子を思う親心から作られたという。また「旅行の友」と名付けた理由が苦労して寄り添ってくれた妻への感謝の気持を込めて妻の名「トモ」から「旅行の友」と名付けたという。。。。なんと愛に溢れたふりかけなんでしょうか。

愛をなくした私が愛に溢れたふりかけに救われる。なんとかいい話にまとめようとしているが、しかし一体オレは何を言ってるのであろうか。

愛をなくした私から、最後になぞかけを一つ。

えー「ふりかけとかけまして、愛をなくした男とときます。そのこころは、これさえあればおかずはいりません」。。。

お後がよろしいようで。どーもすいません。

散兵


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