【レビュー】SD1 Merrillを6年使って思ったこと
はじめに
本カメラは、2012年3月9日に発売されたAPS-CサイズのX3ダイレクトイメージセンサーを搭載した一眼レフカメラです。
RGBが1:1:1のFoveonセンサーによる高い解像感が特長となっています。
私は本カメラを2017年の8月に購入しました。本記事では、カメラの機能に触れつつ、その外観や撮影した写真を紹介します。
以下、メーカーのリンクです。
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外観・使用感
以下に外観の写真を示します。
一眼レフの精悍な顔立ち。
そこに「SIGMA」「SD1」のロゴが輝きます。
マウントの内部にはダストプロテクター(IRフィルター)が装着されています。着脱可能ですが、もう生産していない部品のため、落として割るなどすると悲惨です。とはいえ、sd Quattroよりは着脱しやすいです。
深くえぐれたようなグリップは他のあらゆるカメラよりも持ちやすいです。
事前に知ってはいましたが、実際に持ってみると手に吸い付くような感覚でした。素晴らしい。
当時、私はこれと1:1:1のFoveonセンサーのために、初めて買ったカメラであるsd Quattroから本カメラに乗り換えました。今考えても酔狂です。
右側にカードスロットがあり、記録メディアはCFです。
内蔵フラッシュを搭載しています。果たして使用する場面はあるのでしょうか。
私はというと、外部ストロボ(EF-630)をスレーブ発光させるのに使用していました。SIGMA用のトランスミッターは殆どなかったので重宝していました。
背面には必要最低限のボタンが並んでいます。
CFカードへの書き込み時は、十字キー右下のランプが点滅します。
OVFは後述する欠点がありますが、やはり遅延なく見えるというのは代えがたいように思われます。
液晶は外では暗くて見えません。画質も粗く、拡大してピントが分かる程度です。しかし、PCに取り込んで写真を見ると、その画質に皆ひっくり返ります。
ライブビュー?そんなものはありません。
「QS」はSIGMA機に特有のボタンで、富士フィルムで言う「Q」ボタンです。つまり、撮影に直結する項目(ホワイトバランス、カラーモード等)をメニューを開くことなく設定できます。
電源は左のダイヤルと一体になっています。
シャッターボタン横のボタンは露出補正で、これを押しながら前後ダイヤルのどちらかを回して変更します。測光やISO感度ボタンも同様です。
また、本カメラは1/8000でシャッターが切れます。ピーカンで開放F値を使いたいときに速いシャッターを切れるのは魅力です。
秒間5コマの連写が可能ですが、7枚でバッファが詰まります。1枚に付き10数秒の書き込みがあるので、7枚撮ると1分半くらい待つことになります。フィルムカメラのような撮影感が楽しめる…かもしれません
側面には、シンクロケーブル、AV出力、レリーズ、AC駆動用の端子が並んでいます。
AC駆動にはSAC-4というアクセサリーが必要で、私も購入しました。
外部電源を用いることで本カメラの短いバッテリーを克服できるかと考えましたが、取り回しをケーブルが阻害するため、体験としては微妙でした。また、端子カバーを開けっ放しにしておかなくてはいけないため、屋外での使用は気が引けます。
とはいえ公式アウトレットで千円なのでとりあえず買っておきましょう。
このカメラがsd Quattroより使いづらいということは買う前から聞いていたので、いざ使ってみると「意外と使いやすい」と思いました。このカメラはそういう人に向いています。
デメリット
ISO100以外ノイジーだとか書き込みに時間がかかるなどは知っていましたが、購入してから気づいたデメリットもあります。
ピントが見えない。これには困りました。
またライブビューもないので液晶で拡大表示することもできません。
さらに、AFの精度が高くなく、前ピンや後ピンの失敗写真がどうしても出てきます。
対処法になるか微妙ですが、AF合焦時にフォーカスポイントが赤く点滅します。そして、2回点滅したタイミングが正確な合焦ポイントとなります(説明書に記載あり)。この2度目の点滅を待ち、そっとシャッターを切ることで、ピントの合った写真を撮ることができる……可能性が上がります。
写真について
このように、本カメラは「普通のカメラ」ができることに苦労します。しかし、私は2020年にfpが発売されるまでの3年間、本カメラをメインに使ってきました。それ以降は出番こそ減りましたが、ここぞというときのホームランバッターとして活躍しています。
撮影した写真を以下に示します。画質の参考になれば幸いです。
やはり1:1:1のFoveonセンサーは素晴らしい解像感です。同じセンサーのDP2 Merrillで、その特性をある程度知ってからSD1を購入したので概ね期待どおり。
上記のような被写体が破綻なく撮れるのはFoveon機くらいだと思うのですが、いかがでしょうか。
花弁や翅など薄いものを撮ると、みずみずしく、あたかも透けているかのように感じます。赤外線をカットしきれていないことが影響しているのでしょうか。しかしそのおかげで、桜などは非常に美しく撮影できます。
色再現については賛否が分かれると思います。しかし、グレーカードを用いてホワイトバランスを適切に設定することで、色再現性を向上させることができるはずです。なお、ハイライトは飛びがちなためアンダーで撮影することをおすすめします。
ミラーアップすれば、シャッターショックはsd Quattroのそれよりも小さくなります。長時間露光の際に有用です。
本カメラはFoveonで最も高画質に動体が撮れます。
DP、sd、dpにはOVFがありませんし、fpにはローリング歪みがあるため動体には向きません。SD15は一眼レフですが、本カメラのほうが高画質です。
私は本カメラにSIGMAのAPO MACRO 180mm F2.8 EX DG OS HSM、EX DG 2×テレコンを着けて写真部の友人たちと羽田空港に行ったりしていました。
以下は撮影のメモです。飛行機の速度にはAFが間に合わないので置きピンあるいは軽いMFで撮影します。流し撮りでは手ぶれ補正を切り、シャッタースピードを1/30に設定します。バッファが詰まるので連写はせず、ここぞというときにシャッターを切ります。バッファが解消する頃には次の便が来るので、この繰り返しです。お試しあれ。
特殊な用途
以下では、本カメラの特徴を活かした飛び道具的な使用方法を3点紹介します。
モノクロ撮影
Foveonといえばモノクロです。
ISO100でないとノイジーなFoveonも、SIGMA Photo Proでのモノクロの現像時にカラーバランスをBlue 100%にすることでノイズを低減できます。このテクニックを使うことでISO感度を1600くらいまで上げて撮影できます。
赤外線撮影
ダストプロテクター(IRフィルター)を外し、レンズに可視光カットフィルターを装着することで赤外線撮影が可能になります。しかし、おすすめしません。
理由としては、
世間に誤解を招く可能性がある
撮影が非常に難しく習得に長い時間がかかる
非常に手間がかかる
プロテクターを破損させたらもう手に入らない
など、枚挙に暇がありません。
赤外線写真そのものは歴史あるものですが、衣服が透けるといったことが独り歩きし、その結果として、その存在を世間が容認できなくなったのだと思っています。しかし実際には、本カメラで撮影しても自分のシャツさえ透けないので安心してください。
フィルムデュープ
フィルムカメラで撮影し、現像したフィルムをデジタル化するのに、本カメラとSIGMAの70mm F2.8 DG MACRO | Art、そして手製のデュープキットを使用していたことがあります。
しかしこれも非常に手間がかかり、今はやっていません。
でも高画質であることは間違いありません。気合と時間のある方は挑戦してみてください。
以上、本カメラの特徴を活かした特殊な使用方法を紹介しました。
孤高のFoveon搭載一眼レフ
本記事では、SIGMA最後の一眼レフであるSD1 Merrillを、外観や実際に撮影した写真、またはエピソードとともに紹介しました。
使用に際して様々な「お作法」が必要になるカメラではありますが、
圧倒的な解像感
高いグリップ感
OVF
1/8000が切れる
など、利点も多いです。
一方で、AFのピントずれについては、しっかりと構え、2回目のフォーカスポイントの点滅を待つことが肝要です。
私の基本的な撮影スキルはSIGMA機を通して身についたもので、そういう意味では先生のような存在です。本カメラを使うことで、カメラに遊ばれていた頃に立ち返り、写真を再構築するのもよいかも知れません。
苦手なものを承知して本カメラに向き合っていけば、「SD1 Merrill」でしか得られない素晴らしい画質として、きっと応えてくれるはずです。
一昔前まで互換バッテリーの選択肢が種々ありましたが、随分減りました。一眼レフにしてはバッテリーの持ちがよくない本カメラ。バッテリーは幾つあってもいいです。
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