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花はどうして

「すべてのものに命が宿っている」

そう考えるならば、すべてのものから妖怪は生まれるのではないだろうか。

ふとそんな考えが、私の中に湧いてきたのです。



古代中国の幻想怪奇なお話の中、

昔助けた鹿に恩返しされるだとか、

一目見た天女のようにうつくしい女を忘れられずに飢え死ぬだとか、



あの世とこの世、夢と現実とがパラレルワールドなんかではなくって、おんなじ世界に存在する、そんなお話が多くあります。

そんな中でも私は、人間に化けた花、つまり「花妖」のお話が大好きです。



花は美しい。


これは幼いころから知っておりました。

だって美しいじゃありませんか。


それに陽や水を浴びて健気に成長する姿はどこか母性をくすぐられるような、育てている自分さえも自動的に善に分類されるような、


そんな「清らかな」ものの象徴なのだと、なんの疑いもなしに考えていたのです。



でも、生きていくうちに

花はもっと、何かこう、少女が声を大にしては言えないような何かを含んでいるのではと、

うっすらと気づいてきたのです。なにが私にそんな考えを生んだのでしょうか。



花という植物が生殖器の暗喩でもあるという知識を得たのは、それより後のことですのに…





でも私、ようやくわかりました。

花は化ける前から花妖だったのです。


蜜を出して虫を誘い、根からは養分を吸い取っては花弁を広げて人間を魅了する。



目配せしては男性を誘い、房中術で相手から精気を吸い取っては後宮で位を上げてゆく。そんな古代中国の妖姫たちと何ら変わりない、


むしろもっと大胆な、性をあらわす存在だったのです。

そんな妖しいもののけが、そこらに自生して、それだけの店まであって。



「まま!わたしね、将来の夢はお花屋さんになることなの!」


もしかしたら、もう憑りつかれてしまったのでしょうか。




なんだか私、熱っぽくなってしまいました。


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