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2024年読書記録その2

凪良ゆう『汝、星のごとく』

壮絶な読書体験をした、と思った。小説を読む時の姿勢として、「第三者視点で物語を追う」読み方と「登場人物視点で物語を追う」読み方があると思うんだけど、この作品は後者で、暁海と櫂の人生を私がそのまま体験したかのような感覚に襲われた。読み終わった後、あまりに圧倒されてしまってしばらく呆然としてしまっていた。

村田沙耶香『私が食べた本』

文章を書く仕事をしている者の端くれとして、村田さんの独特の感性は嫉妬してしまうほど羨ましく、大好きだ。『私が食べた本』というタイトルもピッタリで、これらの本が村田さんの血となり肉となっていることがわかる。

(比べるのもおこがましいけれど)村田さんと私の才能の違いに打ちのめされてしまいそうになるけれど、この文章を読んで、勝手に励まされたような気がした。

当たり前だが、同じ本の書評を百人が書いたら、百通りの全く違う言葉が存在することになる。私とその本の間にしか生まれない言葉を探すことは、そんなに的外れではないのではないか

村田沙耶香『私が食べた本』

彼氏に山田詠美の本を貸したエピソードも好き。思わず笑ってしまった。

私の過去の性行為をめぐって彼と喧嘩になったとき、「山田詠美の本から何も学んでいない」と私が言って、彼が小さく笑ったので、『ぼくは勉強ができない』も貸していたのかもしれない。

村田沙耶香『私が食べた本』

一穂ミチ『光のとこにいてね』

(おそらく)一穂さんの作品は初めて読んだのだけど、まずこの『光のとこにいてね』というタイトルが素晴らしすぎる。主人公・結珠と果遠のそれぞれの「あなたにはあたたかい世界で生きてほしい」という気持ちがこのタイトルに詰まっている。読了後にこのタイトルをあらためて見ると、さみしさとも切なさとも違った感情が心をギュッと締め付ける。

湊かなえ『未来』

久しぶりの湊さん。『告白』『贖罪』のようなドロッドロのイヤミスが好きなので、同作は個人的にはあまり刺さらなかった(話の内容は重いのだけど)。世界のどこかにいる、信じたくない・目を逸らしたくなるような境遇の子どもたちに向けての湊さんのエールなのかな、と思った。

寺地はるな『水を縫う』

男らしく・女らしくという価値観は、私たちの心に呪いをかけている。(女性的な趣味とされている)手芸が好きな清澄も、性被害にあったことで「かわいい」を忌避する水青も。呪いは簡単には解けないかもしれないけれども、「あなたは、あなたらしくいていいんだよ」と言い聞かせてくれるような優しい物語。

新胡桃『何食わぬきみたちへ』

なんで、嫌いな人間にちゃんと死ねって言えないの。寄り添うな、おこがましいんだよ、死ね。

新胡桃『何食わぬきみたちへ』

作中のこのセリフが読後ずっと重くのしかかっている。「障がい者をバカにしてはいけない」というのは全くもって当然のこと。だけどそこにはバカにする人間とはまた別の種類の「おこがましさ」があるようにも思える。「障がい者”だから”」とはき違えてはいけない。

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』

再読。いつまでも色褪せない、すごく好きな作品。何度読んでも頭を強く殴られたような衝撃がある。

取捨選択できる文章をあえてしないところ。それが匂い立つような混沌を生み出しているのかなあと思う。

何度も何度も言っているんだけど、アネモネがキクを想って部屋の床を埋め尽くすほど薄焼き卵とケチャップご飯を作り続け、全身が痙攣するまで泣くシーンがとても美しくて好きだ。

ほんとに何度も何度も言ってたわ……。

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