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SF名作を読もう!(12) 『星を継ぐもの』

今回取り上げるSF名作は70年代後半にいわゆるハードSFの魅力を復活させた傑作『星を継ぐもの』です。

一口にSFと言っても、このNOTEでも触れてきたように様々なサブジャンルがありますが、やはり王道はいわゆるハードSFと言える本格的に科学に基づいた小説でしょう。このNOTEでも取り上げた「三体」三部作がヒットしたのも、それがこの「ハードSF」の流れの延長線上にあったからでしょう。

では「ハードSF」とは何か。それは化学の条件である仮説検証にあると個人的には考えます。ある現象から、考えられる仮説を提唱し、その仮説が十分に矛盾なく説明できるかどうかを検証すること、そしてその仮説が検証されなければそれをきっぱりと認めること、それが仮説です。

そしてこの『星を継ぐもの』にはまさに仮説を立てることの天才と言える原子物理学者のヴィクター・ハントと、仮説検証の人と言えるクリスチャン・ダンケッターが出てきます。ダンケッターは当初は自説に固執する人として描かれるのですが、しかし、自身の仮説の問題点に気づき、それを乗り越える仮説を最終的には提示します。これこそが「科学」であり、これこそが「科学者」としての態度です。そしてその意味で、本作は、まぎれもなく「科学」小説です。

しかし、SFは決して科学小説という意味だけではありません。昔ながらの日本語訳が「空想科学小説」であったように「空想」、言い換えれば「想像力」もその魅力の一つ、というか多くです。そしてこの『星を継ぐもの』はその「空想」「想像力」も、度肝を抜くものを持っています。月面で人間の遺体が発見された、そしてそれは5万年前の遺体であった、という驚くべき設定の下、本作は展開されます。月面で発見されたあるもの、という点では当然『2001年宇宙の旅』の影響下にはあるでしょうが、それは本作がハードSFであるということをまさに象徴しています。

ということで、とにかくいわゆるハードSF好き(私もですが)には、おすすめの一作です。未読の方は是非、お読みください。

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