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月の美容代0円はたったの2割? スキンケア&メイクはZ世代の常識

 私はBoys Beautyを立ち上げた2018年中ごろよりメンズ美容市場の動きを肌で感じてきていますが、その中でも特に興味深いのは世代間の美容に対する意識の違いです。「若者」と一括りにされがちな10~20代の中でも、意識にはレイヤーが生まれているのです。
今回は具体的にどのような違いがあるのかを、リサーチ結果に基づいて説明していきます。

【アンケート】
<調査対象>
東京都・大阪府・愛知県・北海道・福岡県に住む15~29歳の男性1795名
<調査実施期間>
2020年7月1日~7月5日
<調査方法>
インターネット調査

美容への関心は総じて高い

まずは美容に対する意識について、世代間でどう異なるのかを調査しました。その結果はとても興味深いものでした。

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 若い世代ほど男性が美容に気を遣うことは「ごく普通のことだと思う」と回答する率が高くなっており、若年層ほど美容に対する抵抗感が少なく、日常的なこととして捉えているということがわかります。15-19歳と25-29歳を比較しただけでも10%近い差が生まれているので、この先10年ほどでメンズ美容は急速に「当たり前」の習慣として馴染んでいくことでしょう。

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 美容に興味を持ったきっかけは、肌トラブルの自覚が一番多くなっています。企業側としては、一方的にメンズ美容を啓蒙していくよりも、肌トラブルを自覚させるような訴求の方が彼らに届きそうですね。

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 続いて、いまよりも外見を良くしたいと考えているパーツ別関心度の高さに差が出るのかを検証してみました。すると、10~20代の男性全体として、どのパーツにおいても関心がある人が半数以上という結果に。また、小さな差ではありますが、20代に比べて10代の方が美容への関心が高いことがわかります。体型について10代の関心が低いのは、20代に比べて太りにくいという年齢的な理由もありますが、”多様性”という言葉に多く触れてきた世代であることも関係しているのかもしれません。今後、もう少し深掘りをしていきたいポイントです。

 次に、顔周りに絞った美容について深掘りをしました。

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現在のスキンケア習慣について、実際に使っているケア用品を聞いたところ、10代よりも20代の方が習慣化している人が多く、特に化粧水については、15-19歳と25-29歳では約20%の差が出ています。このことから、美容に対する抵抗感は若い世代ほど小さい一方で、現在の主要ユーザーは20代であることがわかります。ただし金銭面での制約も大きく絡んだ結果であるため、5年後、10年後、いまの10代が成長して自由に使えるお金が増える頃には、彼らがメンズコスメ市場を拡大させていくのではないでしょうか。

1割はメイクする!2割は男性メイクに関心あり

 顔周りといえば、特に注目を集めているのが「メンズメイク」ですね。実際どのくらいの人が関心を持っているのでしょうか。

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メイクへの関心は若い世代ほど高いという結果が出ました。メンズ美容に対する抵抗感が低くメンズメイクへの関心が高い、ということから、これからメンズ美容市場をけん引していくのはいまのZ世代であると言えそうです。

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一方で、興味を持っている人の中でも実際にメイクをしている人はまだ1割というのが現状ですが、メンズコスメの潜在ユーザーがある程度多くいると予想されます。

 
続いて実際にメイクをしている方々に目を向けると、購入経験のあるアイテムについては以下のようになりました。やはりBBクリームや化粧下地などのベースメイクアイテムやアイブロウが多く、アイカラーなどのポイントメイクはメイクをしている人の中でもハードルが高いようですね。

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美容関連アイテムの予算については、26-29歳で0円の割合が最も小さく、毎月何かしらの美容関連アイテムを買っている人は、この年齢層で一番多いようです。一方で、平均額が高いのは中間の20-24歳でした。つまり、興味関心の高さと金銭的な余裕のバランスが最も取れているのが20-24歳ということ。この先、彼らが金銭的な余裕を持ったとき、それに比例して美容の予算を増やしていくのか否か、注目すべきポイントです。

自信につながる コンプレックスを解消するためのメイク

 最後に、「彼らが何のために美容に力を入れるのか」を深掘っていきましょう。異性にモテるため?それとも…?

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 全年代で「自分に自信を持ちたいから」が一位の理由となりました。次いで「自分を変えたいから」「コンプレックスを隠したいから」、と、基本的には内向きの感情で美容に気を遣っているようです。「モテたい」よりも「最低限のマナー」と捉える方が多い点も興味深いですね。昔からメンズコスメは異性の目を基軸にした訴求が多かった分野ですが、これからはユーザー自身を軸とした訴求をしていく方が効果はありそうです。

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 美容に気を遣うことを「ごく普通」と捉えて人目を気にしない、という人が多い一方で、「あまり知られたくない」という恥ずかしさを感じている人も少なくありません。この質問の回答に関しては全世代で大きな違いはないことから、”第三者の目”に対する感度についてはまさに過渡期にあると言えそうです。この気恥ずかしさを取り除いていくことが、メンズ美容市場拡大に向けて重要となってきます。


 一般的に30代以上よりも美意識が高いと言われる10代~20代の中でも、意識や習慣において差が生まれています。まさに過渡期にあるメンズ美容市場ですが、美容への関心が特に高いZ世代が今後どこまで世の中の風潮を変えていくのか楽しみですね。

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堀 かおり

2014年、電通テック入社。2018年5月より +tech labo の研究員となり、“Z 世代”を軸として開発業務を行っている。Z世代男子に向けてメンズ美容の情報を発信するInstagramアカウント「Boys Beauty」のプロデューサー。

https://plustechlabo.jp/