見出し画像

異世界転生

僕は今、死後の世界にいる。
信号無視したトラックに跳ねられたようだ。
「まだ若いのに可哀想に」
白い服を纏った神々しい女性が現れそう言ったのが聞こえた。
「あなたにはこのまま次の命へ転生いただきます。是非、前世の知識を活かしより良い世界を創造ください」
言い終わるが早いか、僕の足元が光り出したーー

目覚めると僕は小高い丘の草原に寝転がっていた。眼下には長閑な田園風景が広がっている。
そうだ!全て思い出した!
僕はここに転生してきたんだ。
所謂、強くてニューゲーム。
「これが…異世界転生…!」

今全てを思い出したということは、きっとこれから僕という英雄を待ち受けている冒険が始まるんだ!

***
「予てから議題に上がっている死後の審判の簡略化の件ですが、記憶リセットの省略と死因による転生先選定を試験的に導入してみた所、苦情が相次いでいますね」
「特にヨーロッパの田園地帯に転生いただいた方の感想は概ね『こんなはずじゃなかった』だそうです」
ホワイトボードに貼り出した、様々なグラフを眺めながら神々は苦笑いしながらも口々に意見する。
「車との衝突事故による転生先との相性もあったのですかね…下界の流行とタイミングが悪かったとしか思えない」
「天界の効率化に加え、知識の蓄積でより良い世界になると思ったのですが…これは別の策を講じなければいけませんかね」
「…というか、前世の体験から簡単に勇者になれると思うなんて、皆さんどんな人格者のつもりなんでしょうか…」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?