見出し画像

そうだ!猫を届けよう

前のおはなし

ジュレットの町へ戻り、ボクはラーディス王島で手に入れていた幸せのはねをマリーブに渡す。
「ありがとうございます 旅の方。
さっそく この羽根をペンにして
お手紙を したためることにしましょう」
そう言って手紙をサラサラ書き出す彼女をボクは見つめている。決して、彼女に惚れたとかそういう話ではない。後ろからの圧で、そうするしかできないのだ……なんかもう、すごいっていうかヤバいっていうか今後ろ向いたら消されるんじゃないかなって殺気を放っている。
それもそうだ。キンナー調査員を伴ってタップペンギー相手に死闘を繰り広げていたのだから…修理が恵みの歌に間に合ったんだからいいじゃないか…
手紙を書き終え「小ビンのお方に 届けてくださいませ」とマリーブから頼まれたが「ぱんイチさん、わかってますよね?」と言うキンナーにも向け「ちょ、町長の所に行ったら渡してくるね!」と強張った顔で告げる他なかった。


町長の家へ戻ると、何故か顔に引っ掻き傷の出来た町長が迎えてくれた。
「ネコにやられたんですか?」と聞くと「ネコよりも怖いものだよ…」とナナメ下を向く。奥さんはどこへ行ったのだろうか。
「私は 別の調査が待っているので」とヴェリナード城へ帰るキンナーを見届け、ボーレン町長はボクに報酬を渡す。

1000ゴールド。

「これだけ?」
「む……。不満そうな顔だな。
それでは 足りないというのか?」
ボクの不満そうな顔に町長は続ける。
「だが いくら 町長である私の頼みとはいえ
人の手助けをした程度で
キーエンブレムを与えることは できん。
町一つを 丸ごと救うくらいの大仕事を
やってくれたのなら 考えてもいいのだがね」
「キーエンブレムじゃなくって…王立勤めのキンナー調査員と町長さんの2人からで1000ゴールドって、いくらなんでも少なない?」
お金とは言わないから何か…と町長にタカっていると
「た……大変だ 町長!!
町の中にネコが いやがったんだ!」
と住人が家へ駆け込んできた。
「ソーミャだ! あいつがネコを!!」
「なに!? ソーミャと ネコに
なんの関係があるというのだ?」
ソーミャの名前が出たことで、町長の語気が強くなる。それに気押された町民は「と……とにかく ソーミャの家へ来てくれ」と勢いを落として告げるのだった。
ソーミャが危ないかもしれないと町長はボクに一緒に来るように言う。
たぶん……あのネコだよなぁ……

あのネコ

どうやって町長や住人たちに言い訳して、その場を収めようか…考える間も無く
「いいから、早く!」
ボクは町長に首根っこを掴まれてソーミャの家へ連れて行かれた。
これだからプクリポは!これだからプクリポは…!!

「いったい なにごとだ!?」
ソーミャの家へ入ると、大人たちがうずくまるソーミャを取り囲んでいる。
「おい バーセル!
まさか ソーミャが ネコの魔物に
襲われたんじゃ ないだろうな?」
バーセルと呼ばれた住人は開口一番ソーミャの心配かと不快感を露わにした声で話す。
「違うんだ 町長……。
とにかく これを見てくれ」
バーセルが指し示した先にはうずくまるソーミャ…とソーミャが抱えるあの子ネコがいた。
「こ…これは。ネコの……。
ネコの魔物の 赤ん坊……なのか?」
大人たちに囲まれ、咎められていたのだろう。ソーミャは声を殺して泣いている。
ボーレン町長はソーミャを宥めるように優しい口調で問いかけるが周りの大人たちはソーミャを責めるのをやめようとしない。
「うちの息子は ネコの魔物に
ケガを させられたんだぞ。
それを 町の中に連れ込むなんて 許せねえ!」
「このところ 町の周りに
やたら ネコの魔物が うろついているのは
これが原因だったんじゃないですか!?」
「きっと そうだよ!
このまま 放っておけないよ!!」
口々に責め立てる住人たちに町長はたじろぐ。
住人たちは始末するべきだと話すが「そんなことをしたら報復が」と言う声には「そんなのは知ったことではない」「町長が煮るなり焼くなり好きにしたら良い」と好き放題に述べる。

物騒な言葉に反応したのだろう。ソーミャが声をあげ、ボーレン町長も困ったように唸る。
そういえば、ネコの魔物がうろついている…と過剰に反応していたのはこのボーレンという男だった。
「町長に押し付けようとか知ったことじゃないとか、親としても人としてもヤバいので、とりあえずそこのボーレンって奴を煮てから考えようぜ!」
ボクが超⭐︎名⭐︎案⭐︎とばかりに言うと、さすがにボーレンは黙りこくる。
「それはさすがに…しかし、どうすれば…」
町長がこちらに助けを求める目で訴える。
と。

入り口にひとりの青年が佇んでいた。

「な……なんだね 君は?」
「ただの通りすがりさ」
「住居不法侵入やで?」
場を和ませるちょっとしたジョークのつもりが、その魚の青年はボクを摘みあげ、頭を締め上げた。
「あんたらが できねえってんなら
オレが代わりに こいつを
海に 放り込んできてやるよ!」
「いじめないでくれよー!ボクは悪いプクリポじゃないよ!!」
ボクがあのネコですとソーミャの方を指さすと、青年は「違うのか」とボクを放り投げソーミャから子猫を奪う。

「か 返して!!
その子は 私の家族なのっ」
必死に縋るソーミャに、青年は「バカ言ってんじゃねえよ」と取り合わない。
ボーレン町長は「まずは私の家で話をしよう」と青年を引き留め、連れて行くとソーミャを取り囲んでいた住人たちも散り散りに帰っていく。
「どうすればいいの」と泣き続けるソーミャに添い、宥める。
「あの お兄ちゃんを止めて……」ボクに、というより天に祈るかのような彼女の言葉に、ボクは「町長さんのところに行ってくるよ」と一言告げ彼女の家を後にする。

町長の家ではボーレン町長がヒューザというその青年に海に捨てるのは考え直すよう説得しているところだった。
「あのガキに 返せとでも言うのか?」
「いやっ そうではない。
確かに ソーミャは家族がおらず
あの子の気持ちは わからないでもないが……。
ネコの魔物が 辺りをうろついていたのは
その子ネコのせいかも しれんのだ。
町に置いておくわけには いかない。
しかし そいつを 海に捨てたことが
やつらに 知られでもしたら
どんな報復を受けるか わからんのだ!」
それはそうだろう。
「ボクもそうだそうだと言ってるよ」
ソーミャは子猫が捨てられたと言い張っているが、単に遭難した迷い猫なだけかもしれない。捜索のためにネコの魔物がうろついている…と考えるのが妥当なはずだ。
ボーレン町長は思わぬ助っ人がとばかりにボクを歓迎してくれる。
「お前もこのネコと同じ『毛まみれ』だから、親近感でもあるんだろ」とヒューザはひとつ息を吐いた。
「なあ お前……。
名前は なんていうんだ?」
「え?ぱんイチですけど?」
ヒューザは「着込んでるのにか?」とこちらをジロリと睨むと、ボクに言った。
「たいして 急がねえんなら
ちょいとオレに 付き合わねえか?
こいつを 親元に返してやろうと思ってな。
オレひとりで探すのも めんどくせえ。
お前も 手伝ってくれねえか?」
「途中で捨てられても困るし、そういうことなら」とボクらは手を叩く。

「これは正式に 私からの依頼としよう」とボーレン町長も、これを解決すればキーエンブレムをくれるという。
すると、扉が勢いよく開き
「ダメ!!
その子は 私が育てるの!」
とソーミャが飛び出してきた。

「私が その子の お母さんなの!
だから 私に返してっ」
ボクらの顔を代わる代わる見やり、ソーミャは懇願する。
「ガキに 付き合ってるヒマはねえ。
行こうぜ ぱんイチ」
ヒューザはソーミャを振り払い、扉の方へ向かう。
するとソーミャは扉へ先回りし、ヒューザの行く手を阻む。
「どうしても行くんなら
私も 連れていって!!」
そう言って、扉から離れようとしない。
「これは連れてくしかないよね」
「あー うぜえ!」
ヒューザはボクに子ネコを渡し、ソーミャの手を引いた。
「ほら 行くぞ。
絶対に オレから離れるなよ?」

ボクらは、町長が教えてくれた「猫島」というネコの魔物が暮らす島へ子ネコの親の手がかりを探しに旅立った。

次のおはなし


【おはなしの補足(蛇足)】
いじめないでくれよー。ぼくは悪い○○じゃないよ
わるいスライムではない時に話す言葉。
「ぷるぷる ボクは…」と話し始めるように思いがちだが、初出は「いじめないでくれよー ぼくは悪いスライムじゃないよ」だ。
「ぷるぷる」していたのは同じくドラクエ4のロザリーを守るスライムなので混同しがち。

そうだそうだと言っています
「三大怪獣 地球最大の決戦」で小美人がラドンの言葉を通訳した際の言葉。
ラドンもそうだそうだと言っています。
先日、某わしゃがなTV(某とは…)で「吹き出しで出た」と言われていたが、吹き出しは「地球攻撃命令ゴジラ対ガイガン」のゴジラとアンギラスの会話なので注意されたし。
因みに「三大怪獣 地球最大の決戦」の三大怪獣をゴジラとモスラとキングギドラだ…という人がいるが、三大怪獣はゴジラとモスラとラドンであり、この3匹が地球を守るためにキングギドラと戦うのが本作のコンセプトである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?