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39. RYUTistというアーティストによる大人アイドルアルバムの傑作『(en)』(2022)

あの名盤『ファルセット』から約2年半、本人たちにとっても、スタッフにとっても『ファルセット』は自信作だったと言っていいだろう。だからこそ、その後のコロナ禍というアイドルにとっては活動したくてもできない時期が長引いてしまったのは悔やまれる。しかし、ここでまた心機一転、『ファルセット』の流れを受けながらもさらに一歩前進したのが今作『(en)』であると言えよう。

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アイドルかアーティストかという論争はもはや意味がないであろう。質の高いアイドルは質の高いアーティストである。ただそれだけである。そしてそれは逆に言えば、質の高いアーティストは質の高いアイドルであるという意味でもある。そしてこのRYUTist、そもそも柳の都という意味での「柳都」と呼ばれる新潟(新潟がそう呼ばれていることは知らなかったが)からアーティストを生もうというコンセプトのもと作られたグループであり、その意味で、メンバーが大人になった今、このような方向性を取ることは正しいし、そしてそれに見事に成功している。アルバムジャケットを見れば一目瞭然のように、もはやそこにはメンバーの顔はない。歌で勝負する、音楽で勝負するという意気込みがここからも分かる。

一昔前の大人の音楽がジャズであったのなら、今の時代の大人の音楽はクラブミュージックで間違いないだろう。しかしやはりジャズテイストのあるクラブミュージックである。そして歌モノとしてのジャズを考えた場合(基本ジャズは歌と言うより楽器(インストロメント)による音楽である)、その魅力は「声」に還元される。そしてこのRYUTistは4人4様の魅力的な声を持っている。全盛期のマイルス・ディイビスのクインテット(5人組)グループをゴールデンクインテットと呼ぶが、RYUTistは歌によるゴールデンカルテットと言っても過言ではないだろう。この4人ではないとできない音程によるハーモニーではなく声によるハーモニーがここにはある。

ということでアイドルファンではなくても必聴の一枚です。『ファルセット』とも併せて、是非お薦めの一枚です。

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