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9mmが大好きになった理由3つ

皆さんは、邦楽ロックバンド、9mm Parabellum Bullet(キューミリ・パラベラム・バレット)を知っていますか。9mmは、2004年3月17日に大学の音楽サークルで結成され、2007年10月10日にメジャーデビューしました。今年で結成19周年を迎えました。世界中で使われている銃の弾丸の種類、「9mmパラベラム弾」から付けられました。しょっちゅう読みづらいと言われる、長いバンド名ですが、「9mm」(キューミリ)の略で呼ばれています。

9mm Parabellum Bullet、2022年の写真。
写真左から中村和彦、かみじょうちひろ、菅原卓郎、滝善充。

『Discommunication』(ディスコミュニケーション)、『Black Market Blues』(ブラックマーケットブルース)、『ハートに火をつけて』など、数々の代表曲があります。ツインギターが前面に奏でられ、ベースとドラムがメロディーを支え、雑多なロックサウンドに乗せて、幻想的な歌詞を語る歌声が響きます。独特な作風で、2000年代後半に邦楽ロックシーンで名を上げた、中堅バンドです。
ボーカリスト兼ギタリストの菅原卓郎(すがわらたくろう)、ギタリストの滝善充(たきよしみつ)、ベーシストの中村和彦(なかむらかずひこ)、ドラマーのかみじょうちひろ、4人のメンバーによるバンドです。バンド構成は、ボーカリスト、ギター2本、ベース、ドラムとなっています。現在はサポートギタリストが参加して、5人による演奏となっています。結成から19年間、バンドの活動休止も、メンバー脱退と交代もなく、同じメンバーで活動しています。

9mmのメンバーは、バンド結成前はバラバラでした。それぞれの出身地で、楽器からロックに憧れを持ったメンバーたちは、横浜の大学で出会いました。音楽サークルで、ちひろは数々のバンドを組んで、音楽を楽しんでいました。そこでサークルに興味を持った、卓郎と滝。彼らは、ちひろにスカウトされて、コピーバンドを結成しました。始めは卓郎、滝、ちひろと別のベーシストでした。ベーシストが離れた後、サークルに入った和彦がちひろの目に止まりました。卓郎は和彦と話し合い、バンドに入ることになりました。そして、このメンバーで9mmは結成されました。

9mm Parabellum Bullet、2004年のインディーズ時代の写真。
写真左からかみじょうちひろ、中村和彦、菅原卓郎、滝善充。

横浜のライブハウスから本格的に活動を始めた9mmには、観客が全くいませんでした。ぐだぐだな活動から、次第に方向性が見えてきた彼らは、デモCDを作って、バンドの存在を広めていきました。デモを聞いた、インディーズレーベルのスタッフが、彼らをスカウトして、本格的にメジャーデビューへつながりました。そして、彼らの名が目立ち始めたきっかけは、当時話題の邦楽ロックバンド、RADWIMPS(ラッドウィンプス)との対バンライブでした。9mmの知名度は、ここから上昇して、ワンマンライブ、他バンドとの対バンライブ、フェスへの出演で、多くのファンを獲得しました。そして、数々の代表曲で邦楽ロックファンを撃ち抜きました。

9mm Parabellum Bulletのバンドロゴ。
デザイナーのカッサイマコトが2008年10月に制作。

バンド活動は、順調な様子ばかりではありませんでした。結成当時から迷っていた方向性、進路への迷い、バンド活動への決意、激変する邦楽ロックシーン、人気上昇への圧力、人気低迷、ファン離れ、バンド自身の独立、メンバーの故障、社会的変化。今日も多くのバンドたちが屈して、夢を閉ざす多くの壁です。9mmに立ちはだかる困難と迷いは、周りの仲間のバンドと、9mmファンからの応援により、メンバーを団結させ、現在の活動に続いています。

9mm Parabellum Bullet、2007年のメジャーデビューの写真。
写真左から中村和彦、かみじょうちひろ、菅原卓郎、滝善充。

バンド名の「9mm Parabellum Bullet」の由来について、ちひろは「三単語のバンド名が良いから」と思い、名付けました。時々、由来がころころ変わりますが、最も有力な話は、卓郎が「ちひろが、壁に貼ってあった"9mm Parabellum Bullet"という言葉がよかったからと言っていた」という出来事です。ちひろが、冗談で由来を変えてくるのがお決まりの流れです。

9mm Parabellum Bulletのバックドロップ。
デザイナーのカッサイマコトが2008年10月に制作。
9mmパラベラム弾が入った銃を持った、双頭のワシが描かれている。
バンドのステージを象徴する、バックドロップである。

この記事では、ブリが9mmを好きになった理由を3つにまとめました。バンドの作風、魅力、代表曲について、簡単に紹介します。歌詞については、さまざまな解釈があるので、あくまでもブリの独自解釈としてとらえてください。


★雑多なロックサウンドと聞きやすい邦楽的メロディー

ロックは単にギターを鳴らすだけの音楽ではありません。「ロック」と言っても、電子音を混ぜたもの、ピアノと交わるもの、ラップを歌うもの、さまざまなロックがあります。この9mmは、ギターの旋律を中心としたロックです。卓郎と滝がさまざまな曲調をギターで表現した作風です。ひたすらギターのメロディーを繰り返すだけではなく、変則的なメロディーを奏でることがあります。終始、曲調がマイナーな雰囲気です。だらだらと長い楽曲を作りたがらない作曲で、楽曲の収録時間は、3分程度でまとまる傾向です。4分を超える楽曲をあまり作りません。時々、炸裂するような大きな音を出します。これを9mmメンバーは「カオス」と呼んでいます。

シングル『Discommunication』(2007年)
分かり合えない人間の孤独を描き、4つ打ちで踊れるロックサウンドを刻む。
9mmのメジャーデビュー作品である。
アルバム『Termination』(2007年)
メジャーデビュー最初のオリジナルアルバム。
カオスで、速い、暗い、詩的な歌詞を描いた楽曲が収録された。
9mmの魅力がつまった作品である。

滝が作曲したギターロックを下敷きに、和彦がベースを響かせて、メタルロックのようなシャウトをくり出します。ちひろが力強い正確なドラムを刻み、いろんなロックの作風を詰めこんで、歌詞を語るような卓郎の歌声を乗せた作風です。ギターロック、メタル、ポストロック、ハードロック、パンクなど、いろんな作風を作り出していきました。まとめると、「いろんなロックのいいところをごちゃ混ぜにして、歌いやすい日本語の歌声を乗せたバンド」ということです。ちなみに、和彦やちひろが作曲したものもあります。

シングル『Black Market Blues』(2009年)
投げやりなストレスを飛ばし、
ラテンのリズムとギターロックを混ぜた、高揚感あふれる楽曲。
9mmの名を広げた代表曲である。
シングル『Cold Edge』(2009年)
誰にも知られない孤独を叫ぶ歌詞に、
三三七拍子のイントロが特徴的で、たたみかけるリズムが迫力ある。
和彦が初めて作曲した9mmの代表曲。

卓郎の歌声は、9mmで最も重要な要素です。ごちゃ混ぜにしたロックのノリに、ゆったりと語る歌声を乗せた感じです。妖しい、伸びやかで、芯のある声質です。ノリに合わせただけの早口な歌い方ではありません。歌詞に英語はほとんどなく、主に日本語が使われています。卓郎の歌声によって、聞きやすいロック曲になっています。

シングル『新しい光』(2011年)
複雑に変わる高速ビートとバンドアンサンブルを魅せた楽曲。
ライブを盛り上げる9mmの代表曲。
シングル『ハートに火をつけて』(2012年)
スカとパンクロックを混ぜた、異国情緒の雰囲気があふれる楽曲。
9mmの代表曲の一つ。

歌詞は第三者が眺めて、社会、人間、感情にある「孤独」について描写したものが多いです。具体的に特定の状況や人物を言っているわけではなく、リスナーがさまざまな解釈ができるような比喩の手法になっています。もしかすると、比喩を用いて、邦楽の歌詞で禁忌に見られる、社会問題に触れたものに見えるように思えます。ブリは、意味が難しい歌詞と思いましたが、次第に自分の人生と、社会的体験から、歌詞の意味が見えてきました。社会の絶望と汚れと争いを見てきた分だけ、非常に響いてきました。特に、この混沌とした世情で強く感じます。人によって、苦しく、生々しく、暗い内容ですが、激しいバンドの演奏により、不安な気持ちを昇華してくれる快感があります。

シングル『インフェルノ』(2016年)
勢いを1分半にこめて作られた楽曲。
曲を冗長にしない9mmの姿勢を感じる作風である。
アニメ主題歌として、9mmが再び注目された。

ちひろは、9mmのコンセプトについて、「速い、暗い、日本語」という3つの特徴を挙げています。9mmは、幻想的で激しい衝動を、ロックの世界観で見せているのです。



★純粋な音楽愛を持ったメンバーたち

速く激しい演奏と、暗い歌詞があふれたバンドですが、9mmメンバーは、意外とのほほんとした雰囲気です。ロックバンドにありそうな、タトゥーが彫られているとか、派手な髪型にしているとか、そんなファッションは全くありません。メンバーは19年間、髪を一切染めていません。長髪か短髪になったり、パーマをかけたことがありますが、派手にしたことはありません。のほほんとした兄ちゃんたちが、激しくかっこいい、卓越した演奏を魅せてくるギャップに驚きます。しかも、それぞれのメンバーはかっこよさの個性が違って、ステージでともに演奏する姿に圧倒されます。この項目のメンバーの写真には、詳しく書いた記事へ行けるようにしました。

9mm Parabellum Bullet、2019年のアーティスト写真。
写真左から滝善充、菅原卓郎、かみじょうちひろ、中村和彦。

9mmで一番目立つ天然パーマと、クールで鋭い目を持つ、卓郎は不思議な雰囲気を持っています。一見、内向的な性格ですが、邦楽ロックとギターを愛し、独特な歌声でかっこよく変わり、詩的な歌詞を描きます。ステージで観客とコミュニケーションをとって、ライブコンサートを盛り上げて、優しい雰囲気で包みます。ライブのクライマックスになると、「いけるか」と呼びかけます。

ロックフェスでの菅原卓郎。ライブの終わりに、美しいおじぎを見せる。

卓郎と同い年の滝は、9mmの主旋律となり、卓郎とともに、ギターを奏でます。タッピングと速弾きが特徴の演奏です。ギターと一体化するように、ステージで暴れて、邦楽ロック少年の勢いのごとく走って、ライブを盛り上げます。滝の勢いは、観客の盛り上がりと共感します。

ステージを走り回る滝善充。彼の勢いは観客を盛り上げる。

9mmメンバーで最年少である、和彦はベースを弾きます。指弾きでベースを奏で、ギターとドラムにツヤを与えます。楽曲によって、腰より低く置かれたマイクに向かって、シャウトします。滝とともに暴れて、観客を興奮に誘います。

マイクに向かってシャウトする中村和彦。シャウトは観客の興奮剤になる。

9mmの創立者であるちひろは、力強さと正確さと滑らかなドラミングを魅せます。時々、ドラムを叩きながら、スティックを回します。スティックトリックが、ライブでの見どころです。彼の誕生日は、なぜか1999年9月9日だと紹介されています。トークではカオスなギャグが満載です。

スティックトリックをしながら、素早いドラムを叩くかみじょうちひろ。
スティックトリックはCD音源で味わえないものである。



★「9」にこだわる姿勢

ここまで9mmの音楽、メンバーの魅力について書きましたが、一番重要なところは、「9」なる数字にこだわる姿勢です。9mmというバンド名から、彼らは毎年9月9日を「9mmの日」にして、特別なイベントやライブコンサートを開催しています。今まで、初めての武道館ライブ、ライブコンサート配信をやってきました。さらに、結成9周年には、特別なイベントとキャンペーンを開催しました。今年は結成19周年で、再び盛り上がるイベントを展開しています。こんなに「9」にこだわるバンドは他にないでしょう。「19周年と20周年と連続して呼びこみたいからでしょ」と、突っこんではいけません。「9」は、9mmを象徴する数字なのです。これにより、ファンは「9」にこだわるクセが付きました。ブリの「9」にこだわってしまう性格は、彼らのしわざです。
ちなみに、9mmメンバーで「9」がつく誕生日のメンバーは、7月19日生まれの卓郎と、5月9日生まれの滝です。ちひろの1999年9月9日は、あくまでも仮の誕生日です。

9mmの「9」を強調したバンドマーク。


以上、9mmが大好きになった理由でした。ブリは、初めて『Black Market Blues』を音楽番組で聞いた時に、9mmが大好きになりました。まさか今日まで活動してるとは思いませんでした。後にさまざまな楽曲が出るとは想像しませんでした。多くのロックバンドたちが絶頂で降りたり、夢に挫折したりするなか、9mmはじっくりとバンドを続けるために、挑戦を止めずに活動しています。純粋にロックを奏でて、仲間を想い、時にはギャグを話す9mmが大好きです。結成19周年は、たくさんお祝いをしたいです。9mmが大好きで、邦楽ロック少年の勢いを忘れずに、楽しくいたいです。

最後に、滝の言葉を引用します。滝が作り上げた9mmの楽曲は、邦楽ロックファンに愛されています。音楽で世界は変わらなくても、音楽を通して、リスナーの心を変えて、強さを与えていきたいと思う、滝の想いを感じました。

『世界は変わらないです。変えられるものがあるとすれば、聴いた人のテンションでしょうね。そういうちょっとしたことなら変えられるんじゃないかなと。ただ、音楽で政治は変わらないけど、“世界を変えるのさ”と唄われる速い曲を聴いて元気になった人が政治を頑張って変えてくれたらいいなとは思いますね』

Rooftopインタビューでの滝善充(2010年5月1日)

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