PTDメンターインタビュー【DIG THE DESIGNER】vol.3 スズキアユミさん
現役デザイナーが1on1で学習をサポートする完全オンラインデザインスクール「PLAY THE DESIGNER」。ここでメンターとして活躍するデザイナーたちに迫るインタビュー企画が「DIG THE DESIGNER」です!vol.3となる今回は、「デザインメモ2.0」などでの発信も行っているスズキアユミさんに迫ります。
DIG THE DESIGNER vol.3 スズキアユミさん
■「手に職」の選択肢のひとつだったデザイナーという仕事
ーよろしくお願いします。アユミさんの経歴はとてもユニークですが、中でも「書道の準師範」がとても気になります(笑)。
小学1年生からずっと書道の教室に通っていて、今も続けています。実は高校も、授業の半分以上が書道という学科に通っていました。ただ中学までは賞をもらうことも多かったのですが、その高校の書道学科では自分以上に上手い人たちに突然囲まれることになり、「特技が活かせればいいな」ぐらいの気持ちで入学した自分にとっては競争が苦しくなってしまって。それで学校を少し休んだり、別の学校に編入したりという高校生活を送っていました。
※アユミさんの書道作品
ーデザイナーになろうと思ったのは、どのようなきっかけだったのでしょう?
結局高校卒業までに4年かかってしまったので、就職のことを考えたら「手に職をつけるしかない」と感じたんです。手に職をつけるには、専門学校が良いのかなと思い、いろいろと調べているうちにデザイナー、WEBデザイナーというものがあると知りました。もともとものづくりは好きで、小学校でも美術・家庭科・技術などの科目の方が好きだったし、中学校で友達がホームページを作っていたのを見て興味を持っていたので、デザイン系の専門学校に入学することにしました。
ーデザイナーに憧れて、というわけではないんですね!専門学校はどうでしたか?
小中高と「ネコを被っていた」ところが実はあって、自分のありのままを出すというようなことがほとんどなかったんです。でも、専門学校で出会う人達は皆自由。それまでは大人のウケがいいからと真面目でおとなしくしていましたが、初めて「私、こんな自然体でいていいんだ!」と思えたのが専門学校の時ですね。今でもやはりそうですが、デザイナー同士だからこそ悩みを共有できるということがありますよね。
■「マル秘展」が思い出させた「自分らしいデザイン」
ーアユミさんはこれまで幅広い業界・業種のクライアントさんとのお仕事も多く、所属企業も様々なジャンルの会社さんを経験されていますよね。
所属でいうと、広告制作プロダクションも事業会社もありますし、業務としてはデザイナーからUXデザイナー、現在のフリーランスとなる前は執行役員もつとめていました。
会社を移る時の軸は、「自分」にとって新しいことに挑戦できるかどうか。今までのスキルを活かしつつ、新しいこともできる環境ですね。それもあって挑戦した執行役員の仕事は、一から会社組織を作るという面でとても面白かったのですが、起伏が激しく体調を崩しがちな私にとって、自分にあった働き方が必要だということを感じていました。
これは、ツモマーさんもおっしゃっている「デザイナーの世界をより良くすること」へつながる部分でもあります。デザイナーの世界がより良くなれば、自分自身の仕事環境にも良い影響が及び、デザイナーとして仕事がしやすくなるはず。そのためにいろいろなことを変えよう、変えたいということを考えると、「執行役員」という立場でこそ出来ることは増えるので、そういう意味での挑戦という面もありました。ただ、やはりまずは自分自身の生活をちゃんとしなければということもあり、昨年末にフリーランスになることを選びました。
ーフリーランスになったのはどのような経緯からなのでしょう?ずっと準備してきた感じですか?
実は全くで(笑)!きっかけとなったのは、昨年六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催されていた「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」です。当時は、自分の幸せやデザイナーとしてのキャリア、デザインマネジメント的な領域で働くことなども考えて転職の面接を受けていた頃。それでも「何かしっくりこない」感覚があり、ただ、今さらがっつり手を動かすことに戻れるのかという不安もあり、面接でもなかなかうまく話せなくて落ち込んでいました。それで面接帰りにふらっと立ち寄ったのがこの「マル秘展」。本当に衝撃的でしたね。あまりの衝撃に、観終わって即行でnoteに記事を書きました(笑)
※その時にアユミさんが書いたnote
ー私も行きましたが、とても面白く興味深い展示でしたよね!どこに惹かれましたか?
色々なデザイナー・クリエイターが、本当にそれぞれ三者三様のアプローチでものづくりをしていたことに衝撃を受けました!「自分の信じるデザインをやればいい」という巨匠たちからの叱咤だと受け取りました。あまりに衝撃が凄すぎて、展示を出たすぐのスペースで長いことうなだれていました(笑)
ーかなり大きなパンチを喰らったんですね。転職活動の考え方にも変化がありましたか?
次の日の別の面接で早速「マル秘展」の話をした気がします(笑)。それが現在業務委託をしているベンチャーでの面接。その場で「うちに来ない?」という話を頂きました。業務委託という選択肢はそれまで考えていなかったのですが、どんな契約形態のメンバーでもフラットに接する会社で、しかも週3日固定という私にとっても自分らしいペースを保てる形での契約が可能ということで、自然とフリーランスになるという流れになりました。いつかは独立するだろうなという考えはふわりと持っていましたが、そのタイミングが向こうからやってきた感じです。
■より良いデザインのためのコミュニケーションの重要性
ーPTDでのメンターになったのは、どのような経緯ですか?
2018年頃に初めて伺ってから、何度かFLATには遊びに行っていて、イベントに参加したり、デザインの相談室などをやっていました。それでツモマーさんとは面識があり、今回PTDを始めるということで声をかけて頂いてメンターとして参加することになりました。会社の仕事としてチームビルディングやメンターをやったりはしていましたが、講師としてしっかり教えるというのは、私にとっての挑戦でもあります。
ーアユミさんにもメンターのような存在はいるのでしょうか?
2社目のベンチャーでも一人デザイナーだったり、その後も新規事業立ち上げでエンジニアの中にデザイナーが私一人という環境だったりと、基本的には先輩はいませんでした。当時アプリが出始めてからベンチャー企業が増えて、まずはエンジニアの採用が増えて内製化していき、次に1人目のデザイナー採用をという企業が多かったように感じます。
ーそのような環境で、情報収集はどのようにしていたのでしょう?
昔からブログを書いていたので、それが良かったのかもしれません。現在「デザインメモ2.0」というブログを運営していますが、始めた5年前は完全に自分用のメモ。内容もテクニック系のものが多かったと思います。2年前に新設してからは、職種としてもサービスデザインやチームビルディングなど他の職種の人とのコラボレーションが増えたこともあり、少し書く内容が変わりましたね。
※アユミさんが運営する「デザインメモ2.0」
(https://designmemo.jp/)
ーブログを書くにあたって考えを纏めるという習慣は、生徒さんに教えることにも活きそうですよね。
確かに、アウトプットを出していくのは、自分の頭の中を整理するという要素が強いかもしれません。本当は、話しながら自分の考えを纏めて伝えるのがとても苦手なんです。それでも、デザインをより良くしたり、プロジェクトを進めていって良いものを作るためには、色々な人と関わってコミュニケーションをすることが必要だし、相手にとってわかりやすくアウトプットすることが必要。例えば、UXは特にメンバーそれぞれで大きく認識が違うため、まずは皆へのインプットから始まったり、ワークショップによる底上げをしないといけないことも多々あります。そうしたコミュニケーションとアウトプットの訓練にもなっていますね。
ー授業では、生徒さんに対してどのようなスタンスで教えているのでしょうか?
授業としては、事前に作ってもらったものを見ての添削などが中心になります。未経験であればその場で作って見せる時間を増やすなど、相手によって授業の仕方は異なりますね。共通点としては、画面上で実際に見てもらった方が伝わるということ。ライブデザインだと「自分が作ったものとこんなに変わるんだ!」という気づきがあるのが良いのかなと思っています。
私のスタンスとしては、生徒さんの「サポート役」。モチベーションは、生徒さん次第なので、その状況に合わせて「こうするといいよ」とアドバイスをしたり、その人の温度感に合わせたコミュニケーションをしています。
※実際の授業では、このような形で添削をしています
■デザイナーが、自分らしいままデザイナーでい続けられるように
ー最後に、アユミさんにとっての「デザイナーの世界をより良くする」は、どのようなイメージか教えてください。
私はデザイナーであり、人間でもある、その二つを掛け合わせた時に、仕事をしながら楽しく生きられる、そういう意味での「デザイナーの世界をより良くする」ことをしたいと思っています。
造作物には作った人の感情が乗ると私は思っています。それはデザインも同じで、楽しそうに作っている人のアウトプットは、きっとユーザーに伝わる。嫌々作ったものを世の中に出すって嫌じゃないですか。いいデザインを世に出すためには、まずは自分自身のコンディションを整えておきたい。これまでにもチームビルディングをしていて救えなかったり、自分自身がきつくて辞めてしまったりしたことがあるので、仕事のやりがいだけでなく、デザイナーが、自分らしいままデザイナーでい続けられるようにしたい。そこで私が持っているものが、何か活かせるのであれば渡していきたいと思っています。
Interview&Text:Shiho Nagashima
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※2021/3/1追記: 新規受付は停止いたしました。
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