肥満や気になるおなかに「防風通聖散」
「お腹周りが気になってきた」
「メタボって聞くけど、予防はできないのかな」
肥満や生活習慣病、メタボリックシンドロームなど歳を重ねるうちに気になりますよね。
最近では、若いうちから肥満度が高かったり、皮下脂肪が気になったりする方も。
今回紹介する漢方薬の防風通聖散(ボウフウツウショウサン)は、腹部にたまる皮下脂肪に効果的な漢方薬です。
肥満やメタボリックシンドロームに関して、一般的な改善方法から防風通聖散の効果までを薬剤師が解説。
少しお腹周りが気になりはじめた方におすすめの記事です。
肥満症状からメタボにつながってしまう危険性
防風通聖散は、腹部にある皮下脂肪に対して効果的だといわれています。
皮下脂肪がたまってしまう原因のひとつが肥満です。
この章では肥満について、また肥満からつながる疾患に関して解説します。
肥満は体重の増加だけではない
肥満とは、体重だけの問題ではありません。
肥満が進むと体脂肪が蓄積し、皮下脂肪が増加。
痩せているように見えていても、体脂肪率が高い場合があります。
これは、急激な体重減少により脂肪ではなく筋肉が落ちてしまったことが原因です。
肥満が続いてしまうと、さまざまな疾患につながってしまうので注意しましょう。
脂質異常症
糖尿病
高血圧症
心血管疾患 など
肥満が継続すると、生活習慣病と呼ばれる疾患に続き健康が損なわれてしまいます。[1]
肥満度とBMI
肥満の度合いを知るための指標のひとつに、肥満度とBMIがあります。
肥満度を求める計算式は以下です。
実際に体重計に測った数値を実測体重といいます。
標準体重は、BMI値が22にになる体重のことです。
BMI値は以下の計算式で表します。
計算したBMIは以下のように分類されます。
厚生労働省が調査した国民健康・栄養調査結果の概要においてBMI25以上の肥満に該当する割合は男性が33%、女性が22.3%でした。[2]
2013年から2019年の間に男性は、BMI25以上の数が増加していることがわかっています。
肥満からメタボにつながってしまう
日本において、おへその高さの腹囲のウエストの測定値が男性85cm、女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値より高くなると、メタボリックシンドロームと診断されます。
メタボリックシンドロームは、通称メタボとも言われ、動脈が硬くなる動脈硬化に陥りるリスクが高くなります。
動脈が硬くなることによって、心筋梗塞や脳梗塞が引き起こされるので注意が必要です。[1]
肥満における一般的な予防法や治療法を紹介
肥満は生活習慣病や、メタボリックシンドロームにつながり、最悪の場合は死にもつながってしまいます。
早めの予防と治療が重要です。
ここでは、一般的に推奨されている予防法や薬による治療法を紹介します。
肥満の予防は生活習慣の改善
肥満や体脂肪率の減少、生活習慣病、メタボリックシンドロームの予防に関しては共通して生活習慣の改善が重要です。[3]
特に、以下の2点の改善が必要です。
食生活
運動習慣
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ってしまうと、過剰なエネルギーが体脂肪として蓄積され、体重が増えてしまい肥満につながります。
食べ過ぎやカロリーを多く取りすぎることも注意しなければなりません。
また、消費カロリーを増やすための毎日の運動も必要です。
肥満は遺伝とも認識されていますが、自分の生活習慣を見直してみましょう。
肥満症に適応がある薬を紹介
日本において、肥満や皮下脂肪を減らすのに有効と考えられ、処方が多いのは漢方薬です。
しかし、肥満症の適応をもつ薬があります。
「サノレックス」というお薬です。
日本において、サノレックスは1992年から使用が認められています。
サノレックスは商品名で成分の名前はマジンドール。
作用としては、ドパミンという脳内の信号を抑えます。
ドパミンの作用が抑えられることで、私たちの脳は満腹感を感じ、食べる量を減らすことが可能です。
しかし、サノレックスは誰にでも服用できる薬ではありません。
添付文書には以下の効能効果が示されています。
食事の習慣や運動習慣を見直してもなお、肥満の度合いが高い場合のみ使用できます。
全く違う薬なのですが、覚せい剤の一種であるアンフェタミンとよく似た作用があるので、気軽に使用できる薬ではありません。 [4]
医療機関で処方される以外の「やせる薬」には要注意
インターネットで「やせる 薬」と検索すると、海外製のジェネリック医薬品やサプリメントの個人輸入サイトなどに誘導されます。
海外で製造販売されているジェネリック医薬品は、基本的に日本の厚生労働省では認可されていない薬です。
個人で輸入した薬を服用し副作用があっても救済制度が利用できません。
よって、個人輸入で購入したやせる薬の服用はやめましょう。
また、日本や海外においても海外製の医薬品が偽造薬であり、死亡例を含む健康被害が報告されています。[5]
インターネット広告に惑わされないように、厚生労働省も注意喚起を行っています。
防風通聖散での肥満症へのアプローチ
防風通聖散における肥満解消に関して解説します。
防風通聖散は肥満症治療に注目されている
防風通聖散は、配合される生薬から肥満の治療・改善薬として注目されています。
薬局でも様々な名称で、防風通聖散が販売されています。
効能効果は以下です。
誰にでも向いているのではなく、体力があり、特におなかに皮下脂肪が多い、便秘がちな人に対して防風通聖散は効果的です。
そして18種類の生薬が配合されています。 [6]
当帰(トウキ)
芍薬(シャクヤク)
川芎(センキュウ)
山梔子(サンシシ)
連翹(レンギョウ)
薄荷(ハッカ)
生姜(ショウキョウ)
荊芥(ケイガイ)
防風(ボウフウ)
麻黄(マオウ)
大黄(ダイオウ)
芒硝(ボウショウ)
白朮(ビャクジュツ)
桔梗(キキョウ)
黄芩(オウゴン)
甘草(カンゾウ)
石膏(セッコウ)
滑石(カッセキ)
防風通聖散のメタボリックシンドロームに対する研究
防風通聖散を服用した41例と、プラセボを服用した40例での試験が行われました。[7]
その結果から防風通聖散は、特に内臓脂肪を減少させたことが明らかになっています。
またお腹周りやお尻周りの周囲も、防風通聖散を服用した群で有意に減少していることが確認されています。
研究において、防風通聖散の各生薬の役割は以下のように考えられています。
肥満治療だけじゃない、高血圧に伴う症状にも防風通聖散
防風通聖散は肥満だけではなく、高血圧に伴う以下の症状にも効果的です。[7]
動悸
肩こり
のぼせ
むくみ
便秘
副鼻腔炎
湿疹
皮膚炎
ふきでもの(にきび)
肥満症とあわせて、以上のような症状がある方は防風通聖散がおすすめです。
お腹周りの脂肪や肥満解消に防風通聖散をプラス
今回は肥満症に効果的な漢方、防風通聖散に関して解説しました。
特に体力があり、皮下脂肪が多いタイプの肥満症に効果的です。
肥満から生活習慣病やメタボリックシンドロームにつながってしまうので、普段からの生活習慣の改善も重要。
生活習慣の見直しと、漢方薬で気になる肥満症を改善しましょう。
【参考】
[4]サノレックス添付文書
[6]ツムラ 防風通聖散