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でっこりーん星(123)


毎日異常な暑さで、いつ倒れてもおかしくないくらいだ。恐ろしいのはその生活に少し慣れてきてることである。きっと来年からはこの異常な暑さが通常になるのだろう。ああいやだいやだ。現在我が家では24時間エアコンが稼働している。全くもってエアコン様には申し訳ない限りである。少しくらい休みたいだろうに我が家の都合で動き続けてもらっている。”働き方改革など君にはないのだ、人間様のために休まず冷たい風を吐き出すが良い!”などという気持ちは全くない。ただただエアコン様には頭が上がらない。もうエアコン様のない生活など考えられない。

もしエアコンが意思を持って喋ったらどう言ってくるのだろうと、なんだかよくわかんないことを考えてしまった。子供の頃に教育テレビで放送していた「それいけノンタック」では、魔法のメガネをかけると身の回りのものが喋り出すというのがあった。のんびりやの少年ノンタックが、おばあちゃんからもらった魔法のメガネをかけて、何らかの無機物と会話をする。”えっへん!オデコのめがねで、デコデコ、デッコリーン“と呪文を唱えると、おでこにかけてあるメガネが降りて顔にかかり、メガネ越しに観ると身の回りにある電柱であったりクレヨンであったりが急に喋り出すのだ。身の回りのものや仕組みがどういう成り立ちでどうなっているのかをわかりやすく勉強出来るようになっている。因みに主人公のノンタックの本名は”タック”で、のんびり屋のタックだからノンタックというらしい。子供の頃筆者はこういった教育テレビが好きで、とにかくずっと見ていた。はにまる王子、いってみようやってみよう、できるかななどなど。大概は人形やぬいぐるみの腕や脚に棒のようなものがついていて、その棒を上手に動かしてキャラクターに命を吹き込んでいる。当時はかわいいような気がしたが、大人になって見ると少し気持ち悪いような気もする。見方や受け取り方が純粋でなくなってしまったのかもしれない。

さてせっかくなので我が家のらほんの少しだけエアコン様に喋ってもらおう。とはいえ我が家のエアコン様はどちらかというと真面目な性格だと思うので、面白いことは全く言ってくれなそうねはあるがものは試しである。それでは、

「えっへん!オデコのめがねでデコデコ、デッコリーン」

『これはこれはご主人、どうかなさいましたか』
「いやエアコンさん毎日働かせて悪いね」
『何をおっしゃいますやらご主人、わたくしことエアコンめはご主人の部屋を快適な温度に保つ、それが仕事であり生きがいでございます』
「でもさ、ちょいちょいリモコンで風向きを変えたり温度変えたりで申し訳ないと思って」
『いえいえ、それが私の生きる道でございます。熱中症にならないよう、風向、風速、温度、いつでもご主人のお好きなように』
「そうかい、ありがとう。これからも頼むよ」
『ガッテン承知の助でございます!』

やはり我が家のエアコンは真面目なやつであった。本当は疲れているだろうにそんなことをおくびにも出さず、ただ筆者の身体を気遣ってくれた。この思いに報いるためには、遠慮なくエアコンをフル稼働していくしかない。温度を下げ、風速をパワフルにしようではないか。もしかしたら読者の皆様のなかにも、”こんなにエアコンをフル稼働して大丈夫かしら”と考える方もいるかもしれない。そんな時はオデコのめがねを使ってエアコンと話をしてみたら良い。余程でない限り気兼ねなくフルパワーで使ってねといってくれるだろう。ただ一つ注意しなくてはいけないのは、フィクションではなく本当にエアコンに話しかけてしまうことだ。すぐさま水風呂に入り体を冷やすことをおすすめする。それはもう暑さで頭が少しどうにかしてしまっている証拠だ。熱中症は怖い、超気をつけましょう。

この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com