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生きる屍が満月の日に幸せになる覚悟を決めた話。#0005(最終話)

第五話

すると少女の顔がぱーーーっと明るくなり
ボクに駆け寄りハグをしてきた。

その行為はボクのイメージにあった彼女とは、
180度違うものだったから、

ボクは、驚きのあまりその場にただただ立ち尽くし、
されるがままになっていた。

そんなボクを見た彼女は、
くすくすといたずらっぽく笑いながら


やだ。お兄さんピュアね。
私よりピュアなんじゃないかしら?
といいながら、ボクのほっぺにキスしてきた。


その行為がボクにとってはあまりにも衝撃的過ぎて
自分でもよくわからないことを口走っていた。


そして、心の動きを大人の男の邪な気持ちを
なるべくキャッチされないように気をつけながら

依頼内容を聞き出すことに専念した。
そして、思っていた以上に

やばい状況であることを
知ったボクは、

今、連絡が取れる全ての人に連絡をし、
口説き落とした。


その結果協力してくれたのは、
本質を見抜く力に長けた「たける」

デザインセンスのある「美子」

まちづくりのプロ「まちこ」

ひとりひとりの才能・良さを見抜き、
活かすプロ「こころ」

政治のプロ「正治(まさはる)」

お金のプロ「通称大黒様」の
5人がかけつけてくれた。

その行動の速さと懐の深さに
ぼくらは泣いた。

朝になったのに気づかないほど
泣き続けた。

そんな僕らを見た一行は、
僕らにこういった。

いろんなところにヘルプに呼ばれてきたが
ここまで喜んでくれたのは初めてだ。


ぼくらも遠くから来た甲斐がある。
こちらこそありがとう。といいながら
ボクに飲み物をくれた。


その飲み物はなんだかとても不思議で
一口飲むと心穏やかになり、
二口飲むと笑顔になり、

三口飲むと、勇気が湧く。
そんな飲み物だった。


そして、それを僕らが飲み干すのを見届けると
彼らは宿屋に向かった。

そう。僕らが落ち着くまで
ここにいてくれたのだ。


本当は1分でもはやくベットで
横になりたかったろうに。


まさにGiveの人だ。

改めてそう思ったボクは、
また泣きそうになったけど我慢しようと思った。


なぜなら、ボクがまた泣くと彼らが困る。
そう思ったからだ。


けれど、泣き虫なボクは我慢できないかもしれない。
そんな想いも湧いてきた。

だからボクとしてもはやく彼らに
宿屋で休んで欲しかった。

彼らが宿屋に入ったのを確認したら
思いっきり泣けるから。
そんな思惑?を持ちながら彼らの様子を伺っていた。

すると、メンバーの一人がやってきて、
ボクに声をかけた。

君には僕らが持っていない才能がある。
そして、それを活かすのは今だ。


だから、キミも明日から一緒に活動してくれないか?
と夢のようなオファーが来た。


もちろん、嬉しかった。

けれど、あまりに突然すぎて状況がつかめずにいた。
夢なのではないか?そう思い自分のほっぺをつねってみた。

痛い……。

ということは、夢ではないんだ……。

そう気づいた時、ボクは世界中の人がびっくりして
飛び起きちゃうほどの声と笑顔で
ありがとうございます。もちろんです。

よろしくお願い致します。と言っていた。

すると、相手も嬉しそうな顔になり、
ボクを宿屋に招待し、酒を交わした。


そして、ボクに名前が与えられた。

その名前は、「和彦」


なぜなら、ボクの才能は「あやさん」とそっくりで

特別なスキルはないけれど、いるだけで
和ませてしまう、相手の気持ちをほぐしてしまうからだそうだ。

だからその人を現わす名前に「和」を入れたそうだ。


その事実を聞きボクは喜んだ。
あまりに喜びすぎて、
地球が真っ二つに割れてしまうのでは?
と思ったほどだ。

そんなボクを一行は嬉しそうに見ながら
街の人々に、どんな悩みがあるのかリサーチしだした。


その姿は、ボクが幼い時に見た父の姿そのものだった。
あまりにそっくりなので、思わずパパ……。と
言ってしまった。


すると、呼ばれた男性が、
ボクの方に来ようとしているのが見えた。


それに気付いたボクは、
とにかく謝ろうという思いと

何を言われるのだろう……。
という不安を抱えていた。

気持ち的にはもう逃げたかった。

けれど、ボクは逃げなかった。
むしろ、自ら男性の方へ近寄って行った。


そして、もう一度パパと言っていたのだ。

すると男性はにこっと笑った。
でも、きっと人違いだよ。と言うのだろうな。と
少し悲しそうな顔をしていると、


おおっ!!和彦来ていたのか。
しかし、よくわかったな。

誰に聞いたんだ?
パパがここにいるって。
と言ってきた。


その言葉に対してボクは何も言えなかった。
ただただ表現しきれないこの感情を
味わい尽くすことに全力だった。

パパもそれに気づいたらしく、
それ以上言わなかったが、

二十数年ぶりの再会ということで
大変盛り上がった。

もちろん、互いになぜここに来たのか。
ということも。


現在どんな暮らしをしているのかも
全て話した。

そのひとつひとつに
驚きを見せる父がとても可愛らしく
まるで少年のようにも見えた。

そしてあの厳しさしかなかった父が
こんなにも柔和な笑顔で
ボクと話しているという事実に驚いていた。

居心地は悪いが、最高に幸せな時間だった。


だが、その幸せな時間は長く続かず、
父は満月の日に旅立った。

一枚の手紙を残して……。

それが、この街を生き返らせるための
ヒントであることに気づいた時、
この手紙はボクの目の前から消えた。

そして、そのヒントをボクが
一言一句間違わず書き起こし、
満月に捧げた後、メンバーに渡した。

無事、彼らに手紙を渡せたことに
安心したボクは、このあと3ヶ月ほど眠っていた。

そして、3ヶ月後の満月の日、
ボクは月に導かれるように起き、
そのまま立ち去った。

本来なら街の人やメンバー、お世話になった人々に
挨拶してから旅立つのが筋だろう。

けれど、ボクは弱虫だから、
会ってしまうと決心が揺るいでしまう。
旅立てなくなってしまう。

それはまずい。

なので、不義理は承知で
黙って旅立つことにした。


なのに、街を出てすぐある曲がり角のところに
例の少女がちょこんと立っていた。

そして、ボクにはい。これ。と
小さな袋を渡してきた。

不思議に思い、中を見ようとしたボクに
少女は、今は見てはダメ。

次の街に着いた時、もしも満月が出ていたら
月の光をこの袋に浴びさせてください。
そのあとなら、袋を開けてもいいです。

それまでは絶対に開けてはいけません。
と少女は言った。

だが、少しでも早く見たいボクは
すこし意地悪なことを言った。

もし、次の街に着いた時、満月でなかったら
次の満月まで見れないのかい?と質問した。

すると、少女は
少し困ったような顔をしながらも
笑って答えた。


そうですね……。
それが理想ではありますが、
これは、あなたを癒し、

あなたの強みを最大限に
活かすためのものですから

清らかな水がある場所……。
例えば、滝とか湖とか。
そして、美しい緑がある場所で祈りを捧げれば

満月の光を浴びさせたものと
ほぼ同等の効果が得られます。

とボクに教えてくれた。

それを知ったボクは彼女にありがとう。
と伝え終わる前に彼女の前から消え、

伝説の場所『文乃郷(ふみのさと)』に向かった。

けれど、中々に険しい道な為、
思いのほか日数がかかってしまったが

なんとか到着し、
「あこがれの人」に会うことが出来た。

そして、天にも昇るような気持ちで
毎日を過ごしていたら、なんと3年もの月日が流れていた。

そう。まるで浦島太郎のようだ。
彼が竜宮城で過ごした幸せな時間もきっと

今のボクが感じているものに
近いものがあったに違いないと
なぜか確信に近いものがあった。

だから、ボクはすぐに想いを伝えようと
まだ朝早くはあったけど、
彼女に想いを伝えに行った。


そして、ボクの想いを知った
彼女の返事はYESだった。

この瞬間、ボクの世界は
とても美しく優しいものになり、

夫として彼女と彼女の娘を
守っていく覚悟をボクはした。

それがくしくも
満月の日だったことは内緒にしとこう。


大好きなひとへ

ありがとう。

和彦より

はじめましてたかはしあやと申します。 記事作成・キャッチコピー・タイトル付けを 生業としておりますが このままだと止めないと いけなくなるかもという位 金銭的に困っていますので、 サポートをしてもらえると 泣いて喜びます。 どうぞよろしくお願い致します。