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ソフレの男

男の家に遊びに行った。


「ごちゃごちゃしててごめんね」


本当にごちゃごちゃしていた。


不躾なのは承知だが、部屋を見回した。

食品関係で不衛生な感じは無いようだったので、少し安心した。


しかしこの良い天気に、カーテンは閉めっ放し。

そして薄暗い間接照明。


誘っているのか?という考えが頭をよぎったが、

そうでもないらしい。


「普段から間接照明で。落ち着くんだよね。・・・日光、、苦手かも。」


それでも健康に配慮し、朝はまずカーテンを開けて陽の光を浴びるらしい。


「で、眩しい…!ってなって、閉めるの。。」

「ビタミンDは10分以上!日光浴びないと生成されないんだよ!!笑」


月のような彼と、太陽のような私。

対照的だが、わりと和やかな雰囲気で居られた。


「映画でも見る?」


彼の小さなスマホの画面。

手に持ってもらい

壁にもたれ、二人で肩を並べて映画を観た。


普段はうつ伏せになって観るという彼に、

「うつ伏せは腕が痛くなるし、苦しくなるからヤダ」と

駄々をこねた結果だった。


しばらくすると、

「肩、借りて良い?」と言われ、何のことだろうと思ったら

私の肩にもたれかかってきた。


雛鳥のように、身体を寄り添わせて映画を観た。


途中、「ちょっと持って」と、

スマホを持つ係を交代させられた。


私に全身を預けて、膝枕とまではいかないが横に寝るような格好になった。

それがラクらしい。

重くはなかった。


私は抱いていたぬいぐるみと、左手を使ってスマホを固定していた。

空いた右手を、彼は優しく握った。


・・・・・・・・・・・・・・・


映画を観終わった。

色気のないことに、私はひどくお腹が空いていた。


「おなか空いた」というと

「じゃあ昨日作ったカレーがあるから、食べる?」と言って

温めてくれた。


私が家に来ることに緊張して、あまり眠れなかったらしい。

「眠れないなら、カレーでも作ろうかと思って」


眠れない夜に男が煮込んでくれたカレーは、初心者にしては上出来だった。


・・・・・・・・・・・・・・・


「ご馳走さまでした!美味しかった!」

「良かった」

キレイに食べ終わった器を、流しへ持って行った。

戻って来て隣の椅子に座った彼を、手でぐっと押した。

「何?w」

押し続ける私。

「何だよー?w」

「寝るの!」

「あ、そういうことね。」


そのまま二人でベッドに横になった。

私は男と布団に包まるのが好きだ。


仰向けになっている彼の左腕を掴み、

やや強引に後ろから抱き締めさせた。


彼は抵抗しなかった。

何も、しなかった。


こういう体勢になると大体の男は襲ってくるが、

彼は何もしなかった。

ただ後ろから私を包んでくれた。


私も彼に、求めていなかった。

彼のモノの反応を感じなかったこともあるだろう。

ただ安心感だけを感じたかった。


「じゃあ10分だけ、ゆっくりする?」

彼はアラームを掛けた。

このあとお互いに予定があったのだ。


10分間だけ、一緒に布団に包まってのんびりした。

なんか良いなと思った。


アラームが鳴ったので、帰る準備をした。

「じゃあまたね」

途中まで送ってくれた彼と別れた。


月と太陽みたいに対照的なのに、

話してみると共通点はたくさんあった。


「まだ君のこと、よく知らないから・・・」と言われたけど、

よく知ったら居心地良い関係になれるとは限らない。


今日の感じは、私は居心地良かった。

彼もそうであってくれれば嬉しかった。


そして、ソフレもなかなか良いな、と思った。


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