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地方創生のリアルと現場の声

「地方創生」に関わる事業を、全国を回りながら進めているパラレルワーカー森田次郎さん。空き家の再生や、地元と外のひとをつなぐお仕事をされる中で「地方の現実」や「内閣府」からのフィードバックなどのお話をお伺いしました。

スピーカープロフィール

森田次郎(もりた・じろう)氏

一般社団法人ワークスデザイン
一般社団法人エデュケーション・コミュニティ
代表理事

東京理科大学卒、靴下の企画営業からはじまり、Webコンサルタントなどの仕事に従事した後、現在は「地方創生」に関わる複数の事業を進める
パラレルワーカー。


原体験


森田さんのお父様は地方を練り歩く民族学社会学を専攻する研究者。街の課題を解決しようということで、街の総合計画などのお仕事をしておられました。その影響で東京生まれ東京育ちの森田さんは地方が身近になったといいます。

地方に連れられることで、地方にはおいしい食、面白い人たち、そして豊な文化がある、というのが原体験としてあるそうです。

森田さんの仕事やキャリアはファミリーヒストリーに準ずるものであり、地方創生だけではありません。盲学校で働いていたお母様の影響も受けています。

例えば体験型の教育。子供達自らがマルシェに出品するなど、生きる知恵や生きていくのに必要な知識を体験型の教育で学べる機会を提供しています。

また、様々なスポーツをやってコミュニティを広げていく、マルチスポーツ教室のようなことも行っています。

回遊人を増やす

そんな森田さんが取り組む地方創生。現在日本では、都市に人口が集中し、地方が高齢化していっています。このような偏りがあるのを穏やかにいろんなところに移動できるような形を森田さんは「回遊魚」と呼びます。

森田さんの役目はそんな「回遊魚」ならぬ「回遊人」を後押ししていくことだといいます。

小魚が群れとなっていろんな地方を回遊していく。そうすれば定住は首都圏かもしれませんが、今はパソコン一つで仕事ができる時代。回遊人はいろんなところに回遊できます。回遊しながら個々人が群れを成すときもあれば、それぞれが自分の好きなところに行くときもある。変化の時には変化に耐えうる、いろいろ姿かたちを変える、そんな形で回遊人を地方に分散していくのが森田さんの役目なのです。

地方創生は事業、会社がやることではない


そんな回遊人を地方に分散させて、地域に溶けていくことで地域の仕事にも、活性化にも役に立つんじゃないかということで活動しているのが「1DO3」。地方創生をメインとして活動しています。

地方創生には様々な課題があります。例えば、人口の回遊、DXの推進、防災や減災、空き家対策。そして子供のころからいろんなことを知る事や地方の中小企業の活性化も大事だといいます。個々の会社がそれぞれ活性化していけば日本全体の底上げになるんじゃないか、という考えのもとで活動しておられます。

日本の文化を遺伝させたい。このような思いでプロジェクトを全国にプロットしていっています。

そして大きな特徴となるのが、その地域には森田さん達が確実に知っている人がいること。ここでの人はただの人材ではなく、ハブ人材。ハブ人材とは、地域の文化、ビジネスを知っていて、地域のいろんなネットワークを持っている人のことを指します。

森田さん達はこのような人たちを背中を押して回遊してもらっています。日頃観光ではえれない遊び、学び、仕事をするというようなネットワーク、きっかけづくりができるのが森田さんのスタイルです。

森田さん達は回遊人をたくさん育て、様々な所に回遊してもらいながら、地域に溶けていく仕組みを作る役割を担っています。それが経済の活性化にもなり、日本の固有の地域に眠っている文化、職人の技とかをつなげていく、次につなげていくように活動しています。

内閣府へ

今回内閣府へ報告の機会のあった森田さん。その時のお話も伺いました。

「事業者に予算を渡す時代は終わり、もっと個々人に期待していってほしい」ということをお伝えしたそうです。このような発言には「事業者が地方に行くと役場や企業とは結び付くが、個々人とは結び付かない」という背景があります。小さい隙間に眠る地方の文化や魅力を引き出し、細かいところまでやっていくには人と結びつくことが大事なのです。

移食住業

市民に溶け込むことを大事にする森田さん。最後に移食住業の考え方をお話ししてくださいました。

移食住業。これは、移動すること、そしてその文化を食べること、一緒に住まうこと、一緒に時間を過ごすこと、そして一緒に業をすること。ここで言う「業」はお金の発生する仕事だけではなく、一緒にプロジェクトをすること、一緒にアクションすることだそうです。

地方では「食」と「住」は一緒にしやすい。だからこそ、移動コストを払ってでも行きたいところを増やしていきたいと森田さんは話します。

仲良くすることから始め、人とのふれあいから始める。そのふれあいの中に第二第三のふるさとが作られる。地方の方々の営みの中に、日本の文化の神髄があり、その隙間、余白の中に入り込んでいくのが醍醐味とお話しくださいました。

参加者感想

先日は貴重な機会を提供いただきまして、ありがとうございました。
まさに「圧倒された」の一言に尽きます。どこに連れていかれるのか、誰と会うのか、何をするのか、本当に何も知らされていないまま、新神戸の『plug078』様のオフィスにお邪魔することになり、いきなり2つの会議に
参加してあれこれ話を伺うという予想だにしていない展開が目白押しで、正直言って目が回る思いでした。例えるなら、気分はまるで『水曜どうでしょう』でいきなり海外へ連行される大泉洋さんのよう。まぁそんなことはどうでもよいのですが。

コワーキングスペースは何となく会議場を貸すくらいの認識しかなかったもので、実際に参加して体験したものは想像の斜め上をいくものでした。事業の立ち上げに関わり、豊富な人脈を通して人と人、生業と生業を繋げることで新たなビジネスが生まれる。様々な知財を蓄える人々が集まることで一人では成し遂げられないこと、考えつかないものが次々に実現していく。それはとても眩しく、美しいものに私の目には映りました。まさに心が揺さぶられたと言っても過言ではありません。


森田さんの話は興味深い内容でした。地方活性という言葉は地方に住んでいるとよく聞きます。私自身も香川県高松市、屋島の出身で、まだ人生のほとんどを地方で過ごしてきた身です。自分の地域のことを言うなれば、過疎化は辿る一方、魅力はうどんのみ。「香川はどうせうどんしかない」と煽り散らされては「うどんしかなくて何がいかん!」と言い返すことしかできない歯痒さを感じてきました。このままではいけない。うどんだけでもいけな
い。これからを支える若者にとって魅力的な地方活性とは一体なんだろうか。もしかしたら「うどんがあるだけまだマシ」と野次られるかもしれませんが、その諸問題を考えるにあたって森田さんの活動は大きなヒントになると感じました。

学生スタッフ感想

地域活性において「地域に溶け込む」「一緒にやる」という事が大事なのが分かるお話でした。

お話を聞く前は、地域活性と聞くと、その土地に住んで活動するイメージを強く抱いていました。しかし、「回遊人」のお話や森田さんの活動の仕方を聞いていると、地方を回るように活動するスタイルもあることに気が付かされました。短絡的ではありますが、都心部で仕事をしていても地域活性に関わろうと思えば関わることができる、ということに気が付けた機会でした。

信頼関係や人の営みから文化が継承されていく。普通なことかもしれないですが、とても素敵なことだと思います。



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