PANCETTA

パンチェッタの一宮周平が作品を投稿します。 普段は主に芝居を作っています。 http://pancettapancetta.com

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    マガジン

    • 月曜日が来ない

      月曜日が来ないで欲しいと願った男の話。

    • 童話

      童話を元にした作品。

    • ただいま

      『ドアの前から、「ただいま」と言うまで』を過剰に描写。

    最近の記事

    Instant girl

      並んで座っている男女。女へプレゼントを手渡す男。 男 はい。 女 え?何? 男 プレゼント。つるちゃん、ずっと欲しがってたでしょう。 女 え、もしかして、ライオンの鬣? 男 ん? 女 私がずっと欲しがってたって、ライオンの鬣でしょう? 男 ……うん。ライオンの鬣。 女 あ、すごい。本物だ。思ったよりも硬いんだね。うわぁ。   鬣を自らの顔に装着してみる女。 女 どう? 男 うん、似合ってるよ。 女 ガオー。ギャオー。 男 つるちゃん、つるちゃん。 女 がお? 男 な

      • 月曜日が来ない #7

         翌朝、私は5時過ぎに目が覚めた。まだ空は夜のままだった。給料をもらって働く時には、あんなにも布団から出られない身体が、ボランティアでゴミを拾いに行くのに、こんなにも素早く起き上がれるのは不思議な感覚であった。時間を持て余し、コーヒーを淹れた。買って一度しか使っていないミルで、これまた一度しか使っていない豆を挽いて、コーヒーを淹れた。部屋はコーヒーのいい香りに包まれ、お腹が空いてきたので、チーズトーストとゆで卵を作った。こんなこと、社会人になって初めての経験かもしれない。

        • お昼ごはん

          いつもと気分を変えて 今日はパスタにしよう 冷蔵庫に眠る トマト起こして ズッキーニ、パプリカ、ナスも呼ぼう オリーブオイル垂らし にんにくと唐辛子 具材をしっかり炒めたら 最後は塩で味付けよ ちょっと入れすぎたかな しょっパスタ

          • 月曜日が来ない #6

             映画を見た。私が小さい頃によく見ていた、巨大生物が街を壊す映画の最新版だった。映像技術は昔に比べ格段に良かったが、小さい頃と同じような興奮を味わうことが出来なかった。  動物園へ行った。久しぶりだったせいか、入ってすぐの檻に入った、様々な鳥たちの姿に興奮した。そのせいで、園の奥の方にいた主役級の動物たちを見る頃にはすっかり疲れ果ててしまった。  美術館へ行った。オランダ出身の、死後に注目を浴びるようになった画家の個展だった。絵よりも人の後頭部を見る時間の方が長かった。一

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            月曜日が来ない #5

             何がなんだか分からず、ユトリに引っ張られるがままに裸足で走り続け、江ノ島へとたどり着いた。島という名前がついているが、走ってたどり着く島というのも不思議なものである。  江ノ島に入ると、外国人が喜びそうな土産屋が何軒も並んでいた。ユトリは江ノ島へと入る頃には走るのをやめ、その土産屋の並びでは歩くのをやめ、立ち止まった。急に止まったものだったから、握っていたユトリの手に引っ張られ、転びそうになった。急にどうしたのかと問うたが、ユトリは黙ったままだった。ユトリの目線の先には、

            月曜日が来ない #4

             鮮やかなグリーンのネクタイの男は、私の目をじっと見つめたまま、こちらへと向かってきた。そして私の目の前で立ち止まり、にこりと微笑んできた。不覚にもつられて口元が緩んでしまった。彼は自らをユトリと名乗った。確かに私と年齢が近いであろう世代で、そう呼ばれていたとしても不思議ではなかったが、名前に触れるのはやめておいた。彼の名を聞かされ、黙っていると、不意にユトリは吹き出して笑った。私がまだ名乗っていないせいだと慌てて名乗ろうとした瞬間、目の前が真っ暗になった。  よく磨くこと

            お父さんがサンタクロース

             「知ってた?サンタクロースって本当はお父さんなんだよ。」  小学校5年生のタクヤは、同じクラスのユタカに言われてはっとした。ユタカとは家が近所で毎日一緒に帰る仲である。ユタカは、小学校5年生になるということで、サンタクロースの正体をお父さんから教わったというのだ。そして今日、クリスマスイヴの夜、お父さんからプレゼントをもらう予定らしい。  タクヤにとってサンタクロースは嫌いな存在であった。一度も会ったことがないからだ。会ったことないのはみんなと同じなのかもしれない。そう

            月曜日が来ない #3

             月曜日は私にだけ来なかったのかもしれない。そう考えると、すべての辻褄が合っているように感じて来た。そうだ、もし本当に月曜日が来ないなんてことが起きたのならば、テレビだってネットだって大騒ぎなはずである。しかし、街はいつものように毎週来るはずの日曜日が来ただけにすぎないのだ。だから、私の身にだけ、月曜日が来なかったのだと考えるのが極めて自然である。しかし、私の身にだけ月曜日が来ないということは、世間は本当は月曜日を生きているわけで、その月曜日はどこへ行ったのだ?私の身体だけ一

            月曜日が来ない #2

             私は慌てて携帯を操作し、もう一度日付と曜日を確認した。私の携帯が壊れたわけでもなんでもなく、どのインターネットサイトを見ても今日は日曜日であった。テレビをつけると、日曜日にしかやらないはずの、ゆったりとした情報番組が流れていた。私はささっと普段着に着替え、外へと出た。いつもなら倍近くかかるような朝の支度が、何の苦労もなく終えられ、コンビニへと走った。こんなにも素早く動くことができた月曜日は初めてだった。いや、月曜日ではないのか。  コンビニまでの道のりで、スーツ姿の人は一

            月曜日が来ない

             別に怒られるわけではない。しかし、月曜日に会社へ行くということは、なぜこんなにも私の足取りを重くさせるのだろう。会社に行ってさえしまえば、周囲の人々ともそれなりのコミュニケーションを取ることはできる。しかし、月曜日の朝はなぜこんなにも起き上がれないのだろう。月曜日さえ過ぎ去ってしまえば、週末まで会社に通うことに強い葛藤はない。しかし、なぜ日曜の夜はこんなに眠りたくないのだろう。数々の月曜日の苦難を前に、決まって私は心の中でつぶやく。ああ、月曜日なんて来なければいいのに。

            花束を持って歩いた

             花束を持って歩いた。強すぎないように、優しく握った。  花束を持って歩いた。道行く人の視線が気になった。  花束を持って歩いた。いつもより、背が伸びたような気がした。  花束を持って歩いた。歩みの速度を、少しだけ上げた。  花束を持って歩いた。似たような花束が、電柱のそばに添えてあった。  花束を持って歩いた。すれ違う犬が、揺れる花を見つめていた。  花束を持って歩いた。通り過ぎた家から、胡麻油の匂いがした。  花束を持って歩いた。雲の切れ間から、月が見えた。

            みにくいアヒルの子

             生まれて来なければよかった。そんなことを何度思っただろうか。他の兄弟たちは、皆美しい身体をして生まれてきたのに、私だけ、この世のものとは思えないような色をしていた。私は、みにくいアヒルの子として生きていくことを余儀なくされた。生まれた時から決まっていたのだ。  当然のように私は仲間外れにされた。見た目というものは実に残酷だ。しかし、多くの場合、視覚的情報が一番はじめに得られるのだから仕方のないことだとも思う。誰だって、みにくいよりは美しい方が良い。雑誌やテレビを見ても、美

            ふりつづける

            1「また今日もふるの?」 2「そうね。」 1「いやだよ。もう何日連続。」 2「仕方ないでしょう、それが仕事みたいなものなんだから。」 1「そんな仕事、仕事なんて呼ばなくていい。」 2「何言ってるの、大事なことでしょう。」 1「はあ。やまないかなあ。」 2「そんな簡単にやまないわよ。それに、やんだら困るでしょう。みんな心配するんだから。」 1「やめ!」 2「やめなさい。本当にやんだらどうするの。」 1「…」 2「ほら、皆様お待ちかねよ。もっと晴れ晴れと。」

            こぶとりじいさん

             鼓の音に合わせてステップを踏んだ。学生時代に私を笑った、多くの同級生の顔が浮かんできた。彼らのおかげで踊りは身についたようなものだった。彼らが私を馬鹿にして鳴らす手拍子が、私にこの足さばきを記憶させた。右頬にある瘤が、ステップを踏むたびに上下に揺れた。鬼はそれを見て大変に喜んだ。鬼は私から瘤を取った。  自宅の戸を開けると妻の心配そうな顔が目に入った。随分と予定よりも遅い帰宅になったのだから無理もなかった。妻は私の存在を認めると、心配の顔が、困惑の顔へと変化していった。妻

            姥捨山なう

            姥 @ubaeats 捨てられるまでの道のり。       7フォロー中 2フォロワー 2020年7月からTwitterを利用しています 姥 @ubaeats 曇り空。連日の雨で、道中はぬかるんでいるだろう。滑って転ぶのは勘弁だゾ息子よ。 午後1:25 · 2020年7月7日·Twitter for iPhone 姥 @ubaeats 雨具を身につけるかどうかで息子とモメる。暑いから嫌だと言ったが、息子の強い主張により合羽を身につける羽目に。こんな歳にもなって

            この世で一番美しい王妃

             「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰。」  何度目だろう、この質問を鏡に向ってひとりごつのは。  「それはお妃様、あなたでございます。」  鏡も決まって同じ言葉を繰り返す。意味のない質問なのかもしれないが、これを繰り返すことが日課になっていたし、何より私が私であり続けられる証でもあった。  あの忌々しい娘が大人になるまでは。  娘とは、白雪姫のことだ。名前を思い出すだけで虫唾が走る。彼女は、私が就任する前の王妃の、娘であった。言ってみれば今時の娘なのだろう。人々がそ