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PTDメンターインタビュー【DIG THE DESIGNER】vol.1 岡部ちゆきさん

完全オンラインデザインスクール「PLAY THE DESIGNER」。現役のデザイナーが専属のメンターとなり、1対1で教わることが出来るのがその特徴ですが、実際どんな人たちが教えているのか気になるところですよね。そんな声を受けて、現在メンターを担当しているデザイナーたちに迫るインタビュー企画「DIG THE DESIGNER」を始めます!

vol.1は、PLAY THE DESIGNERのSNS更新なども担当してくれている、おかちゃんこと岡部ちゆきさん。ツモマーさんと同じ職場で働く後輩が、PLAY THE DESIGNERに参加した理由、メンターとしてやりたいことに迫ります。

■"一人デザイナー"として苦労した駆け出し時代

ーよろしくお願いします!最初に、現在のお仕事について教えてください。

ツモマーさんと同じ医療系のスタートアップ企業で(※注:ツモマーさんは4月末で退職)、自社プロダクトの改善や、製薬会社さんや医療関係の企業さんをクライアントとした委託案件を担当しています。デザインだけでなく、開発・ディレクションまわりも含めて経験させてもらっています。
2018年に入社する前は、渋谷のIT企業で自社のSNSサービスやゲームのグラフィックデザインなどを担当していました。社員数も多かったので、自分が思い描く「デザイン」にたどり着けずにもやもやしていた時期もありました。企画から入って施策を考えたり、プロトタイプを作るところからやりたかったのですが、体制的にそうもいかない部分もあり、2018年に現在の企業に転職したというキャリアになります。

ー大きな企業ということは、デザイナーの先輩・後輩も沢山いましたか?

それが、意外とそうでもなくて(笑)。私が担当するプロジェクトではずっと「一人デザイナー」の状態でしたね。一人なので誰もやり方を教えてくれず、深夜まで働く日もありました。

ー「一人デザイナー」の人は多いと思うのですが、どうやって情報交換をしていましたか?

誰も教えてくれないので、自分で調べていました(笑)。当時はPhotoshopの使い方さえ知らなかったのでそれを調べるところからはじまり、社内のどの部署の誰が何のグラフィックを担当しているか把握するのも、全て手探りの状態でした。仕事で夜遅くなることも多いため、勉強会などのイベントに参加することも難しく、市場感がわからなかったり、デザイナーの仲間と出会える場所がなかったり、情報が入ってこない環境なのが辛かったですね。何を勉強したらいいのか、どう勉強したらよいのか、何の本を読めばいいのか、全く分からず、身近に相談できる人もいませんでした。

ー情報がない中で現在の会社に転職するわけですが、その際はどのように情報収集や準備をしましたか?また、転職の際に「これだれは大事にしたい」と考えていたポイントは何でしょう。

とにかく最初から感じていたのは、「先輩がいる環境で働きたい!」ということ。もしくは、一人デザイナー歴が長いので、もうこのまま一人で自由に出来るところもアリかなあと思っていました。そこで転職エージェントさんに紹介されたのが今の会社。「こんなに素敵な人たちばかりで、わきあいあいとした良い会社はないです!」と熱のこもった紹介文を頂きました(笑)。入社しての印象もその言葉通りで、この転職は自分にとってのブレイクスルーになりましたね。

■自分の思い描く理想の"先輩"になるべく挑戦したPTDのメンター

ー念願の「先輩」がいる会社に転職してみて、何が変わりましたか?

転職検討中の人を集めたピザパーティに参加した際に、ツモマーさんと知り合いました。ピザパーティでは、「何をどう勉強すればいいの?」といった話もあがりましたし、ポートフォリオの添削もしてくれたんです。なんでそこまでしてくれるのかと考えていたんですが、入社後に上司に「その人の人生がかかっているから手を抜けない」と言われて、ガツンとなぐられた感じがしましたね。
ちなみにその時「伸びしろはあるけど、なぜ(レベル的にはまだまだな)君が一人でやっているの?」と単刀直入に聞かれたんです。それは「教えてくれる人が必要だ」という意味ですね。知識や経験の不足は個人の問題ではなく、会社員である以上は会社の仕組みとしてフォローすべきであるという考え方。その時のこともあって現在の会社に決めました。具体的なスキルというより、そういった考え方を学んで吸収できる環境です。

ー今度は自分が「先輩」として、生徒さんに教える立場になりましたね。授業は如何ですか?

二人の生徒さんを担当しているのですが、メンターの私も授業をするのがとても楽しいんです!それを感じるのは特に課題のフィードバックの時。前回伝えた内容がきちんと反映されたものを提出してくれたり、私の特性も踏まえて伝わりやすいアウトプットを作ってきてくれるようになってきたんです。ある意味「疑似クライアントワーク」のような感じで、「相手に伝えるためには、どういうプロトタイプを作ればいいのか」を考えて作ってくれているんですよね。これはPTDの方針でもありますが、授業では具体的なツールの使い方ではなく、考え方や、何をどう調べてどうアウトプットに活かしていくのかという筋道の立て方などを大切にしています。そういった汎用的な知識を得て、それを活かして1ランクも2ランクも成長してもらいたいと思っています。

ーどのような経緯でメンターになったのでしょうか?

ツモマーさんに声をかけてもらったのがきっかけです。後輩がほしかったこともあり、二つ返事で即答しました!これまで先輩に恵まれてきて、「先輩のこういうところが好き」という「後輩からみた素敵な先輩ナレッジ集」は自分の中に持っているので、それをいつ披露しようかとワクワクしています(笑)。

ーそのナレッジ、一つ教えて欲しいです(笑)

例えば「どんなアウトプットでも、必ず1つは良いところをみつけること」。多くの先輩が頑張っているところなので、これは絶対に心がけたいと思っていました。自分が先輩にやってもらえて嬉しかったことなので、同じようにやりたいと意識しています。入社当時メンターだったツモマーさんや、企画の方、営業の方、色々な先輩から色々なことを学びました。その教え方、考え方、知識など、自分の中に貯めていたものがPTDで活かせそうです。

ー良いメンターと出会えるかどうかで人生は変わりますよね。

教えてもらったことをその人に恩返しするのではなく、他の場所で試してみて、「ほら、あなたは凄い人なんですよ」という形で先輩に還元していきたいという気持ちが強くなってきたんです。受け取ったものを、他の場所で再生産する感じなので、新しい発見にもつながります。

sketch 作業スクショ

※メンター以外にも、PTD公式TwitterのTips投稿を担当。
【#PTDデザインTips】で使う画像も岡部さんが作成しています。

■教えることを通して感じる、自らの成長とデザインの奥深さ

ー授業を通して、何か自分自身に変化はありましたか?

ずっと言語化が苦手だったのですが、メンターとして教える中でそこを訓練しています。教える時は単語の意味一つにしても、一つ間違ったら大きく認識をゆがませてしまいます。そういう時に「どういう単語を使ったらよかったのか」とか、言動だけでなく動きとして「どういう振る舞いをしたら響くように伝えられるのか」などと考えるようになりました。普段業務で一緒に動いている人だと、多少言語化がおざなりでも伝わることも多いですが、そこをより細かく、そして正しく話すということを意識する必要を感じていますし、それが自分の力になっているようにも感じます。

ー教えること自体が考えるきっかけになっているんでしょうか?

今までは自分一人でナレッジを貯めこんで、気まぐれにnoteを書いたりと自分主体の考え方でいました。でも今は、得た知識をどう後輩たちに伝えて、どう後輩たちが活かしてくれるのか、そこに面白みを感じています。考えていくうちに言語化にも繋がって、スキルも上がったらいいですよね。

ー教えるというアウトプットの前提があると、インプットも変わりますよね。

変わりました!例えばデザイン関連の本を読む時、言葉一つにしても「何故この言葉を使っているんだろう」と考えるようになりました。その答えを探るために、数年前に読んだきりだった別の本を改めて紐解いてみたりもしています。当時は簡単すぎると思っていた本が、実は広く深い内容を網羅した本であったことに驚いたり。視点が変わると、内容の受け取り方がこうも変わるんだと実感しています。

ーその発見が生きた場面はありますか?

例えば初回の授業。デザイン四原則やフォームのパターンなど、慣れて無意識レベルでやっていたことも、「伝える」ということが大元に立ち返るきっかけになっています。
あとは、原則をすぐに引き出せるように「デザイナー、エンジニアのためのUX・画面インターフェースデザイン入門」(日刊工業新聞社刊)を買いました!文章自体の量は多くはないのですが内容が濃く、読み返していくと参考文献が大量に出てくるんです。原則には枝分かれ構造が多く、ヒューマンインターフェースガイドラインなども紐解いていくと大元になる本も大量にあったりしますが、それらを読んで初めて理解できることも多いんです。「何故このガイドラインを書いたのか?」「どうやって書いたのか?」を考えることで、次にどういうデザインを作っていくのかという方針を決める際に役立つのではないかと思います。

自宅写真

※多くのデザイン関連本が並ぶ岡部さんの本棚

■デザインの力で、生活の不便をダイナミックに変えていきたい

ーデザイナーとして大切にして、実行していることは何かありますか?

日々ストイックでいようとしています。「デザイナーとして、昨日の自分より今日の自分がレベルアップしていれば、世の中全体の質が高まる」と意識していたりします。そうした意識が増していき、チャンスをつかめるように努力すれば、自分のアウトプットが増え、そのことを色々な人に伝えることも出来て、世の中がもっともっと良くなっていく、そんないいサイクルをもっと生み出したい。でも、たまに罪悪感たっぷりのお休みをとって、たっぷり遊んで、次の日から罪悪感で働くということもありますよ(笑)

ーデザインに対する情熱が素晴らしいですね。デザインを学び始めたのはいつ頃なのでしょう?

もともとデザインの道を志したのが高校生の頃です。その頃は美術が好きだったのですが、勉強していく中で「これは数学ではないか?」と気付いたんです。最適な曲線は、数式で描けるんですよ。美術家たちのスケッチを見ても、美しく見える角度は彼らの中にロジックがある。フィーリングや人の気持ちより、ロジックや数学的な手法なんです。「なんで、日本では数学で美術大学に入れないんだろう」と反抗心を持っていましたね(笑)。それで、美術が工学の下に紐づいている大学に理数で入学して、そこで美術を学び、デザインの道に進みました。

ーデザインとはそもそも「設計」という意味ですからね。岡部さんにとっての「デザイン」とはなんでしょう?

「誰のためのデザイン」という本があるんですが、その本の中に「形態は機能に従う」という言葉があります。これは、「物の持つ用途に応じて形は決まっていくもの。装飾を取り払い、本当に機能を満たすための物であることが美しい」という考え方です。デザイナーは昔から「設計」という意味でのデザインを実践してきたのですが、突然「背中で覚える」という感覚面が強調され、言語化されなくなってしまった気がしています。日本の芸大だと美術部の下にデザイン科があることが多いのですが、根本から違うものとして区別したほうが良いかも?と感じることもあります。「綺麗な絵をかけるのが偉い」という基準感や、その綺麗というのは、理論ではなくとにかく沢山の絵を描いて上達するしかないという根性論が根強くあって。でも、「何故上手くかけるのか」を体系化して言語化するだけで、その人自身のスキルも、周りの人のスキルも変わるはずだと思っています。

ーPTDでは、授業のベースも「原理原則」として整理された基礎を大切にしていますが、そうした言語化・体系化された基礎があれば、皆がスキルをあげることが出来ますよね。岡部さんがそうした「デザインの力」を通してやりたいことは何ですか?

生活にダイレクトにかかわる領域で、その質をより高めていきたいと思っています。今不便が多いと思うのが、役所などのインフラ。様々な制約があると思うのですが、「果たしてそれが本当に正しい制約なのか?」を視覚化して問題提起できるのは、きっとデザイナーだけ。まだITの力が発揮されていないインフラ領域では、デザインの力によって最もダイナミックに変化が起こせると思っています。

ーありがとうございました。最後に、デザイナーがもっともっと活躍するために必要だと思うことを教えてください。

「皆もっと自分の力を信じていいのに!」と思うことがあります。自分の作ったデザインのレビューで、一歩踏み出して発言が出来ないというデザイナーさんの声をよく聞くんです。私も昔はそうでしたね。でも、アウトプットを作ってテーブル上に挙げている時点で、議論を促進し、意思決定を速めているんですよね。「デザインというアウトプットがあることによって議論が促進された」という功績をきちんと自覚して、もっともっと色々なものを自信をもって出してほしいなと思っています。誰も褒めてくれない領域なので辛い時ももちろんありますが、それでも続けていくことで、自分自身から観た世界は良くなっていくはずです。

Interview&Text:Shiho Nagashima

※2021/3/1追記: 新規受付は停止いたしました。


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