📘#11 夜空に泳ぐチョコレートグラミー　町田そのこ

52ヘルツとぎょらんの町田さんのデビュー作品。

心のなかに誰かがいる
そばにいなくともだれががいるという感覚は1%でもその人にとって前に進んでいける気力になる。
0と1ではきっと大きく違う。
それが大きければ大きいほどいろんな複雑な感情も比例してくる。
それでも、自分の中にそういう誰かがいるというのはどんなことにも負けないんだろうな。

色んな痛みを抱えて辛かったり切なかったりするけど、それでも前に進んでいこうとする主人公たち。

強くいなければ、って思えなくても1日1日生きていればそれだけで充分なんだよ、って言ってくれているようなそんな物語。

5つの短編集で、章ごとの横のつながりもとってもよかった。

そして町田さん、どの作品もだけど書き出しが絶妙！比喩も美しい〜、、最初の一行で一気に話に入り込めるから感情移入しやすくて、読みやすいのでおすすめ。

"息が吐ける場所"
人には「ここではないどこか」のほうが息がしやすかったり、生きやすい人がいるのだ。
どのくらいの人が息がしやすい場所にいるのだろう。
そこへ向かっていけるように生きて行きたい。

📝
「ひとから叩かれたら痛い。だけど同じことができる手のひらを、自分も持ってる。こういう気付きの繰り返しだろ。」

「この水槽の向こうにはもっとたくさんの水槽があるんだよね。水槽どころか、池も川も、海だってある。あたしたちはこの広い世界を泳がなきゃいけない。」

「海に果てなどない。彼女の苦しみが巡り巡って私のところへ辿り着き、私を救った。流した涙は、いつか誰かに優しく辿り着く。ひとは誰かを育むものになれる。」