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コーヒードリッパーを作りました

長野県で妻と二人で木製雑貨や革財布などを作っています。

PLYLIST(プライリスト)の小尾口(こおぐち)です。

2022年7月に新作アイテムのコーヒードリッパーの販売を始めました!
この記事ではコーヒードリッパーを作ろうと思ったきっかけやデザインのアイデア出し、試作したものなんかを紹介をしようと思います。
コーヒードリッパーが出来上がるまでの物語です。

コーヒードリッパーを作ろうと思ったきっかけ

僕は自分でコーヒー豆を焙煎するほどのコーヒー好きです。
生豆の状態でいろんな産地の豆を買って、
その日の気分で豆を選び、
自分で作った焙煎機で焙煎します。
これを月に1回から2回くらい。
コーヒー好きの月1の恒例行事的なやつです。

みなさんはどんなときにコーヒーを飲みますか?
僕は朝食のときに飲むのと
たまに午後の休憩のときに飲みます。

朝は目覚めのために。
午後の休憩は、気分転換やリラックスしたいときに飲みます。
もしくは逆に仕事が詰まっていて集中力を高めたい時なんかにも飲みます。
あとは、クッキーなんかの甘いものに合わせて飲むときもあります。

おそらく、みなさんもいろんなシーンでコーヒーを飲まれていると思います。

コーヒーは
集中したいときにも、
リラックスしたいときにも、
朝の目覚めのときにも、
音楽や読書のお供にもなる。

僕の中ではコーヒーを飲むときはいつも何か意味があります。

そんなコーヒー飲むためにドリップするという行為は、
なんだか、僕の中ではルーティーンのような役割を果たしているような気がします。

毎日1回か2回必ずする行為であり、
同じ道具を使い、
同じような動作、所作のようなものの繰り返しであり、
数分から十数分間くらいかかる。

この儀式のような行為に何か意味があるように思えたのです。

もしかしたら茶道とかも近いものがあるのかもしれません。
(茶道のことに関しては全く知識がありませんが・・・)

繰り返しの形式化した所作の中に美しさを見出したり、
濁ってしまった感覚を研ぎ澄ますための時間だったりするのかもしれないなと
感じたのです。

コーヒーを淹れる時に思考を整理したい人。
コーヒーを淹れる時に頭を空っぽにしたい人。
いろんな人のコーヒーのある暮らしに寄り添うドリッパーを作りたいなと思いました。

おそらく、世の中のドリッパーは「味」に重点を置いて設計されていると思うんです。
味はもちろん重要なんですが、
僕の作るドリッパーは「味」よりも「コーヒーと過ごす時間」に着目して作ろうと思いました。

アイデア出し

まずはどんなデザインにするか考えます。

ボーッとドリッパーを眺めていたら、
リブ(ドリッパーの凸線上の部分)がなんか浮き上がって見えました。
「あれ?リブだけあればフィルターを保持できるんじゃない?」
となんか思いついてスケッチしてみました。
リブって、英語で肋骨の意味なんです。
つまりこのドリッパーは肋骨から連想されたデザインと言えるかもしれません。

ドリッパーのラフスケッチ。ほかにも5パターンくらいスケッチしてみました。

リブを支えるベースの部分は木にして、
リブは金属にしたら異素材の組み合わせでPLYLISTらしさもあり面白いかなと思いました。

リブだけでフィルターを支持するデザインは、
コーヒーを淹れる時の思考を邪魔しないシンプルなデザインにもなる。
頭を空っぽにしてドリップに集中したい人には
コーヒーがフィルターから滴る様子がダイレクトに伝わるのではないか?と思いました。

なんとなくですが、無駄が少なくミニマルなデザインになったような気がします。

これなら「集中して思考を整理したい人」でも「ぼーっとコーヒーが落ちる様子を見ていたい人」でも
どちらにとっても良いデザインになるような気がしました。

さっそく試作してみます。

試作

試作してみたものの、
設計と違う角度でリブの部分を差し込んでしまいました。
まあ、しょうがないので
とりあえずこれでコーヒーをドリップしてみることに。

すると、穴が小さすぎたために
ドリップしたコーヒーが漏れてきてしまうことが分かりました。

これはまずい・・・

試作したドリッパー。しかも金属を差し込む角度を間違えていた・・・

再設計

コーヒーが漏れてこないように
穴を大きく開ける必要がありそうです。

しかし、穴を大きくするということはリブを支持する部分を削るということであり
強度的にとても不安です。

そこで、
リブを折り曲げて、木のベース部分がリブを保持する場所をさらに外側にずらすことにしました。
こうすることで穴をさらに大きく開けられます。

デザイン的にもくびれがあるとなんか美しく感じました。

もう一度試作

今度はうまくいきました。
コーヒーをドリップしてみても、漏れたり溢れたりすることはありませんでした。
粉の粒度や量を変えたりしましたが、
特に問題はなさそうでした。
穴を大きく開けたことでコーヒーの量を覗いて確認することができて、さらに良くなったと思います。

ということで、
本番の制作に進むことにしました。
実は7月の上旬にイベント出展があったので、
なんとかそのイベントに間に合わせたかったのです。
結構忙しかったです。

2度目に試作したドリッパー

制作

とりあえず数は少ないですが、4つ作ることにしました。
樹種はウォールナットと桜とケヤキ、あとカエデで。
カエデは自家用です。
金属は銅と真鍮にしました。
3個作るだけでも、意外とリブの本数が多くて・・・
なんと6mほどの材料が必要です。
金属は結構値上がりしていて材料費が想像していたよりもかかってしまいました。
特に銅がね・・・

あと、試作のときにはやらなかったんですが、
木の裏面に彫刻刀でテクスチャをつける加工をしてみました。

彫刻刀で彫り、テクスチャをつける

これは一回目の試作で判明したんですが、
ひっくり返して置いてみたら、
クラゲのようなUFOのような、なんとも不思議な姿の佇まいに見えたんです。

これは洗って干した時とドリップした時の印象がガラッと変わって面白いなと。
ならば、ひっくり返した時はノミで彫ったテクスチャをつけて
さらに印象の変化をつけたいなと思いました。
手仕事の跡を残すといいますか。

ドリッパーをひっくり返すとクラゲやUFOを彷彿とさせる佇まいに

慣れない仕事だったので、これが意外と大変でした。
ですがやはりこちらの方が印象のギャップがあっていいなと思いました。
置いておくだけでインテリアにもなりそうだし。
オブジェ的な要素もあると感じました。

塗料はガラス塗料を使いました。
撥水性が高くて、最近のうちの商品には大概これを使っています。
長皿やスパイスミルやスパチュラナイフなど。

木のものといえば、経年で色が変わり
だんだんといい味が出るというのがありますが、
ガラス塗料はこの経年変化が少ない気がします。
少ないというか、変化が遅いというのが正しいのかな??
まだ使い始めて間もないので確かなことは言えませんが、
オイルに比べると色の変化が少ないと思います。

自然由来のオイルがいいという人もいると思いますが、
僕はメンテナンス性がほぼないガラス塗料のほうが好みです。
オイルって、どうしても食器とかで使うとカサカサしてくるんですよね。
白っぽい色になるし、
木肌もザラついてくる。
研磨して、オイルを塗ってメンテナンスするのが好きな人もいると思いますが、
現代の生活って忙しすぎてメンテナンスなんてしてられない人もかなり多いと思うんです。
しかも、メンテナンスの仕方もあれこれネット上に書かれてるじゃないですか。
もう調べたりするのめんどくさいし、
何が正しいのかも分からない人も多いと思うんです。

だから僕はメンテナンスしなくていいガラス塗料のほうが気に入っています。機能性も高いし。

あと、オイルは塗るとどうしても黄色くなるんですよね。
オイルそのものが黄色いので、
例えば白色がきれいなカエデの木なんかにオイルを塗ると
めちゃくちゃ黄色くなるんですよね。
せっかくの美しい白色が台無しじゃん!
と個人的には思っています。
もちろん、黄色くなるのが好きな人もいますけどね。

ということで、木の色の変化が少ないので、
金属にもウレタン塗装して経年の色の変化を抑えています。
もちろん、変化しないわけではなくて、
あくまでかなりゆっくり変化するとは思いますが。

あと、金属は味に影響すると考えている人もいると思いますが、
ウレタン塗装をしているので味への影響も少ないと思います。

意外とパーツ数が多くなって、想像していたよりも時間がかかってしまいました。
ですがイベントにも間に合いましたし、完成できてよかったです。

コーヒーのある暮らし

こうしてなんとかドリッパーを完成させることができました。
イベントまでに2週間ほど余裕があったので、
自家用に作ったものをいろんなパターンでドリップしてみました。
粉の粒度や量、抽出する温度などをいくつか試しました。
特に問題なく使用できたので「これなら販売できるな」と自信が持てました。

イベント当日もいろんなお客さんの反応をいただきましたが、
どれも好感触でした。
デザインも特殊だったためか、
立ち止まって見てくださる方も多かったです。

PLYLISTのコーヒードリッパーがいろんな人たちのコーヒーのある暮らしに欠かせないものになってくれるといいなと思います。

集中したいときにも、
リラックスしたいときにも、
朝の目覚めのときにも、
音楽や読書のお供にも、
頭を空っぽにしたいときにも、
いつもそばにあるものとして人を支えるものになってくれるといいなと思います。

うちのリアルなコーヒーのある暮らしを動画にしてみました。

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この記事で紹介したドリッパーはPLYLISTのオンラインストアにて販売中です。
気になる方は↓こちら↓もぜひチェックしてみてください。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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