アマゾンプライムお薦めビデオ④ 163:映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』
前回『不都合な記憶』で見惚れてしまった新木優子氏繋がりで、これもアマゾンプライムビデオオリジナル作品の『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』を見た。まあ、お涙頂戴の恋愛ものだろうと思ったら、一味違かった(もちろん泣けるが)。何の前知識もなく見たのだが、実は監督があの『私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン監督だったのである。
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その『私の頭の中の消しゴム』の感想も以前このマガジンで書いたが、そちらも単なるお涙頂戴の恋愛ものではなく、なんとも不思議な魅力を持った不思議な映画であった。おそらく多くの人がこの監督の作品を観て思い起こすのは岩井俊二監督の一連の作品であろう。氏の代表作の一つ(敢えて「一つ」という言い方をさせてもらう)『ラブレター』が韓国で公開され大ヒットしたのは1999年であり、『私の頭の中の消しゴム』が2004年公開であることから考えると、イ監督が岩井俊二監督の影響を受けていることは否定できない。いわゆる「フォロワー」である。でも、「フォロワー」で何が悪いのだろうか。だれもが皆誰かの「フォロワー」ではないのだろうか。そしてそこから自分のオリジナルポイントを見つけていけばいいだけである。
本作で言えば、映像的には岩井ワールド的と言わざるを得ないが(繰り返すが、だから悪いという意味ではない。むしろだからこそ良い仕上がりになっている。使えるものは使えばいいのである)、そのストーリー、もっとはっきり言えばラストの描き方にそのオリジナル性が感じられた。人によっては「どういうこと?」と思うかもしれない。しかし、それが狙いなのだろう。いわゆる複数の終わり方があるマルチエンディングでも、終わりを観客の判断に任せるオープンエンディングでもない。むしろパラレルエンディングという言い方がふさわしい終わり方である。映画というものは基本的に時間とともに進行するものなので、その意味では常に一方通行なのだが(もちろん映画内で時間を巻き戻すという手法もあるが、映画自体は常にラストに向けて動いている)、そうではない形をまだ試験的、実験的ではあるが示したと言えよう。そしてそれは少なくとも私にとっては成功している。「そう来たか」「その手があったか」とうならずにはいられなかった。決してどんでん返しでもひっくり返しでもなく、自然にさらりとそれをやっているところも良い。常識的に考えれば、もう一つのエンディングのほうは作中の作品中でのラストなのだろうが、そう見せないというか、敢えてそう見せようとしていないところがいい。映画自体がフィクションでありながら人はそれを感覚的にはリアルなもの、現実のものとして捉える。であれば、フィクションはもう一つの現実なのではないか、観る者にそう問うているようにも思える。
そして、我らがミューズである新木優子氏はやはりここでも美しい。美しいというか今回はキュートである(美しさとキュートさを兼ね備えているのだから最強である)。『不都合な記憶』ではタイの俳優とも共演し、今回は韓国の監督とも仕事をしている(公開順番的には逆だが)。既に日本ではスター俳優として主演の座を獲得した彼女であるが、今後はアジアを代表するスターとなるであろう。そして意外に、といっては失礼だが、この映画を見て、山本舞香という人の俳優としての実力にも引き込まれてしまった。バラエティ系の番組での印象が強いが、彼女はしっかりとした力を持った役者であり俳優である。そして山口沙也加氏、夏木マリ氏といった中堅、ベテラン勢の演技もさすがである。今後も彼女達の活躍がスクリーンで見られると思うと、楽しみでしかない。