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アマゾンプライムお薦めビデオ② 84 愛すべきバカ映画、あるいはシン・〇〇シリーズへの河崎実監督なりの返答として『ロバマン』

さて、今回ご紹介するのは、鬼才、河崎実監督による2021年の作品「ロバマン」です。

この映画、ラジオ好きであれば「ロバ」と言えばこの人、吉田照美氏の68歳(ロバ歳)を記念して、68分の尺で作られた映画、というか映像作品なのですが、そこは鬼才河崎実監督、古典的且つ斬新なアクションヒーロー映画として仕上げています。68歳になった吉田照美氏がけがをしないように足を必要以上に高く上げて走るシーンがなんとも印象的ですが、このロバマン、必要以上に人を殴ったりもします(もちろん相手は悪人ですが)。

当然、それに対しての批判の声も上がるのですが、河崎監督はその声もちゃんと(パロディ的にちゃんと)拾い上げます。ヒーローだからと言ってそこまでやって許されるのか、というある意味古典的なテーマですが、だからこそ、庵野監督のシン・〇〇シリーズに対する、同じ特撮愛のあふれる河崎監督なりの返答と言うか、皮肉?にもなっています。庵野監督のシン・〇〇シリーズがある種の社会批評であるのと同様、この映画は(と言うか基本的に河崎監督のすべての映画は)河崎監督なりのパロディー、コメディーという形をとっての社会批評なのです。

ロバマンは吉田照美氏がそうであるように、ある意味選ばれた人です。しかし同時に吉田照美氏がそうであるように、普通の人でもあります。普通の人でもある特別な人が普通の人としての本音を語る、それがラジオの(特にAMラジオの)魅力です。一方、普通の人ではない人、普通でありたいのに普通ではいられない人がそうであるが故の葛藤を抱えながら戦うのがヒーローものの魅力です。この映画はその両面を見事に描いています。ロバマンは羊の皮を被った狼でもあり、狼の皮を被った羊でもあるのです(といっても狼でも羊でもなくロバですが)。一見B級に見えるというか誰が見てもB級のこの映画ですが、B級だからこそ描き得るテーマがあります。そう、ウルトラマンにせよ仮面ライダーにせよ、日本のヒーローものは基本的にB級(コストをぎりぎりにまで抑えた低予算作品)なのです。それをA級にしようとしたのが庵野監督であるとしたら、その B級性を突き詰めることでそこにあるヒーロー性を突き詰めようとしているのが河崎監督なのだと言ってもいいでしょう。その意味では川崎監督自身が羊の皮、いや、ばかばかしさという意味ではロバのほうがいいでしょう、ロバの皮を被った狼なのです。内容的にも68分(=ロバ分)という長さでまったく無駄がなく見事に仕上げられていますし、吉田照美氏以外の共演陣も超豪華!まさかここでこの人がというシーンが何度もありますし、特撮もいかにもこれが特撮、これぞ特撮という感じが出ていて見事です。

そして、最後に付け加えておくなら、河崎監督作品で忘れてはいけないのがその音楽、特にテーマソングです。今回もオープニング、エンディングともに完璧なテーマソングが提示されています。しかも、敢えてここでは書きませんがその作詞は本作にも出ているあの〇〇先生。特に吉田照美氏が歌うエンディングテーマ(オープニングテーマも歌っていますが)は素晴らしいの一言です。

ということでこの『ロバマン』騙されたと思って、是非、ご覧ください!

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