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そうだ!仲間と旅に出よう

前のおはなし

「やれやれ ガキのおもりかよ」
不貞腐れたように呟くヒューザの視線の先には…何故だろう、ボクの姿があった。
「おい、ぱんイチ!そっちは猫島の方じゃないぞ!」
「キュ…キュララナに…キュララナに行かせてくだせぇ…っ」
土下座して懇願するボクの頭を踏みつけ、「こっちにはガキがいるっつってんだよ」と目的地へと急がせる。

ボクにはルーラストーンがあり、猫島への旅は呆気なく終わる。
嫌がるキンナー調査員を連れて猫島に足を運んだからだ。
ただ、ボクはソーミャと子ネコが別れるまでに…彼女たちに思い出を作れたらと思っただけなんだ。
「決して手紙届けておきたいとか、その前にリザードマン倒してかばん作ってもらいたいとかそんなこと思ってないんだって!!」
熱弁するボクをヒョイと抱えると、ヒューザはボクのかばんからルーラストーンを取り出し、「猫島へ」と掲げたのだった。


猫島の入り口でミュベスというねこまどうが子ネコを探していたこと、探している子ネコは「キャット・マンマー」というネコの子供だということを教えてくれた。ボクらは教えられたままに猫島の最奥にある巨猫の巣へと向かう。
扉を開くと、そこには子ネコと同じ真っ白な…それでいて巨大なネコが玉座に座っていた。

「むむっ!? 何者ニャ キサマらは?」
玉座のネコと変わらぬ程に巨体のネコがこちらに気付き、威嚇する。

「ここが この猫島を治める女王
キャット・マンマー様の
お部屋と知っての ロウゼキか!?
マンマーさまは今 ご子息を失って
おおいに 心を痛めておられる!
お慈悲のあるうちに 立ち去るがいいニャ!」
「あわてんなよ ブタネコ。
オレたちは 届け物に来ただけさ」
ブタネコと呼ばれ、怒りを露わにするリベリオを制し、マンマーが問いかける。
「そなたたち 何用で ここに来たのかえ?」
「オレたちは あんたらのお仲間を
返しにきてやったんだ」
ヒューザはボクに顎で合図する。ボクはマンマーに近付き、背負っていた子ネコを差し出す。

「な……なにぃ!? そ……それは!?」
何故かリベリオは狼狽している。
「おお おお……。
その目。その顔。その愛らしさ。
見まごうはずもない……。
まさに わらわの息子 ジュニア。
よくぞ……よくぞ 生きていてくれた!」

カリン様と見間違えるやろ…

子ネコを渡すため更にマンマーの元へ歩を進めようとすると…
「ちょっと 待ったニャア!!」
ブタネコ…リベリオが間に入り、ボクはジュニアを庇うように後ずさった。

「キサマら なんてことをしてくれるニャ!
オレさまの計画を 水のアワにする気か!?」
「……計画とな?」
マンマーは玉座から身を乗り出す。

「ええい! バレちまったら しかたない。
こうなったら ぜーんぶ バラしてやるニャ」

リベリオはジュニアを亡き者にし、気落ちしたマンマーを葬って自分が猫島のボスに成り替わろうとしていたのだ。

「その計画も キサマらのせいで 失敗ニャ」
「海に流すことで亡き者にしようだなんて、計画が甘すぎるのが悪いんじゃね?」
「チビネコを返すのにブタネコが反応しなかったら立て直しもできただろうしな」
散々に言われたリベリオはボクらに向かって襲いかかる。

このあと2ターンで倒されるリベリオさん

「ぐむむむ……。キサマのようなヤツに
このオレさまが 負けるとは……」
「棍閃殺2回はオーバーキルが過ぎたと思うよ」
「こうなったら ジュニアだけでも
道連れに してくれるニャ!」
言うとリベリオは剣を構え、ジュニアを抱えるソーミャの方へ走り出す。

キィィィンと高い音が響き、ヒューザの剣がリベリオを受け止める。
「ぐうっ…… キサマ……」
「あんた……。スジが通ってねえな!」
ヒューザはリベリオを押し返し、膝をつかせる。
「……ネコを殺しちゃいけねえってな。
死んだ じいさんと 約束してるんだ。
今すぐ ここから消えな……」
剣先をリベリオに向け言い放つと、リベリオは「ヒィ」と小さく鳴き一目散にその場を離れた。

マンマーは「ふむ…」と一言呟くとこの世界に悪き意志を感じると語る。
そしてボクの方を見て「それについては そなたの方が 骨身にしみて 知っているようだな」と微笑んだ。
「……ちっ なんのことやらさっぱりだ」
ヒューザは話についていけないと肩をすくめ、ソーミャに「ほら」と促す。
拒むソーミャにヒューザは話す。
「親がいない さびしさは
お前が いちばん よく知ってるはずだろ?
その さびしさを知ってる お前が
その子を親から 引き離したままにするのか?」
「そんなこと!」
ソーミャの強い否定に、マンマーが語りかける。
「幼き ウェディの者よ。
そなたが わらわのジュニアの命を
救ってくれたのかえ?」
「ごめんなさい……。」
ソーミャは子ネコを勝手に家族にしようとしたことをマンマーに謝ると、マンマーは「謝らなくてよい」とソーミャを諭す。
「そなたはジュニアに 妾と変わらぬ愛を
捧げてくれたのであろう?
ならば わらわは礼を言わねばならぬ」
ジュニアを返すと、マンマーは「もう 離さぬぞえ」と頬を寄せる。
その姿をソーミャは…複雑な顔で見つめていた。
自分と違った境遇に、自分が憧れた光景に、安堵と憧憬と嫉妬が入り混じる。

「時に そなたは ヒューザと言ったな」
「……なんだよ?」
「わらわもな。先代と約束したのだ。
ウェディの者を殺してはならぬ……とな。
遠い時代……。我ら巨猫族の勇士と
ウェディぞくの勇士が 手を取り合い
巨大な悪と 戦ったことがあるらしい」
マンマーの話にヒューザは「興味ない」とそっぽを向く。
「そうか。だが わらわも
その約束は 守ろうと思っているのだ」
ニコリと「わらわの意に沿わぬ者は好きにしてかまわぬぞ」と怖いことをいう。
「こっちの面倒ごとを 解決しただけさ」
あくまで関係ないと突っぱねるヒューザに呆れつつ、ボクはマンマーに別れを告げる。
「ほら ちゃんと お別れを……」
ヒューザがソーミャに別れを促す。ヒューザは言いかけて止める。
「どうしたの? ヒューザ兄ちゃん?」
ヒューザは問いかけたソーミャではなく、ボクの方を見て「なんでもねぇ」と答える。
「もう行くぜ!」
踵を返すヒューザにボクは続く。遅れてソーミャも続き…


「おお ぱんイチ君。
ヒューザ君 ソーミャも。
無事に 子ネコを親ネコに
返すことが できたようだな!
町の周りをうろついていた ネコの魔物も
すっかり 姿が見えなくなってな。
これで町の者も ひと安心というところだ」
アイツらは所詮魔物だとヒューザは言う。
「また そんな ひねくれた言い方する……」
ソーミャが呆れたようにヒューザを嗜める姿に、ボーレン町長は目を細める。
町を出るまで、暗く、他人を寄せつけなかったソーミャの変化を町長も感じたのだろう。
「君たちの はたらきは じつに見事だった。
まさに 我が町のキーエンブレムを
与えるに ふさわしい。
さあ この青のキーエンブレムを
受け取るがいい!」

「ネコ…元々周りをうろついてなかったし、ソーミャを変えた功績ってことなんじゃ…」
ボクの呟きに、いつの間にか帰ってきていた町長の奥さんの目の奥が鋭く光るのが見えた気がした。ごめんよ町長…
「もちろん 君にもだ。
さあ 受け取ってくれ ヒューザ君」
そう言って差し出す手を、ヒューザは押し返す。
「いらねえ」
「なに? しかし このキーエンブレムがあれば
他の国でも 信頼を得やすい。
持っていて 損はないと思うが……」
「オレは そんなもんには 頼らない。
自分のチカラで 人に認めさせてやる。
レーンの村を出たとき そう決めたんだ」
そうか…とキーエンブレムを仕舞う町長に、ヒューザは
「オレは とうぶん コイツについて行くしな」
とボクの肩を抱く。
「…ボクの信用で旅する気やん…」
「イヤとは 言わせねぇ」
足手まといにはならないから心配すんなと、ヒューザはチカラいっぱいボクの背中を叩き、ボクは床に突っ伏した。

次のおはなし


【おはなしの補足(蛇足)】
土下座
かつてウェナ諸島のふくびき1等の景品だったしぐさ書。
本垢は溜め込んだふくびき券を全部はたいても当たらなかったのに、ぱんイチは早々に2つゲットした。どうして…

カリン様
ドラゴンボールのカリン塔に住む仙猫。
仙豆とか超聖水とかをくれる。
声は波平でお馴染みの永井一郎氏。ご存命であれば放浪の賢者ホーローは彼の声であったのではないか…と考えることがあるのだが、その理由はカリン様やヨーダのような「なんかちょっと変わった賢者」感があるからなのだと思う。猪熊滋悟郎とか。
島田敏さんはルーク(スカイウォーカー)とか二枚目キャラの印象なんだよぉ…!!

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