臆病な愛をかたろう

(創作です。暗めのお話かもしれません。拙い文章です。それでもよければどうぞ)

小さいころからずっと、愛に飢えていた。

別に愛されずに育ったわけではない。それ相応に手をかけてもらっていたし、現にこうして歳を重ねている。世間から見れば優しくて真面目ないい人に見えるよう育ったつもりである。

でも、いつも大人の顔色をうかがって、怒らせないように気をつけて息をして、わがままは言わず、そうして穏便に生きてきた。イイコを演じすぎていた。

それは自分なりの愛情表現であったはずだった。イイコでいることこそ幸せなことでもあったはずだった。あるいは自己防衛だったか。

でも今は。

イイコでいることが苦しい。それが苦しくて「もっとワタシを愛して」なんて傲慢なことを心のまんなかで叫ぶ。でもイイコだから、それを声に出したりはしない。自分をじわじわと苦しめる。

もっと愛されたい。その両目に、自分の姿だけを映してほしい。貴方にワタシをみとめてほしい。

だからこそ愛されたくない。弱い自分の本性が露見するのが怖い。愛に溺れてしまいたくない。愛されるのが怖い。

臆病な気持ちを抱えたまま、今日もワタシは真面目なイイコ。

臆病?誰のこと?って優雅に笑って、そうして矛先をそらして安堵して。

今日もワタシは真面目なイイコ。

ワルイコなワタシはどこにもいないよ。ねえ?

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