満ちる

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遊ぶように仕事をして、仕事をするように生きて、生きるように遊ぶ

ミチル元気です。 ときどきこうして、誰かに宛てて文章を書きたくなります。 みなさん元気ですか。悲しいことはないですか。 好きなものを好きですか。 ミチルは30歳になりました。 30歳ってすごく微妙で、子供ではないけど、すっかり大人って訳でもなくて、生き方によって輪郭が変わってくる、なんだかあやふやな印象です。 …ぼくがそう思ってるだけで、もしかして皆すっかり大人になってたりする?大丈夫? 娘はついに小学生。 凝り性で愛情深くて、ちょっと泣き虫です。 とにかく植物が好

    • あけましておめでとうございます。

      どうもミチルです。 実家に帰省しています。 妻も娘もいて、妻の両親も来てくれています。 妹が結婚し、姪が産まれました。おじさんになりました。 妹の旦那もいます。いつの間にか犬もいます。 めちゃめちゃに賑やかです。家の中が夢見てるみたいに賑やかです。 29歳になったんですけど、20代を思い返すと、ちょっとだけ恥ずかしくて、10代よりもみずみずしい、そんな時間だったと思います。 呪いみたいに妻に執着して、人生と引き換えに妻を引きずり下ろして、結末はぼくの粘り勝ち。あんなに仄暗

      • まあそれもいいじゃない

        おひさ。ミチルです。 娘の習い事をしている合間に行く古本屋がゴールデンウィークだからとお休みで、そうなってしまうともう行くところがないので、喫茶店でパソコンをパチパチやっています。 娘は五歳になりました。今年で六歳、来年から小学生。一瞬だったようにも、百年だったようにも思います。そんぐらい、いろんなことがありました。 ぼくは翻訳家になりました。小さな事務所でやっています。いちばん日当たりのいい席をじゃんけんで勝ち取りました。 翻訳の仕事はすごく良いです。初めて仕事で「魂

        • 第九回:夕暮れ満ちる

          ここ一年は本当に目まぐるしく、そして完結した生活だった。 妻が仕事に復帰し、ぼくが家事を引き受けた。妻が休みの日に、いろんなものを漂白したり、ワックスをかけたり、そういう大掛かりなことをしてくれるので、ぼくは毎日の掃除や洗濯、料理なんかをしていた。18の頃から一応は一人暮らしをしていたけれど、人間が人間らしく暮らせるレベルで家事をこなしたことなんてなかったので、毎日必死こいて勉強しながらやっていた。 娘も2歳を過ぎて、もう小鳥のように話せるので、わりかし気持ちも分かってあげ

        遊ぶように仕事をして、仕事をするように生きて、生きるように遊ぶ

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        • 算数きらい
          18本

        記事

          第八回:花の話

          花が好きだ。 なくても生きていけるけれど、生活が楽しくなる。 花を贈ることが好きだ。目上の人に贈るときは予算を伝えて花束を作ってもらうこともあるが、妻や友人に贈るときは自分で花を選ぶ。 花束を抱えてその人の元へ行く道のりが好きだ。花を持っているだけで体が軽くなって、弾むみたいに、いつもは感じない空気をふわふわ踏んで空まで辿り着いてしまいそうな気持ちになる。多分これは相手のためじゃなくて自分のためのプレゼントなのだと思う。花を贈ることが嬉しい。喜んでもらえたら、もっと嬉しい。

          第八回:花の話

          第七回:好きな食べものの話

          ・チョコレート 今でこそ糖尿病まっしぐらなくらい毎日毎日甘いものを食べているぼくだけれど、昔はあんまり好きではなくて、時々人が食べているものを少しつまむくらいだった。 チョコレートは、妻が好きな食べものだ。 高校生のときに、好きな食べものは何か聞いたら、「チョコレート」と答えた妻がとてもセクシーに感じたことを覚えている。言い方だったのかもしれないし、表情だったのかもしれないし、大人だと思っていた妻の子どもっぽい面が逆にそう思わせたのかもしれないけれど、とにかくなんだかえっちだ

          第七回:好きな食べものの話

          第六回:ピアノを習っていた

          3歳から18歳までピアノを習っていた。 母はチェロ弾きだったけれど、「ピアノを弾くと頭がよくなる」という謎の理論でぼくにピアノを習わせた。ずっと身近に音楽はあったけれど、音楽の良さみたいなものは未だに分からずにいる。 何度か発表会に参加して、小学3年生の頃からはコンクールなんかにも出た。わりと良い賞を取ることもあったけれど、そのくらいの時はまだ上手い下手とかじゃなくてただぼくが少しだけよく指がバラバラに動かせるってだけだったような気がする。 妹もピアノを習い始めたけれど、

          第六回:ピアノを習っていた

          第五回:一年お疲れさまでした

          今年は360日くらい脇毛がなかった。仕事を頑張ったということだ。 結婚するまで、知り合いのバーみたいなところで、キャバクラやホストクラブに届けたり、バーで出したりする果物を切るアルバイト、とまでは言えない、手伝いのようなことしかしたことがなかった。学校ではいつだって浮きまくっていたし、社交性のしゃどころかSの字もなかったぼくが、本当に働けるんだろうかと思っていた。 大学の先生に紹介してもらった事務所は、面白いところだ。いろんな人が居て、いろんな仕事がある。最初はデッサンモ

          第五回:一年お疲れさまでした

          第四回:好きな匂いについて

          匂い、と聞いて、鼻の奥を通りすぎて行くみたいにつんと思い出す匂いがある。 雨が降る前か降った後の蒸した土の匂い、駅から通っていた学校までにある食事屋の多い道の醤油くささ、祖母がずっと大切に保管してくれているぼくが七五三で着た着物に染みついた樟脳の匂い、娘のうんちの匂い。 ぼくは「くさい」という感覚がよく分からなくて、小さい頃は父の枕で眠るぼくを妹が野次っても、別にくさくないよ、と言って父を喜ばせたことがある。同じように「汚い」もあんまりよく分からない。こういうものだ、と思う

          第四回:好きな匂いについて

          第三回:神様について

          神様ってなんだろう、と考えたとき、なんとなく光のようなものをイメージする。導き、いつも正しく、清く、尊い。救ってくれる。 高校はミッションスクールだった。毎朝、天におられる私たちの父よ、とお祈りしていた。聖歌も歌ったし、月に一度はミサもあった。毎週宗教という授業があった。けれどぼくは別にイエスさんの存在を信じている訳ではなかったし、宗教は学問だと思っていた、聖書は短篇集だと思っていた。校風自体もそんなにしゃきっとしている学校じゃなかった。シスターは思い描いていた清貧、節制、

          第三回:神様について

          第二回:夏だった

          ぼくは夏が嫌いだ。暑くてべたべたするし、皮ふが焼けて赤くなるのはかっこ悪いし、暑さに弱い妻がいつもしくしくしているし。夏なんて最悪だ!さっさと終わればいい、今年も頑張ってこの夏を乗り切ろう、いつもそんな風に思っている。 小さい頃から夏が嫌いだった。 小学校の帰り道に、夏になるといつも逃げる場所があった。T字路になっている脇のところに、誰かの家の庭なのか、勝手にそうなっているのか知らないけれど、ヒマワリがそれはもうたくさん植わっていた。ぐんぐん葉っぱや茎を伸ばしている内はまだ

          第二回:夏だった

          第一回:好きな本について

          311の地震以来、すぐに逃げられるようにひとつリュックを用意してある。非常食とか救急セットとか、そんなようなものと一緒に、石川啄木の「一握の砂」、中山可穂の「マラケシュ心中」、梶井基次郎の「檸檬」の本がひっそり入ってる。一冊ずつしか持ってないから、読むときはそこから出して読む。 その中でも、檸檬が好きだって言うと、ああ国語の授業でやったよね、なんて人とたまに出会う。すごく羨ましく思う!同級生のことはそんなに好きじゃなかったけど、ぼくだってみんなと檸檬について話し合ったりしてみ

          第一回:好きな本について